見た目幼女な私は師匠(保護者)に溺愛される

雪野ゆきの

第1話





 穏やかな日射しの中、私は原っぱを駆ける。



「カイザー!待ってください〜。早いですよ〜」


 そう呼び掛けるとカイザーはまん丸な瞳で振り向いてくる。まだなの?まだなの?と言わんばかりに尻尾を振ってくるのが大変可愛らしい。

 カイザーは座っても成人男性程ある大きなお犬様だ。……頭に角があっても、口から火を吹いても、師匠曰く犬なのだ。

 カイザーと私では大人と子供以上に大きさが違うので、カイザーが走ったら私では絶対に追いつけない。

 いっつもしびれを切らしたカイザーに首根っこを咥えられ連れて行かれる。これでは散歩をしているのかされているのか分からない。



 止まってくれたカイザーに追いつく。

 息を整えながら心優しいお犬様を撫でてやる。


「良い子ですねカイザー、今日は師匠が珍しく仕事に行っているのでいっぱい遊べますよ~」


 そう言うとカイザーは嬉しそうにウォンと鳴いた。

 カイザーは人の言葉が理解できる賢い子なのだ。

 うりうりとカイザーに頬擦りをする。すると、私の背後から手が伸びてきてひょいっと持ち上げられた。


「うひゃあっ」

「ただいまソフィー」


 耳元で囁かれたのは良く聞き慣れた低い声。


「師匠!」

「うん、ソフィーの愛する師匠だよー」


 私が呼ぶと師匠はデレッと相好を崩した。

 そのままスムーズに縦抱っこの体勢に移る。別にそれはいい、何時ものことだ。


「師匠、お仕事はどうしたのですか?」

「ええ~?ソフィーに会いたくなって帰って来ちゃった」

「……またですか」

「だって王都にはソフィーみたいに可愛くて色っぽくて癒される子はいないんだもん」


 外見六歳児に色っぽいってなんだ。


「じゃあ師匠は私以上に可愛くて色っぽくて癒される体に凹凸がない子がいたら乗り替えるのですか?」

「まさか!俺はソフィーが本当は17歳なのに外見ロリの罪深きつるぺただから好きなんじゃないよ!ソフィーだから好きなんだよ!!」


 なんだか台詞から犯罪臭がします師匠。


 そしてぎゅう~と抱き締める腕の力を強められる。ちょっと苦しくなってきた。

 師匠の腕をペチペチ叩く。


「ししょう、くるちい。ゆるめて」

「ソフィー、かわいい、やだ」


 そうは言いつつも込める力を弛めてくれた。抱っこはされたままだけど。


 ウォン、とカイザーが一鳴きした。


「カイザーは今日もソフィーを外に連れ出してくれたんだね」

「ウォン!」


 よしよしと師匠はカイザーの頭を撫でる。カイザーは褒められて嬉しそうだ。


 子供は日を浴びて適度に運動しないと死んじゃうと本気で信じている師匠。そに台詞ではまるで私が散歩されているようではないか。


 ……散歩されてたのか。


 犬に子守りをされるとかヤバイな私。本当に17歳なのか疑わしくなってきたよ。


 幼女な外見にあるまじき遠い目をしてしまった。




***




 私が師匠と暮らすようになったのは十歳の時。

 その頃には私の成長は完全に止まっていた。もっとも、元々小柄だった私は六歳くらいの外見なわけだが。


 何でも、私は体内の魔力が多過ぎて成長を阻害しているらしい。

 手に余った家族は、私を高名な魔術師である師匠に預けた。

 そして私は師匠と暮らし始めて今に至る。


 師匠はとても優しく、私を可愛がってくれた。それはもうデロンデロンに。

 最初はロリコンの人かと思った(今もちょっと思ってる)。

 家族にも嫌われていた訳ではないが、やっぱり腫れ物扱いは否めなかった。でも、師匠は、こんなに可愛いソフィーを手放すなんてばかだねぇ、と言ってくれた。

 そのことが、すごく嬉しくて、師匠に抱き付いて大泣きしてしまった。




「ソフィーどうしたんたい?遠い目をして、眠いなら一緒にお昼寝しようか」

「別に眠いわけじゃないです」


 だから体を揺するのを止めて。

 背中もポンポンしなくていいから。


「ご機嫌ななめなのかい?やっぱりレディーに一緒に寝ようは不躾だったかな」

「むきゃ~」

「え、かわいい、何その鳴き声」


 照れるから急にレディー扱いしないでほしい。こちとら年相応に扱われることに耐性がないのだ。

 師匠はぐりぐりと頬擦りしてくる。カイザーと同類だ。


 じゃれていると、師匠の家のある方向から声を掛けられた。


「え、誰ですかこれ……」


 声のした方を向くと、愕然として目を見開いてる男の人がいた。魔術師協会の制服を着ているので、師匠に投げ出された仕事を頼みに来た人なのだろう。

 その人は師匠と違ってちゃんと筋肉がついているようだ。ちゃんと手で物を運ぶ人なのだろう。師匠は基本浮かせるか瞬間移動させる。

 その男の人の顔は一般的に言えば余裕で整っている部類に入るんだと思う。

 まあ、それでも我が師匠には遠く及ばないが。ふふん、師匠はモヤシだけど顔は良いのだ。いや、むしろ師匠に筋肉以外の欠点はない!


 あれ?私あんまり師匠以外の若い男の人に会ってないんだな。

 比較対象が全部師匠だ。


 町でお店やってるのも女の人かおっちゃん達だけだもんね。

 おっちゃん達は息子さんとかいないのかなぁ。会ったことないや。


 私達は魔術の訓練のために町から離れた郊外に住んでいるため、ご近所付き合いとかはない。


「ブツブツ…………フィロ様がちゃんと手を使っている……いや、その前に誰だこの優男。こんな甘ったるい声出すような人じゃないだろう」


 男の人が何か呟いて師匠の顔をちらりと見た。



「ひぃっ!」


 なんだ!?ブツブツ何か言ってると思ったら急に大きい声を出して青ざめ始めた。驚くから止めて欲しい。


「ちょっとザコ君、うちの子驚かすの止めてくれる?この子は君と違って繊細なんだから」


 え?この人の名前雑魚ザコっていうの?親は何を思ってそんな名前を付けたんだ?可哀想に、さぞかしいじられてきたことだろう。

 まあ私にはいじられるような友達もいない訳だけれど……。

「すっ、すみませんフィロ様!」

「分かればいいんだよ。ほら、早く帰りな?君達の愛しの仕事が大量に待っているだろう?」


 師匠が穏やかに微笑んでザコさんを追い返しにかかった。

 うわぁ~と師匠を見る。


「なっ、なんだい?ソフィー、そんな目で俺を見ないでおくれ?」

「師匠、ザコさんが可哀想ですよ」


 仕事して下さいとは言わない。私はそんなことが言える立場ではないから。

 私の言葉にザコさんが狼狽える。


「え!?俺の名前はザコではな…………ナンデモナイデス」


 ザコさんはまたもや師匠を見て言葉を止めた。美形の顔には人を畏縮させる能力でもあるのだろうか。

 師匠の腕の中から顔を覗き込んでも、微笑みと共に額にキスを落とされるだけだった。


「フィロ様!本当にあなたがいなければ立ち回らない程仕事がたまっているんです!娘様もご一緒で良いので来て下さい」

「「誰が娘様だ」」


 師匠と声が被った。

 師匠は軽い蹴りもお見舞いしたらしい。可哀想だとは思わない。


「私はれっきとした17歳です!」

「ええ!?でも見た目が……」

「失礼な奴だな。ソフィーの溢れ出る魅力が分からない奴は帰れ。分かられても嫌だから益々帰れ」

「師匠は仕事に行きたくないだけじゃないですか」


 帰れしか言ってないし……。あとこの外見から魅力を感じるのは特殊性癖の持ち主か師匠だけだと思う。

 師匠の娘と勘違いされるのは絶対に嫌。


 むーんと頬を膨らませるとつんつんつつかれた。


「ふふふ、むくれたソフィーも可愛い」


「17歳って知っても犯罪臭がすごい」

「ザコ君何か言ったかな?」

「ノーサー!!極めて合法的な光景だと思いました!!」

「そうだよね」


 師匠は鷹揚に頷いた。それでいいのか。


 話が進まない。

 仕方ない、ここは私が一肌脱ごうじゃないか!

 師匠の服を摘まんでチョイチョイ引っ張る。


「師匠師匠」

「ん?何だい?」

「私、師匠がお仕事してるとこ見たいです」

「え」


 師匠の笑顔が固まった。


 よく考えてみれば魔術を教わってはいるが師匠の職場に行ったことはないしな。普通は師匠の職場の手伝いをしつつ魔術を教わるものなのだ。

 うんうん、と独り頷く。


「師匠!私職場見学したいです!!」

「……」

「連れてって下さい!」


 師匠は私から目線を逸らし始めた。


「いや、でも、都会は田舎ここと違って危ない人がたくさんいるから……。ソフィーは可愛いし。都会の二人に一人は犯罪者だから………」

「フィロ様の中で王都はどんだけ治安悪いんですか」


 ザコさんから突っ込みが入った。

 私も流石に二人に一人はないと思う。それではもはや犯罪都市だ。


 師匠をじっと見つめる。


「ううっ…………………………………………………………………………………………………………………しかたないな」

「タメ長っ」

「やった!」


 師匠は深いため息を吐いた。

 そして真面目な顔で見てくる。


「いいかい、ソフィー。絶対に俺から離れないこと、知らない人に付いていかないこと、無闇矢鱈と笑い掛けないこと、あとそれから………」

「了解です師匠!」


 師匠の過保護が行き過ぎる前に打ち切る。こうなると長いからね。

 ザコさんからの呆れた眼差しは無視だ無視。






***




 三人で王都に転移した。



「ふおおおおおおおおお!!」


 見渡す限り人っ人っ人っ!!

 自然と目が輝く。

 街並みが綺麗!!服装がおしゃれ!!これが都会!!

 興奮しすぎてカエルよろしくピョンピョン跳ねる。


「ソフィーが可愛い」

「同感です」


 師匠が真顔でした親バカ発言にザコさんが同意する。親バカは感染するのか。

 少し冷静になった。


 師匠が両手を広げて待っている。


「ほ~らソフィー、ウサギの真似してないでこっちおいで。俺との約束事は何だった?」

「師匠から離れない!!」


 ピョンと師匠のお腹に抱きつくと直ぐにホールドされた。

 こんなにはしゃぐ私は珍しいのか師匠の顔がデロンデロンに溶けている。


 ひとしきり愛でられると魔術搭へと向かった。







 死屍累々。


 中の有り様を一言で表すならこうだ。


 とにかく汚い。外のキラキラした空気は何だったんだ。

 物は床に散乱しているし全体的に薄暗い。

 積んである本の上に誰かのパンツが乗っている。一体どういう経緯でそうなったんだ。

 パンツを見ていると師匠がそのパンツを燃やした。


「教育に悪いからね」


 私の教育のために一枚のパンツが犠牲になった。アーメン。


 少し足を進めると男の人が仰向けで倒れていた。あっぶね、踏むとこだったわ。

 その辺に落ちてた白い布を手に取る。


 ふわさぁ


「ちょっとソフィーさん!?何やってるんですか!?」

「供養」

「死んでない!!その人死んでないですから!!!」


 ザコさんに顔にかけた布を取り払われてしまった。 


「ソフィーの思いやりを無下にするとか生意気」

「今のは思いやりじゃなくて愉快犯だったでしょう」


 てへっ。




 物を掻き分け師匠が何時も使っているという部屋に着いた。搭の最上階だ。

 何故かここだけ綺麗だった。

 何この豪華な椅子。いくらするんだろう。

 ふかふかの黒い素材に金で細やかな装飾が成されているそれは明らかに高級さを匂わせている。

 そして多分本物の金を使っているんだろう。

 魔王が座っていそうな椅子だ。

 師匠は一体どんな扱いなのだろう。


 部屋の一角に置いてあるケースに魔石が大量に入れてあった。

 もはや私の身長よりも積んであるんだけど……。師匠どんだけサボってたの。

 一つ一つに付加して貰いたい魔術のメモが貼ってあるのでざっと目を通していく。


「師匠、これなら私も手伝えますよね!!」


 付加する魔術は割と初期に習ったものばかりだった。これくらいなら私程度でもいけるだろう。これだけの為にわざわざ師匠に頼みに来たのか?


「えっ!?」


 私の言葉にザコさんが目を丸くした。

 何か可笑しなことを言っただろうか。

 首を傾げていると師匠に頭を撫でられる。


「?」

「ソフィーは何にもしなくていいのにー」

「出来ることがあればやりますよ?」


 ケースからいくつか魔石を取り出す。

 すると、師匠が魔王椅子に座って手招きしているのでそちらに向かう。

 てこてこ歩いてくと脇に手を入れられ師匠の膝の上に座らされた。師匠はそれで満足したのか表情を緩めた。

 お膝抱っこなど溺愛師匠を持つ私は慣れたものなので今更抵抗したりはしない。

 見ているザコさんが狼狽えても無視無視。


 魔石を一つ手に取って何時も通り魔術を石に付加していく。

 師匠の訓練でよくやるのだ。


 30秒程で済ませてこれまた重厚な机の上に置く。

 するとザコさんが先程よりも驚いた顔をしていた。


「そんな、魔石への付加は抵抗が大きいからフィロ様くらいしか出来ないのに……それをこんな短時間で軽々と……」

「ザコさんどうしました?」

「ソフィーさん!ここで正式に働きませんか!?」


 うぉう。何かブツブツ呟いてるかと思ったら急に詰め寄ってきた。


「却下。ソフィーはまだ魔術師としては半人前だから働かせられないよ」


 師匠が即断った。

 師匠は魔術に関しては厳しいのだ。

 もう七年も修行しているのに未だに一人前に成れない。それもそうだ。まだ師匠の足元にも及ばないのだから。


「そうですね、あんまりお役に立てないと思いますし」

「いや!?ソフィーが役立たずって意味じゃないよ!?ソフィーは居るだけで人類に希望を与えるんだから。ソフィーを役立たずなんて言う奴は俺が制裁を下すから」

「止めて下さい師匠」


 師匠が私を止めるのは私の体がまだ小さいからというのもあるのだろう。大量の魔力への耐性を高めたら私の体は再び成長を開始するらしい。

 それまではいくらか魔術が上手くなっても半人前だ。


「ただ単に手元から離したくないだけじゃ………」

「何だって?」

「ナンデモナイデス」

「作業が終わったら呼ぶからそれまでは自分の仕事をしていなよ」

「はいっ!」


 師匠が言うとザコさんは勢いよく部屋を出ていった。……ドアは丁寧に閉めて行ったが。




 私が作業をしている間、師匠はひたすら私をいじる。

 お腹に手を回してぎゅっと抱き締めたり、つむじにキスを落としたり、髪をんでみたり……。

 最後のはちょっとやめといた方がいいと思う。

 そして時々追加の魔石をケースから魔術で取り寄せてくれた。今日はあくまでも見守るスタイルなのだろう。


 大体の作業を終えると、不意に視線を感じた。

 入り口を見ると、無数の目が隙間からこちらを覗いている。

 無数は言い過ぎた。精々十個くらいだ。

 話し声が聞こえてくる。


「魔王様が幼女を膝に乗せてるぞ」

「馬鹿!見た目は幼女でも17歳だって言ってただろ!魔王様に煤にされんぞ!!」

「合法ロリか」

「魔王様を拝顔しても蹴られないなんて……」

「魔王様の仕事が進んでいるだとっ!?」


 ……師匠がご迷惑を掛けてたようで。


 魔王扱いって何したの。

 ジトリと師匠を見る。


 すると、師匠は入り口に向けてニッコリ笑って言った。


「合法ロリって言った奴出てこい」


 師匠によるフルボッコが決定した。


 またひそひそ声が聞こえる。


「あいつ災難だな……」

「燃やされたパンツもあいつのだろ?」


 なんと!!パンツの主か!


「「「「可哀想に」」」」


 ………可哀想とか言いつつパンツの主を師匠の前に押し出すのはどうなんだろう。

 パンツさんはもう半泣きだ。


「あ、」


 師匠に目を塞がれた。

 何も見えぬ。

 うごうご抵抗をする。


「ソフィー大人しくして」


 師匠に耳元で囁かれたので動きを止める。


「いい子だ」


 集中して疲れていたのだろう。

 師匠にそう呟かれたのを皮切りに私の意識はストンと落ちた。






***









 俺の腕の中でソフィーが寝息を立てている。……かわいい。


 ソフィーを見て合法ロリとか抜かしやがった奴には然るべき制裁を下してやった。俺のソフィーをいやらしい目で見る奴は全員消えればいいと思う。


 この温もりと腕に掛かる重さすら愛しい。


 ソフィーの寝顔を堪能しているとザコ君が声を掛けてくる。


「それにしても、フィロ様過保護過ぎませんか?」

「どこがだい?」

王都ここでも済む修行の為にわざわざ田舎へ引っ越したり、近くの町でソフィーさんが買い物に行く時間だけ若い男を引っ込ませたりしていることですよ」

「普通だろう?」

「普通じゃないですよ。あと、ソフィーさんに自分をまだ未熟と思わせたり」

「まだソフィーの膨大な魔力に耐えうる器が出来上がっていないのだから当然だろう」

「ソフィーさんは実力も足りないと思い込んでいますよね?ソフィーさんがいれば、フィロ様が居なくてもこの搭は機能するんですけどねぇ」

「俺からソフィーを取り上げる気?そんなことしたら大泣きしながらこの搭ごとお前らをぶっ潰すけど」

「いろんな意味で痛いので止めて下さい」


 俺はクスクスと笑う。

 ザコ君はそんな俺を見て顔を顰めた。


「……貴方がそこまで穏やかな表情をするなんて思いませんでした」

「そうかい?ソフィーと居る時の俺は何時もこんな感じだよ」


 そう言うとザコ君は少し目を見開いた。


「本当にその子が大切なのですね」

「ああ、大事だよ……………あと、勘違いしないでね?」

「何をですか?」




「俺はソフィーを保護対象として好きなんじゃなくて、一人の女性として愛してるんだから」



 ザコ君はやはり驚いたような仕草を見せるが、俺の行動から予想はしていたのだろう、犯罪者を見るような視線は向けられなかった。代わりにドン引きだと顔が言っていた。


「…………見た目的には犯罪かと」

「失敬な。ちゃんとソフィーの体が見た目に追い付く迄は待つよ。きっともうすぐだ。……その後は容赦なく囲い込むけどね~」


 さてと、そろそろ帰ろうと俺は腰を上げる。勿論ちゃんとソフィーは抱き上げて。


 ザコ君に向けて言う。


「じゃーねーザコ君。また半年くらいは来ないから~」

「三ヶ月後くらいには来てもらえると助かります」

「三ヶ月かけて考えとくよ」




「…………ソフィーさんも可哀想に」


 俺は機嫌が良かったから転移する直前のザコ君の呟きはスルーしてあげた。










 家に着くと、未だに起きないソフィーを慎重にベッドに寝かせる。

 ベッドサイドの椅子に座りそのぷにぷにの頬をつつく。それだけで口角が緩む。










「よく寝て早く成長するんだよ、ソフィー。俺が待ちきれなくなる前に……」




















 私は狸寝入りから覚められなくなった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

見た目幼女な私は師匠(保護者)に溺愛される 雪野ゆきの @yukinoyukino

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ