学校でも有名な無愛想美少女、実は根っからのオタクでなぜか最近、僕にしつこく付きまとう。
梅本ポッター
第1話 オタク女子とゲームをする
日が落ちる時間帯、この時間帯なら普通学生は遊んでいた友達とも別れて家に一直線に帰るコースだ。
だが今の僕の状況はちょっと違う。
マンションの一室、その一室には僕と女子高校生の二人がベッドに座っている。何かをしようとすることもなくただ二人は静かに座っていた。
ドキドキと心臓が動いて、どんどん鼓動が早くなっている……そんな気がする。
一般的な男子高校生の思考的に一室で男女が二人きりの状況、ナニかがあるに違いないと思うだろう。
それはあまり人前では口には出せないがカップルがよくすること……そうやってオブラートに包んでおこうと思う。
とにかくこんな状況、僕の人生にはあまりなかったことなのだ。
そんな時、隣に座っていた女の子が急に立ち上がった。
「…………!?」
僕の隣にいたその子は、少し緊張したようにその美人で可愛い顔を赤くしながら僕を見た。
「さぁっ! やっヤルわよ!」
僕はその声にコクリとうなずき、立ち上がって準備をする。
制服を脱ぎ、その脱いだ服を駄々草にその辺に置く。その様子を見て女の子も制服のブラウスを脱いでシャツとなり、第一ボタン、第二ボタンも外す。
「……準備はいい? 僕はえっと……割とその遠慮とかしないからね?」
「……のぞむ……ところよ」
そして僕たちは確固たる意志を持って始めたんだ!
「ああぁぁぁんん!!」
「ほっ! よっ!」
「あぁ! そこは!」
「あらよっと……!」
部屋の中に男女のなんとも言えない声がこだまする。
僕たちはどんどん時が経つたびに体が火照っているのを感じる。少しばかり汗もかいてきた。
僕らが一体部屋でナニをしているかというと……。
「しかしやはり名作ね。ナ◯ト激闘忍者対戦4は」
「これ小学校の頃、何度もやったからな〜」
「個人的にはまだデ◯ダラがいない分、ちょっとテンションが下がるけどまぁそれを差し引いても名作には変わりないわよね」
「デ◯ダラが好きなんだね、僕はイ◯チ一筋だけどな」
「マンガ界お兄さんにしたいランキング上位には絶対入ってるわよね、あの人絶対」
そういうと女の子はゲームキューブコントローラーを置いて外を見る。
そう、僕らはゲームをしていた。
某忍者漫画の対戦ゲームである。昔ながらの作品でひょっとしたら今の小学生達は知らないかもしれないが名作である。
ゲーム内容は至ってシンプル、キャラを選択したのち対戦をする。必殺技の演出が昔の作品ながらとても良かったので僕もやり込んでいた。
そしてナニかを期待していた人がいたらまず最初に謝っておきます。
ただ一番期待を裏切られた思いなのは何を隠そう対戦相手の僕こと笠松蓮だということを忘れないでください。
「あらもう日が暮れてしまうわね。あなたこれからの予定は?」
「ないね、なさすぎて自分でもドン引いてる」
「ふーん、それは好都合ね。二人っきりだし」
「え? 何で?」
「だってその方が……」
その子は僕の顔を見てニヤける。
その綺麗で白い肌が特徴的な彼女の顔を見て僕は少し顔を赤くした。おかしいな、また暑くなってきたぞ?
もっもしかして……。
まさか彼女はそっち方面のことも考えていて……!?
「思う存分、ゲームできるじゃない!」
僕が希望していた淡い願いは木っ端微塵に壊された。
ちなみに僕の両親は海外で働いているため一人暮らしだったりする。
そのおかげなのかせいなのか、こうして夕飯時でも誰にも怒られることなくゲーム三昧なのだ。
******
数十分後、
「ふぅ〜 やはり楽しいことをしてるとどうしても時間が経つの早くなるわね。時でも止めてやろうかしら」
「もしかしてさ、晴野さんってジョ◯ョで好きなキャラは……」
「もちろんDI◯よ? あんなカリスマに満ちたキャラ見たことないわ」
「デ◯ダラといい、DI◯といい、好きなキャラみんな金髪だけど?」
「たまたまじゃない? ほら話を脱線してると……」
僕が少しテレビ画面から目を離しているといつのまにか彼女が操作しているキャラが僕のキャラに急接近しており攻撃を仕掛けようとしていた。
「私の超ド級の一発が入るわよ! ジョ◯ョーー!!」
「いや誰がジ◯ジョだよ」
全然、僕波紋とか覚えてないんですけど。
テンションが上がりすぎてもはやキャラが定まっていないこの子は晴野理沙さん。僕と同じクラスのクラスメイトだ。
今はこんなバリバリのオタク力を出してるが実際、学校では無愛想の極み。学校で話しかけてくる男をニコリともせず一刀両断の美少女だ。
どうしてそんな子がこんな平日の放課後にボッチオタクの僕と二人っきりでゲームをしているのかというきっかけは長くなるのでまたいつかの話に。
そして僕らはゲームを続ける。
「それじゃあワ◯ピースは?」
「シャ◯クスね。あの優しさと寛大さには全国の男子はもっと見習ってほしいと思ってるわ」
「そこは金髪のサ◯ジじゃないんだ?」
「今の時代、足で倒すのにも限界があるようにも思うのよね〜」
「いやマンガの設定壊す言い方やめて!?」
ゲームをやりながらマニアック話が止まらない僕たち。
晴野さんのこんなところクラスや学校で見せたらみんなビックリだろう。それこそ覇気で雑魚キャラが気を失うレベルで。
「あのさ、好きなキャラが作中でいなくなったり、死んだりしたらどうする?」
「どうもこうもしないわよ、作者がそういう結末を選んだんなら素直に受け入れる……それが読者じゃない?」
「極端だな〜 僕は少しだけ悔しいって思っちゃうかな。だってその好きなキャラはさ、作中ではそれまでなんだよ?」
「キャラへの思いがすごいのね。……そう考えると悔しいって思っちゃうかも。私が好きなキャラだいたい死んじゃうし」
晴野さんは画面を見ながらそんなことを呟く。
「……あなたは死んじゃだめよ?」
晴野さんはクスッと笑いながら何か言った気がするがゲームに集中しすぎて僕は聞こえなかった。
******
ひと段落つき、コントローラーを置いて僕は晴野さんの方を見た。
「さて、これで僕が20戦20勝だけどまだやる?」
「当たり前でしょ。まだ試合は終わってないわよ? 右腕が投げれないようになってもまだ左腕で150キロ以上出せれば……」
「どこのメジ◯ー!? そんなしんどそうにやるなら止めますけど! あと他誌のタイトルのゲームやってる時に他誌の人気作品出すのやめようよ!」
「いいじゃない。コラボしてるみたいで私はちょっと望んでるけどな〜」
再びコントローラーを握りキャラを選びだす晴野さん。
「さぁーてまだまだやるわよ〜!」
テレビの画面をみるその表情は何か面白いものを見つけたように嬉しそうにする子供みたいな表情。
今の春野さんは愛嬌があるというか可愛げがあるというかそれこそ学校で有名な無愛想なんてかすりもしないものだった。
この表情は決して学校では見せないのではないだろうか、ましてや他の人にも。
ゲームをやってる最中、少しだけ僕はこの美少女の表情を自分だけ独り占めできていると思って嬉しくなった。
「はぁ〜 いつまで続くのやら」
「あら? 私、あなたとこうやって過ごす時間好きだけど?」
「え? それってどういう意味……」
この時間が好き? もしかして……晴野さん……?
「はっ! スキあり!」
「あ、ちょっと!?」
いつのまにか試合が始まっていて僕に攻撃をしてきた晴野さんにすぐさま反撃しようと僕は必死にゲームにのめり込んだ。
そうしていたらさっきの彼女の発言をいつのまにか忘れていたんだ。
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