勇者、攻城戦?

魔王の空中要塞から押し寄せる敵軍勢、

これに応戦する勇者のクローン部隊。


クローンによる転移強奪で

大量のミサイルがばら撒かれ、

戦闘機がカミカゼ・アタックで

敵に激突すると周囲を巻き込み自爆する。


空のいたる所で爆煙が起こり、

視界を遮り、視認性が悪い。



地上戦で強奪した巨大ゴーレム十体が

地上から手を伸ばし

まるでハエや蚊を払うかのように

その巨大な手を振り回している。


地上戦の巨大ローラー作戦とは異なり

その効率は圧倒的に悪いが、仕方ない。



珍しく戦場のど真ん中で

勇者は戦局を見つめるが、

何故か勇者の周りだけは

敵が向かって行かない、

それどころか勇者の周囲の敵同士で

同士討ちをはじめる。


勇者に近寄った敵は、

勇者が認識出来なくなり

傍に居る本来の味方が

勇者に見えるという新しい催眠能力を

周囲に展開しているからだった。


-


空の戦場、そのど真ん中で

堂々と腕組みをして考え事をする勇者。


空中要塞のキャパ的な問題であろうが、

敵は地上戦程の無茶苦茶な数ではない、

そこはせめてもの救いと言える。


ここまで頼りにして来た

イヴァンとフロリア、

そのクローン達は回復中ではあるが

現時点ではあてに出来ない。


勇者のクローン部隊とドラゴン、ゴーレムで

何とか応戦しているが、

今地上から大軍勢で、

二方向から来られたら

相当に厳しい状況になる。


いずれにせよ

あの古代魔道兵器と魔王の魔力が

いつ回復するかはわからないが、

次の『裁きの雷』と魔王の同時攻撃を

耐え切ることは出来ない、

無理であろう。


そう考えるとここは

空の軍勢にクローンで応戦しつつ、

勇者が空中要塞に忍び込み

魔王の寝首をかくしかない。


もとより勇者は

この戦いを終わらせるには

魔王を暗殺するしかないと思っていた訳で

戦場で暗殺とは言わないのだろうが、

結局状況が違うだけで

やることは変わらないということになる。


最大の懸念は勇者が暗殺に失敗して

魔王とタイマンになった時、

アンチ転移フィールドの

中に入るということは

当然転移系の技が

一切使えないということであり、

勝てる方法があるのかということ。


しかしだからと言って

この状況が長引くのは

間違いなく敗戦に繋がるので

勇者としては行くしかない。


『まぁ、なんとか、

ならねえかな?』


-


透明化能力を使い、姿を消して

空中要塞へと潜入する勇者。


透明化能力のお陰で

全く敵兵に気づかれることなく

敵兵が出撃して来た出入り口から

すんなり侵入することは出来た。


先程魔王が

魔法を打って来た位置から考えると

城の上層部にいるとは推察される、

まだその付近にいればだが。


勇者は慎重に

匂いを消し、気配を消し、

気づかれないように

先へと歩を進める。


あくまで暗殺狙いであり、

気取られるとそこで一気に

圧倒的に不利となる、

力の差があり過ぎるため。



勇者が城の最上階に到達すると、

そこには玉座だけが置かれ

魔王の姿はなかった。


『既に移動済みか』


とその時突然、壁をぶち壊し

極大の光束が刹那の内に

勇者を背後から直撃した。


光の束に呑み込まれた勇者、

その肉体は完全に消滅する。






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