おまえの腰巻をつけてやる!

結婚して初めて、妻と一緒に大型書店へ行ったときのことです。


「ちょっと見たいから」と断って、私は広い店内のとある一角を目指しました。

そこはライトノベル、いわゆるラノベのコーナーです。

平置き台に並ぶ色とりどりの本を見て、妻が呟きました。


「なんか……すごいね、ここ」

「えっ」


古参のオタクたる私にとって、それは当たり前の光景だったのですが、オタクっ気のほとんどない妻にとっては違いました。

もちろん、彼女は最愛(ふふっ)の夫の嗜好をさげすんだのではありません。ただ単に、理解できない種類の「派手さビジョアル」を感じただけのことです。妻はそのコーナーの存在自体は知ってはいましたが、もともと興味がない他の趣味のコーナーと同じく、今までまったく目に入らなかったのでした。


そこに並ぶ本はすべて、関わる人たちが差別化の工夫を凝らして作ったものです。

しかし、関係ない人にとっては、ゲーム絵の美少女たちの本が山積みでズラッと並ぶ、「すごい」不思議な場所にしか見えなかったのです。


私がはじめてカクヨムを訪れたとき、トップ画面の印象もまた同じでした。

ああ、これ、アレだ。ラノベの平置き台だ、と。


もちろん、それぞれのユーザーの小説には、ゲーム絵の表紙などありません。

しかし、小説タイトルよりも大きいフォントで、小説タイトルより色とりどりで、小説タイトルよりも上に、キャッチコピーが表示されています。

初めて見た人にとっては、「なんでキャッチコピーをそんなに目立たせるの」という疑問と共に、眩暈めまいのするような文章の洪水のように見えるでしょう。

私にとって、カクヨムのトップ画面に並ぶキャッチコピー群は、大型書店の平置き台に並ぶラノベの表紙たちであると言えるのです。


※ご注意 たぶん合っているとは思いますが、カクヨムのデザイナーさんは、まさしく「ラノベの平置き台」をイメージしてトップ画面をデザインしていると思います。いまさら何を、と言われるかも知れませんが。


しかし、キャッチコピーは絵ではなく、文章です。そしてカクヨムでは「自分で書いた」ものです。それを「表紙」として捉えるなら、本文ありレビュー(本レビ)の役割は明らかです。つまり、私にとって本レビとは、「他人が書いた表紙の一部」すなわち「腰巻」になるのです。


※ご注意 ご存知だとは思いますが、「腰巻」は帯、帯紙、袴とも呼称します。キャッチコピーやら「アニメ化!」とか書いてあるベルト状の紙のことですね。


私にとって「本レビ」イコール「腰巻」である、と「覚醒」してからは、本レビを書くことは楽しみのひとつになりました。だって、小説家のみならず、ラノベ編集者のロールプレイングも出来るんですよ?

作者さん本人にボツにされる体験も含めて(笑)。


私の選んだカクヨムの作品が、空想書店の平置き台に並び、私が書いた腰巻が付けられる。これで「いいね!」も付けてもらえたら……実にいい気持ちです。

居並ぶ本レビの中には、ただベタ褒めしてたり、単なる感想になってしまっている「ひとこと紹介」をよく見かけますが、実にもったいないなあ、と思います。それを言うなら、「キャッチコピー」をつけない作家さんも同じですが。


※ご注意 作者さんが自分で書く「キャッチコピー」とレビュアーが書く「ひとこと紹介」が同じ35文字までというのも、あきらかに意図的なデザインです。


最近、ようやくスタイルを確立できたのですが、私は現在、以下のような本レビを「編集者のように」心がけるようになりました。


1. 共感しやすく意外性のある導入部

2. 短所が長所に見えるように書く

 例;「文章がヘタ」 → 「情熱が描写を追い越す」

   「設定が穴だらけ」 → 「実験的な世界観」

   「ありがちジェネリック」 → 「定番おなじみ

3. 作品のどの点に注目したのか明確にする

4. できるだけ短くする

5. どんな人にお勧めなのかを書く

6. どこまで読んでレビューしたかを明記する


以上の考え方はあくまで私の意見にしか過ぎません。しかし、貴方が書く他人への本レビは、そして貴方自身の「キャッチコピー」は、まぎれもなく貴方の「作品」のひとつです。ただし、「作家としての作品」ではなく、「編集者としての作品」です。

ぜひ、小説と同じように楽しんで書くことを、お勧めします。


※ご注意 尻鳥はそれほど意識しててその程度の本レビなの?というツッコミされたら泣いてしまいますよ!


話は少し変わりますが、私には「こういうのがあったらいいのに」と思う種類の本レビがあります。残念ながら、いままで見かけたことはありません。

それは、差しさわりのない程度に事実ファクトを列挙する本レビです。

例を挙げます(あくまで架空の作品ですよ)。


小説だとすると。


【ひとこと紹介】

ズレた近未来と異世界が舞台、チート魔法で最強ざまぁ、若返り美形化


【レビュー本文】

実験的な世界観。ステイタス開く。弱者が俺様成り上がり。ルサンチマンと残虐さが、痛快ざまぁを引き立てる。定番ヒロインの性行為無しハーレム。のじゃ女神が土下座。

45読/155続にてレビュー。


エッセイだとすると。


【ひとこと紹介】

マナー違反者と運営へのお願い、ロジックを超える共感


【レビュー本文】

くだけた口語。実体験。カクヨムトリビア。私。長め。切実で真摯な気持ちが伝わった。ごく普通の投稿者なら共感すると思う。プロ作家(ラノベ以外)には理解してもらえない? 通報してみた。

2読/2完?にてレビュー。


といったものです。

つまり、マジで「小説を探す」助けになる本レビですね。

自分ではまったくやる気のないタイプなのですが、もし実在したら(見つけたら)

ぜひ「いいね!」を付けたいと思います。

たとえその作品を読まなかったとしても。



さて、次回は。

応援と応援コメントについて、貴方のモヤモヤ解消のために、参考になるかも知れないことを語りたいと思います。



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