第17話 レベル20到達

ゴブリン大討伐を無事に終えた俺とスノウは、回収した宝箱と魔石を抱えて帰還。


エクレールが、チョイチョイと宝箱をいじると、簡単に開けてしまった。

すげェ、すげぇよエクレール、何でもできるんだな。


「何でもはできませんよ。できることだけです。

残念ながら、大したものは入っていないようですね。

でも魔法石が、一つ入っていましたよ。」


魔法石とは、自然界に漂うマナが岩などにしみ込んでできる物で、天然の魔石というべきもの。


「魔法石は、主に魔道具の作製に利用されています。

初心者の内から装備に頼るのは良くないので、いままでは止めていましたが、

そろそろタケルさんも、魔道具を装備しても良い頃かもしれませんね。」


おぉ、魔道具、なんとも蠱惑的な響きだ。



魔道具に関しては、しばらく時間がかかるとのことなので、エクレールに任せておいて、

俺はゴブリン討伐で稼いだポイントを使って、新しい魔法を取得しておいた。


ウィンド・トルネード


風の竜巻が発生して、対象物を周囲もろとも空中に放り上げて、地面に落下させる。

強力な魔法だが、使うタイミングが難しい。

小さな風の渦が、竜巻になるまでに若干のタイムラグがあるのだ。

おいおい使用して、慣れていく必要があるだろう。


スノウとの連携も進展してきた。

慣れてきたスノウは、普段はプロテクション・スフィアの中でジッとしているが、タイミングを見て飛び出すと、空中を跳躍して、魔物の注意を引いて、俺が魔法を使う時間を稼いでくれる。


ここに来て、小物では経験値の伸びが悪いので、大物狙い的を絞ることにした。

俺達がターゲットに選んだのは、


ブルー・バイパー


真っ青な皮膚を持つ巨大な蛇の魔物だ。

体長は10メートルちかくあるだろうか、丸太のような太い体躯をくねらせながら移動している。

このあたりの主のようだ。堂々と森を闊歩している。


「ウィンド・トルネードッ!」


先手必勝、俺はタイミングを計ると新魔法を発動した。


突然、足元から発生した竜巻に巻き込まれたバイパーは、空高く舞い上がると空中に放り出される。

ドォォォンと轟音を響かせて地面に叩きつけられた。

ウィンド・トルネードでは、敵が大きければ大きいほど自重でダメージが大きくなる。


かなりのダメージを与えたようだが、魔物はまだ健在だ。


「アイス・バレットッ」


続けて冷気の魔法で、魔物の動きを鈍らせる。

氷の礫に覆われて、カチカチになりながらもバイパーは長い躯体を生かして尻尾を振り回してくる。

これが伸びる伸びる。

かなり距離を取っていたはずなのに、ゴォォォンと鈍い音を上げてプロテクション・スフィアを直撃した。

光球は無事だが、今まで感じたことない程の衝撃だ。

これでは数発も持たないかもしれない。


「アイス・バレットッ」


再度のアイス・バレットで、敵を氷まみれにすると、


「フォトン・ブラストッ」


魔法の光球を敵の頭部に集中的に叩き込んだ。

周囲の木々を巻き込みながら倒れるバイパー。


「やったか?」


魔物の状態を確認しようとした時、突然ブルー・バイパーの眼が真っ赤に光り輝くと俺を射抜く。

まずいッ、と思った時はもう遅かった。

体が硬直して動かない。

スノウも身動きが取れないようだ。


ゆっくりと近づいたバイパーは、ニヤリと笑うと口を開け巨大な牙で俺に噛みつこうとする。

ガァァァンとプロテクション・スフィアに遮られた敵は、牙が通らないと見るや、

長大な体で、プロテクション・スフィアごと中にいる俺とスノウを絞め殺そうとする。


グルグルと体躯に巻き付かれてあっという間に視界が真っ暗になる。

ギシギシと音を立てて歪む光体。

長くは持ちそうにない。


どうする?このままでは押しつぶされるのも時間の問題だ。


イチかバチか、俺は自らの足元でウィンド・トルネードを発動した。

真下で発生した巨大な竜巻が、俺とスノウとブルー・バイパーを空中に放り投げる。


かなり揺られたが、光体の守りのおかげでなんとか無傷で済んだ。

俺に抱えられたスノウは、目を回しているが大丈夫のよう。


一方で、再度地面に叩きつけられた魔物は、かなりのダメージを負ったようだ。


「アイス・バレット」


三度目のアイス・バレットで、魔物を完全に氷漬けにする。


「ファイア・ジャベリン」


さらに至近距離から炎の槍で貫かれて、さしものブルー・バイパーも動きを止めた。



こうして強敵を葬った俺についに待ち望んだ瞬間が訪れた。


そうレベル20に到達したのだ。

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