(4)〜魔女の少女は祭りを楽しむ〜


 大きな時計台の広場に着くと、薬屋のおかみさんが言っていた様に、もうすでに他の地域ところからやってきた旅商人たちが露店を開いて、各地の様々な品物を売っていた。




 被っているフードを少し上げ、セレスタイトは、広場の賑やかな様子に目を輝かせた。


 昼食も兼ねて食べ歩きをしつつ、露店を見て回っていると、先程まで行っていた、薬屋の店主に出会った。




「おじさん こんにちは」


「やあ、セレスタイト お前さんも祭りに来たのかい?」


「お店に薬を持って行った帰りだよ ごめん、薬ちょっと多めに作っちゃった」


「そうかそうか、ありがとうな そういやセレスタイト、もう広場の北側には行ったか?」


「? まだだけど…」


「あっちの方に古本屋があったぞ お前さん本好きだし、掘り出しものがあるかもしれんぞ?」


「え?本当?ありがとう行ってみるよ!」


「ああ、行っといで」




 セレスタイトは薬屋の店主にお礼を言うと、急いで広場の北側へと、駆けて行った。




 セレスタイトは、広場の北側に着くと直ぐにお目当ての古本屋を見つけた。


 そして、真っ先に古本屋に入ろうとしたとき、古本屋の数軒手前に、雑貨を売っている露店を見つけた。




 ―――あ、あの雑貨屋さん気になる…… うーん、古本屋さんはきっと見るのに時間がかかるから…… よし、先に雑貨を見てから古本屋に行こう!




 店には、食器からどこかの伝統工芸品まで、多種多様な商品が並べられている。




 セレスタイトが店先に飾ってある商品を眺めていると、ふとある髪飾りが目に留まった。


 それは、小さな青い花の飾りが付いた、綺麗な髪飾りだった。




 セレスタイトがしばらくその髪飾りを眺めていると、「お嬢さん、それ、気に入ったの?」 と、声がした。


 ハッと顔を上げると、自分と同じくらいの年の少年が、通常 店主が座っているべきところに座っている。




 ―――この人がこの露店の店主さん?私と同い年くらいだ…




 セレスタイトが頷くと、店主らしき少年が、「少しまけてあげようか?」と言う。




 髪飾りに付いている値札を見ると、少しまけてもらったとしても、やっぱり少し高いくらいの値段が書かれていた。




 ―――うーん……欲しい、けどこの後古本屋に行くし…あんまり贅沢するのもよくないよね……




「ごめんなさい、私にはちょっとだけ高かったみたい…また来ます」


「そっか…残念、また来てね」




 ―――うーん……髪飾り可愛かったな…もう少しお金持ってくれば良かった…




 セレスタイトは雑貨の露店を出ると、気分を切り替えて、数軒先の古本屋に向かう。


 ―――さて、お目当の古本屋さんだ!どんな本買おうかな?




 古本屋に入ると、セレスタイトは目を輝かせ、それこそ本当に時間を忘れて、本選びに没頭した。




 そして、気が付いた頃には、辺りは夕日で当たりが真っ赤に染まっていて、時計台の暮れの鐘が鳴っていた……


「しまった、暮れの辻馬車の時間!」


 セレスタイトは、急いでいくつか気に入った本を選び、それを買って、急いで店を飛び出した。




 しかし、セレスタイトが乗り場に着いた時、ちょうど最期の辻馬車が、出発してしまったところだった。


「しまった、どうしよう…もう馬車行っちゃった…」




 ―――どうしよう、歩いて帰るには結構な距離だし危ないし…あ!転移魔法陣! あ、ダメだここ街中だから陣描けないしあれ、血が要るから痛いし…極力したくない……どうしよっか………




 セレスタイトが悩んで俯いていると、どこからか馬の蹄と、馬車の車輪の音が聞こえて来た。




 ―――わあ…まずい、悩みすぎて幻聴が聴こえてきたぁ




 すると、馬車の音は自分の前で止まる。




「あれ?さっきのお嬢さんだ、どうしたの?」


「え?」




 何か聞いたことのある声が聞こえて、セレスタイトが見ると、そこには先程の雑貨屋の店主の少年が荷馬車に乗っていた。


「もしかして、辻馬車に置いていかれたかな?」


「はい、おっしゃる通りです……」


 セレスタイトは気まずくなって、また顔を俯かせる…


 すると、少年が 「ねえ、お嬢さんってここの人だよね?」 と聞いて来た。




「? ええ、家自体は少し遠いですが…そうです」


「実はさ、今日 宿屋に行ったら全く部屋がなかったんだよね… と言うわけで、祭りの間だけでいいから泊めてくれないかな? 交換条件って事で」




 どう?と少年が聞いてくる。


 セレスタイトとしては、願っても無い話だった。




 ―――血を出さなくても、歩いて帰らなくてもいい方法が来たぁ




「よろしくお願いします!!」


「じゃ、交渉成立だ 俺は ライゼ で、こっちが相棒うまの ガスパル」


「セレスタイトです どうぞよろしくお願いします」


「セレスタイトか……ごめん、ちょっと言いにくいからさ、セレスって呼んでいい? あと、たぶん同い年くらいだし、堅苦しいのあんま好きじゃないからさ…敬語使わなくていいよ」


「そう?わかった よろしく!ライゼ、ガスパル」


「よろしくな!セレス」




 ライゼは、セレスタイトが荷馬車に乗ると、馬車を出した。そして、ライゼが来た方とは反対側の城門から町を出て、セレスタイトの家に向かって行った。
















 〜こうして二人は、出会った。そして二人は、この先のことをまだ知らない…〜


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