ハイミルクチョコレート
カゲトモ
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「はい、お誕生日おめでとう」
「・・・ありがと」
手を出して受け取ったのは黄色いリボンの掛かった四角い箱。やっぱり今年からはこれだけか。まぁ、わかっちゃいたけどさ。
「もうバイトもしているんだから誕生日プレゼントは自分で買ってね」
「わかってるって」
「それで、何か買うの?」
「金がもったいないから買わない」
誕生日だからって自分に自分で買うのって、ちょっと寂しくない? なんて。それに自分で買えるようなものは誕生日関係なく買うし。新しいパソコンが欲しいけど、それは地道にバイトするしかないか。
「さーて、今年は沢山もらえるかなー?」
「いや、さすがに今年からはないでしょ。だって俺、そんなに女子と仲良くないし」
「え、あんたモテないの?」
「逆に、今までの俺を見て母さんはモテていたなんて本気で思っているの」
「いや思ってないけど」
やめろ即答するな。確かに俺はモテてはいないけどさっ!
「モテてはないけどいつも誕生日には沢山もらっていたじゃない、チョコレート」
「それは誕生日がバレンタインだから」
小中高と毎年誕生日プレゼントと称してクラスメイトの何人かからチョコはもらっていたりしたけど、どれもこれも本命じゃないし。
「そうよね、義理よね。沢山用意した友チョコのついでよね」
「そうだよ、ちゃんとわきまえてるよっ。母さんは何、朝から俺のガラスのハートを叩き割りたいの? 俺、今日誕生日なのに」
誕生日だからってプレゼントをチョコにされる俺の気持ち、わかる?
「いや、誕生日がバレンタインだとチョコ沢山もらえて得よねって思って。世の男性はうらやむわよ。だってモテなくてもプレゼントとしてもらえるじゃない」
「余計寂しいわ」
誕生日プレゼントでもバレンタインのチョコとしてもらったならお返ししないわけにはいかないし、どう見たって明らかに義理チョコだし。正直面倒だったし。
「ま、でもそれも今年で終わりよね、もう大学生なんだし」
「まーね。サークルにもゼミにも女子いないし、今年はホワイトデー気にしなくてよさそうだわ」
「寂しいわね、一人くらい居ないの? 義理でもいいから」
「そこは誕生日プレゼントじゃだめなの」
「彼女いないのに?」
「うるさい」
別にどうでもいい。チョコとか誕生日とか。今の俺には関係ないんじゃない?
「それじゃ今年のチョコは母さんからの一個だけかぁ」
「その顔やめて」
ジト、と見つめる母さんに背中を向けて玄関に向かう。チョコを一つしかもらえないバレンタインってのも新鮮でいいんじゃん?
「じゃ、行ってきまーす」
ドアを開けるとマフラーの隙間に風が入って寒さが身体を吹き抜けた。マフラーを巻きなおしながら敷地を出ると「あ」久しぶりの顔と目があった。
「はよ」
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