第3話 思いもよらぬ頼み事

私に頼み事……。ついさっき、いわゆる社長本人の目の前で愚痴を言ってしまった私にするということは、楽な頼まれごとではないことは確かだ。

「た、頼み事とは?」

「単刀直入に言うと、桜さん、あなたはこれから社長の傍で仕事をしてもらいます。」

「…な、なるほど……って、え!?」

「…まぁ、そのような反応をされるのも無理ないでしょう。」

「……??」

私はまだ理解をしきれていない、だって、あの社長の傍で!?

すると、朝比奈さんは「まぁ、本人に話してもらった方が理解しやすいかな。」とぼそっといい、社長に視線を泳がせながらこう言った。

「今まで、先程のように社長にきっぱりと意見を言ってくださる方はいませんでした。」

「ま、まぁ、それはそうでしょうね……」

「そこで、桜さんを社長の近くに置くことで、これまでよりも良い社長を目指せるのではないかという私の判断です。」

「な、なるほど……」

社長は相変わらず「気に入らん」とムスッとした顔をしている。

「これまでは社長と部下にしかすぎませんでしたが、これからは社長の世話係ということになります。」

「え、お世話係……?」

「"お"をつけるな!俺は子供じゃないぞ!」といきなり反発してくる社長。

「お世話係と言っても、秘書はもう私がいるので、仕事は今までとそう変わりはしません。ただ、仕事場が今までのオフィスではなく、ここ、社長室で行ってもらいます。」

「「……えっ」」社長と私、同時に驚きの声を上げる。そしてすぐに社長が言った。

「おい、朝比奈!それは聞いてないぞ!社員がいたら、邪魔になるだろう!それに……っ」

「いいえ、邪魔にはなりませんよ、相手側のお偉いさんがいらっしゃった場合も、お茶出しなどを手伝ってもらいます。」

「……ぐぬぬ。」と社長。

(す、すごい、社長が秘書に追い込まれてる……)

「何か途中て言いかけてましたね?それに、なんです?」

「そ、それに……っ、お前は隣の部屋で仕事するから、お、女と2人っきりになるだろうが!」

「え、そこ心配します……?」と思わず声を出してしまった私。

「あぁ、そうですね。もうこうなったら全て言ってしまいましょう。」

「お、おい朝比奈!お前まさか!」

「桜さん、社長はああ見えて、女性経験がこれっぽっちもありません。」

「・・・あ、はい、そうです、よね?」

なんかさっきからの会話を見てたらだいたい予想が着いてしまった……。

「おいお前!"そうですよね"って失礼だろうが!悪かったななくて!俺はキャーキャー騒ぐ女が嫌いなんだ!」

「社長、問題ありませんよ。相手はあの社長の愚痴を言ってた桜さんです。あなたの美貌にもまるで興味がありません。それに、新人にも関わらず早朝出勤、そして他の新人よりも倍近くの仕事をこなしていることを部の上司から聞いております。」

「あぁ、そうか。お前ならいいか。」

なんか途中少し貶された感が否めないけど、まぁ、いいや。

「では、他に分からないことがありましたら、朝比奈までお願いします。では、失礼します。」とササッと部屋を出ていく朝比奈さん。

いや、何この空気。

「おい、桜」

「はい!(やっと名前で呼ばれた…)」

「よ、よろしく頼む……」

「社長、なんか雰囲気変わりました?」

「……はぁ!?」

「なんでもないです。」

私はこうして黒王子と白王子の近くで仕事をすることになりました_。

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