第8話【執刀医】

300万Gを受け取り現金化したハシモトは外科医の元へゾッグを案内する事になった。

とは言え現状動けないゾッグは担架で運ばれる事になった。


「ニコ、 そっち持って」

「はい、 いっせーの」


担架で馬車に運ばれて外科医の元に向かった。


外科医の家はゾッグ程では無いが豪華な屋敷だった。

担架で運ばれて薄暗い部屋に運ばれるゾッグ。

ベッドの上に乗せられるとそこにはマスクをして帽子を被った男が手袋を付けて待っていた。


「初めまして、 本日貴方の執刀を担当するマットウです、 よろしくお願いします」

「・・・な、 なぁ、 アンタ俺の腕を切るって本当なのか?」

「えぇ、 御安心下さい、 私の腕ならば貴方の腕を問題無く切断出来ます」

「そ、 そうなのか・・・今更だが緊張して来た」

「ではゾッグさん、 私達は外に出ていますので、 ジーヤさんも外に」

「いえ、 私はここに居ます」

「それは困りますね、 執刀中は関係無い人は出て行って貰わないと執刀出来ません」

「・・・分かりました、 では外に出ています」


外に出る三人。

ゾッグは横になりながらマットウを見る。


「では上半身を脱がしますよ」

「あ、 あぁ」


上着を脱ぐゾッグ。


「では横になって下さい」

「わ、 分かった」


横になるゾッグ。


「ではこれから痛みを消す薬を注射します」

「わ、 分かった」


何本か痛みを消す薬を注射される。


「薬が効くまで待っていて下さい」

「わ、 分かった・・・」


暫くして痛みが無い事を確認してからマットウは執刀を開始した。






「な、 なぁ・・・今切っているのか?」

「えぇ」

「今、 どんな感じだ?」

「今、 骨を切除している所です」


ゴリゴリ、 と音が聞こえる。


「な、 何だか実感がねぇよ・・・」

「実感が有ったら痛みで死んでいるかもしれませんよ」

「は、 はは・・・」


気まずい沈黙が流れる。

痛みも無く静かだったので眠ってしまったゾッグ。

目を覚ますと自宅のベッドの上だった。

夢だったのか? と思うと左腕が無くなっていた。

幽霊に憑りつかれていた感覚が消えたが左腕も消えた喪失感にゾッグは泣いた。





事務所に戻ったハシモトとニコ。


「何というか・・・酷い男でしたね」

「まぁこの仕事をしているとこういうケースは良く有るよ」

「そうなんですか・・・」

「まぁこういう仕事じゃなくても屑に遭う事は有るし気にしない方が良いよ」


―――――――――――――――――――――――――――


【登場人物紹介】

マットウ

幽霊ごと体を切除して幽霊を除霊する外科医

お堅い職業だが実は若い頃はラッパーになりたかった

無意識に韻を踏む癖がある

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