(23)~旅商人少年と討伐隊~ ―ライゼ視点―
ライゼは森の中をセレスタイトを探しながら走っていた。
走っているうちに目が慣れて来たとはいえ、夜の所為で当たりは暗い。
それでもライゼは、セレスタイトの無事を祈りながら森の奥へ、奥へと進んで行った。
しばらくして、ライゼは森の木々の中に一箇所灯りがついているところがある。
---もしかして、セレスか?
そう思い、光のある木々の方に近き、木に手をかけてその先を見た……
が、そこにセレスタイトの姿はなかった。
---クソっ…違った。
ライゼは思わず手をかけていた木を殴る。
そこにいたのは、つかの間の休息をとっていた討伐隊の男たちだった。
男たちはライゼの姿を見ると、皆驚きの表情を見せる。
「おい小僧!おまえ、なんで森にいるんだ!」
そのうちの一人、おそらく討伐隊のリーダーらしい厳つい男がライゼを怒鳴りつけた。
しかし、ライゼは怯まなかった。
「人を探しているんです。俺と同じくらいの年の女の子見ませんでしたか?」
「いや、見てない……ここは魔物が出て危ない、その子は俺たちが探しておく。だからおまえはもう帰れ!」
「いえ、セレスが見つかるまで帰れません。」
「んなこと言ったってよ……」
討伐隊のリーダーが何かを言おうとしたその時、
唸り声をあげた魔物が数匹、討伐隊の方に向かって来た。
「ちっ…奴らが湧いて来やがった。おい野郎ども!位置につきやがれ、奴らのお出ましだぁ!…小僧、おまえは危ないからさがってろ!」
そう言って、男は自分の腰に下げていた長剣を抜き、魔物に向かって構える。
他の男たちも立ち上がり、位置につく。
そして程なく、魔物との交戦が始まった。
「手伝います!」
「おいっ、ちょっとまて」
男が止めるのを振り切り、ライゼも自分の剣を構え、すぐに近くにいた魔物を斬る。
その剣は正確に核に当たり、核を破壊された魔物は「ギャッ」と短い断末魔を上げ、すぐ砂となって消えて行った。
「なんだおまえ、そこそこ戦えるんじゃねか」
ライゼの動きを見ていた男は、自分に飛びかかってきた魔物を斬り払いながらライゼの横に行き、声を掛ける。
ライゼはまっすぐ魔物の方を見たまま、再び剣を構える。
「さっき言った女の子『悪しきもの』っていう魔物を倒そうとしているんです」
「『悪しきもの』だと⁉そんなもの報告にはなかったが……本当か?本当に︎ヤツが出やがったのか?」
ライゼがコクリと頷く。
「クソっ、じゃあこの瘴気はヤツのせいか……」
男が忌々しそうに顔を歪めた。
その時、
「ぐぁぁァァァぁぁ」
森の奥から何かが低く唸るような声がした。
「なんだっ?」
「もしや…セレス!」
「おい!待て小僧、そっちは危険だ!瘴気が強くなってやがる」
弾かれた様に森の奥に向かおうとしたライゼの肩に手をかけ、男が引き止める。
「でも、俺は先に行かないといけないんです!」
ライゼは男の方をじっと見返す。
ライゼの瞳には真剣な色が宿っていた。
その目を見た男は小さく息を吐くと、目を伏せ、
「…分かった。よし!ここは俺たちに任せろ、小僧、お前は先に行ってこい!」
そう言って思いっきりライゼの背中を張り飛ばした。
「…っありがとうございます!」
ライゼはお礼を言うと、瘴気の向こう、先程唸り声のした方向へと全速力で走り出した。
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「小僧、頑張れよ」
どんどん小さくなっていくライゼの後ろ姿に男は人知れず小さな声援を送った。
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