勇者の反撃

空中要塞から

魔王が放った光束が

東側の大陸を襲う。


それは大陸さえも一刀両断にする

高出力エネルギーそのもの。


直撃すれば一瞬で

東側の大陸が崩壊する。



その光線の射線上に現れる

この世界と異空間を繋ぐ巨大ゲート、

そしてその真下には、右手を高く

天に向けて突き上げた勇者の姿が。


膨大な高出力エネルギーは

まるで吸い込まれて行くかのように、

その巨大ゲートの中に

消え去って行く。


その出口は一体どこにあるのかは

分からない、もしかしたら

どこかの世界が滅んだかもしれない。


『転移スルー』


今迄まともに攻撃を受けるような

戦いをして来なかった勇者だが、

転移を防御や回避に応用した能力も

用意していない訳ではなかった。


敵の遠距離攻撃を全て

転移のゲートでスルーしてしまうため、

敵攻撃の威力がどれだけ凄くても

全く関係ない。


-


勇者は改めて思う、

魔王が魔王たる所以を。


力が支配するこの世界で

これだけの力を持っているならば、

それは王にもなれると言うものだ。


勇者は空中要塞からの

次の攻撃が来る前に反撃を開始する。


「転移、強奪」


今度は空中要塞の上空に

巨大ゲートが出現し、

その中から核ミサイルが落ちて行く。


ここまで何とか温存して来た

三発目の核兵器、

これまで二度その目にして来たが

やはり人類最強最悪の

兵器であることは疑いようがない。


勇者は勝利を確信する。



核ミサイル直撃の直前、

空中要塞上空に展開されるシールド。


着弾した核ミサイルが起爆し、

空中要塞は閃光の中に消え、

その後轟音と共に大爆発が起こる。


爆煙が大きく広がり

キノコ雲となって天高く登り、

なお広がり続けて行く。


-


爆煙が次第に薄れて行くと、

その中には巨大な影が。


「なっ、

あれを耐えたのかっ?」


爆炎が晴れて行くと

未だ健在である空中要塞が

目視で確認出来た。


まさしく最後の切り札を使っても

敵を倒すことが出来なかった勇者、

このまま次の敵の攻撃を防げるのか?

そう思わずにはいられない。


……しかし次の攻撃は来なかった。


「あれだけの攻撃を

続けて行ったのですから、

向こうもしばらくの間は

攻撃して来ることが出来ないでしょう」


確かにイヴァンも

あの魔法を使った後は、

二十四時間魔法が使えなくなる

と言っていた。



今が好機ではあるのだが、

アンチ転移フィールドで

転移系の技を封じられている勇者、

核兵器をも凌ぐあの空中要塞が

他の能力で破壊できるとも思えない。


しかしそれは敵も同じことであり、

次の攻撃が行えない今、

ここに留まることは

あまり得策ではないのだが、

アンチ転移フィールドを張っている限り、

空中要塞もまた転移して逃げることが出来ない。


一時的にでもフィールドを解除すれば

勇者に捉えられ転移消滅の餌食となる。



「大型兵器の撃ち合いが

出来ないとなると、

次はやはり攻城戦か?」


勇者がそう考えているとやはり

魔王の空中要塞から

空の軍勢が次々と飛び出して来た。


残存のクローン部隊が

空へとこれを向かえ打つ。






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