キティの知らない間になにかが起きてるぞ?



「キティ~!」

「? どうしたのリンちゃん」


 超ご機嫌なリンちゃんに出会った。

 両手を広げて廊下を走ってきたリンちゃんは、その勢いのまま私を抱き上げる。


「リンちゃんご機嫌だね」

「ああ、とってもいいことがあったからね」

「?」


 思い当たらない。首を傾げているとリンちゃんが教えてくれた。


「キティ、僕の養子にならない?」

「にゅ???」


 なんて?

 あまりに予想外のことに頭がついていかなかった。


「キティ、うんって言って? うんって」

「うん?」


「ジークハルト~!! キティの了承をゲットしたよ~!! 早く手続き進めて~!!」

「分かった」


 遠くからジークの声が聞こえた。

 ……ん? 今の返事になるの?


「キティ、今日から僕のことは父様って呼んで……あ、でもパパも捨てがたいな……」

「……パパさま」

「採用」


 リンちゃん―――パパさまは私を肩車までして大はしゃぎだ。

 おお、視線が高い。



***




 そして、あっという間に養子縁組の手続きは完了してしまった。


「キティ、はめられた……?」

「やだなぁ。はめてないよ」


 私は今ジークじゃなくてパパさまの膝の上に座っている。お腹の前でがっちり腕を組まれているので逃げ出すこともできない。


「んん~、キティちゃんかわいいでちゅね~」

「パパさまどしたの……?」


 パパさまの様子がおかしい。昨日まではこんな甘々溺愛やろーじゃなかったはずなのに、今や頭とかほっぺとかにちゅっちゅしまくり。


「パパさまはキティのパパさまだからね、キティが一人だった時間の分も甘やかしてあげたいんだよ」


 そう言って微笑むパパさまに優しく頭を撫でられる。

 ……な、なんだか照れ臭いけど嬉しいぞ?

 私は気付かないうちに人との関りを求めてたのかな……。


「キティが照れてる……可愛い」

「!?」


 ジークが微笑んでる!? 


 いや、今までも微笑んではいたんだけど、今の微笑みは蕩けそうというかなんと言うか……これまでとは違う感じの微笑みだ。今までのジークが氷だとしたら雪解け後みたいな……。

 この二人にいったい何があったんだろう?


「キティは僕の娘になったんだから、当然僕と一緒に住みたいよね?」

「何を言っている叔父上。キティは今まで通り俺と一緒に住みたいに決まってるだろう」

「「キティはどっちがいい!?」」

「にゅ?」


 まさかこっちに矛先が向くとは思わなかった。


「……えっと、キティは今までと変わらずジークの部屋にいたいかな……」

「だそうだぞ叔父上」

「ぐぬううう! キティ、ジークハルトと喧嘩したらパパさまのところにおいでね。むしろ積極的に喧嘩していこうね」

「おい」

「ジークとキティは仲良しよ?」


 キティとジークは仲良しだけど、パパさまとジークは今日はあんまり仲良くないみたい。私の頭上で睨み合ってる。


「キティを返せ」

「あ!」


 私をジークに取られたことでパパさまが声を上げる。

 そして私はいつもの定位置、ジークの膝の上に納まった。


「キティ、キティは今日も可愛いな。食べちゃいたいくらい可愛い」


 ジークは言葉の合間にちゅっちゅっと頭の天辺や耳にちゅーしてくる。


「ジークくしゅぐったい!」

「可愛い」


 今日のジークは砂糖の山にメープルシロップかけたんじゃないかってくらい甘い。


「チッ、気付いた途端これか。一体気付かせてやったのは誰だと思ってるんだ……」


 パパさま……?

 今チッて言った……?





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