3.拠点づくりと意外な能力

 

 俺のチート能力がゴミほどにも戦闘力がないと分かったので、防衛拠点を作ることにした。

 とりあえず俺の知っている脅威はあの巨大な蜘蛛だから、巨大な生物に襲われないような構造にすべきだろう。


 ウサギの巣穴が有効だったことからも分かるように、入り口を小さくすべきだ。

 そして、日々そこで過ごしていくのだから、中は広くするべきだ。となると、横穴を広げるようにするのがベストだ。

 縦穴にした場合、出入りする為には天井の高さを制限しなくてはいけないからな。


 だから俺が探すべきなのは、手頃な崖だ。

 崖に念動力を使って穴を開けて、そこを俺の拠点とする。


 俺はなるべくコソコソと歩き出した。



 幸い10分後にはいい感じの崖を見つけた。

 崖の前には沢山木が生えていて目隠しになりそうだし、表面はデコボコしていて草花がたくさん生えている。

 ここになら穴を開けても目立たなそうだ。


 俺は崖に手を差し向け、念じた。

 想像通りに草を伴って土が動いていく。30センチくらいの塊がズズズと上に動いていく。足下から、30センチの幅を保ったまま、1メートルほどの高さまで溝を作る。

 これが玄関だ。

 細長い溝は俺が身体を横にしてようやく通れる幅だ。

 これなら蜘蛛は通れない。

 そのまま溝を奥に掘り下げていく。そうして掘り下げて出てきた土は……どうしようか。

 このまま崖の周辺に置いていては、目立ってしまうし……。


「あ!」


 俺は頭の上に豆電球を浮かべた。

 さっきステータスを確認したときに、念動力と一緒に出てきたんだった。


「無限倉庫!」


 呟いた瞬間、俺の前にまたもや半透明のまな板が現れた。

 まな板には、マス目が大量に書かれている。


 どうやって使うんこれ。

 疑問に思いながらも、俺は出てきた土をしまおうと意識した途端、土が消えた。使えた。


 それから俺は黙々と土を掘り進めていった。

 50センチほど細長い入り口を作ったところで、俺は穴の幅を拡げ始めた。

 そして、天井の高さも3メートルほどの高さに上げて、部屋の広さを6畳くらいにしたところでやっと一息ついた。

 何とか移住スペースもできたし、ひとまず蜘蛛に襲われる心配はなくなったからだ。

 気が抜けてちょっと湿った土の床に腰を下ろす。スーツのお尻が茶色く汚れてしまうけど、気にしてはいられない。

 落ち着いた今やっと気がついたが、腕の傷が塞がってね?

 あんなに深くキバが刺さったのに、もう血が出てないとかおかしくないだろうか。

 痛いことには痛いし、フラフラするが、ぶっといキバが刺さってこのレベルは有り得ない。いや、ていうかあんだけ走ってて出血量これだけというのは考えられない。

 もしかして……。

 俺はスーツの袖の破れた部分を広げて傷口を見た。思っていた通り、傷口からは血は出ていなかった。しかしそれはよくある回復魔法のように傷が跡形もなくなっているというわけではない。

 傷口はギュッと窄まっていた。縫い合わせた傷口みたいになってる。

 もしかして、念動力で肉を動かして、なんとかくっつけた……のでは?


 念動力、応急処置にも使えるようです。



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