濡れにゃんこ
本日は大嵐なり。
雨の日が苦手なキティはもちろん―――お外でびしょ濡れになっていた。
「れおーん」
「キティいいいいいいいいいいいいいいい!! なんでこんな日に限って外に出てんだああああ!!」
暴風によって飛ばされそうになった私をレオンがキャッチしてくれた。
「嵐がキティを呼んだの」
「キティそんなキャラじゃないだろ。大人しく魔王様の膝の上で引きこもってなさい」
「泥あそび……」
「めっ!!」
そのままレオンに抱っこされて強制的に帰還させられた。
「……結局泥だらけだな……」
「ぐっしょり……」
玄関に着いた頃には私もレオンもびしょ濡れになっていた。ちょっとレオンに申し訳ない。
ずぶ濡れの洋服を絞っていると、そこにジークがやってくる。
「どうした。そんなに濡れて。珍しくやんちゃなにゃんこだな」
「そういう気分だったの」
ジークが浄化魔法をかけてくれて私とレオンは一瞬で綺麗になった。そして綺麗になった私をジークが抱き上げる。
「ぺしょんっぬ」
くしゃみが出た。ついでに鼻水も出た。
「キティ、風呂に入って温まってこい」
「うんそうする。ズビッ」
ジークが鼻水をチーンしてくれた。
「ぴっちぴっち ちゃっぷちちゃっぷ♪」
大浴場の湯船で水面を叩く。昼間にお風呂に入りに来る人はいないから今は貸し切り状態だ。
大浴場の一番広いお風呂には口からお湯を吐き出すライオンの像がある。リアルな造形で高そうな像だけど、口からお湯が出るのってぶっちゃけ微妙だと思う。だってそんなのライオンのよだれじゃんね。
かくいう私が入ってるのもライオンのよだれ風呂。だって広いお風呂一人占めしたいじゃんね。
そして、広いお風呂で一人ならあれをやらなきゃいけない。そう、泳ぎだ。
記憶にある限り泳いだことはないけどまぁいけるでしょ。
せ~のっ。
「ごぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」
無理でした。
なんで手も足も動かしてるのに沈むの……?
「耳に水はいった……」
「風呂でなにをしたんだ?」
「せっかくの貸し切り風呂だから泳いでみた……」
「無謀なことを……」
「まことに遺憾なり……」
ジークが私の耳に手を当てて水を取ってくれた。耳から水が出ていく感覚にぶるりとする。
「キティは可愛いな」
「……?」
今どこに可愛さが?
「さてキティ、これからどうするんだ? また嵐の中外に遊びに行くか?」
そうジークが聞いてきたので私は座っているジークの膝によじ登った。そして寛げる体勢をとる。
「ちょっと疲れちゃったのでキティは大人しくジークの膝の上で引きこもります」
そう言うとジークはフッと笑って私の頭を撫で始めた。
そして慣れないことをした私は爆睡しました。
う~ん、撃沈。
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