末期の引きこもりが魔王のペットになって全力で愛でられます
雪野ゆきの
魔王様のペットは人型
贅を尽くした謁見の間。
広大なその部屋に一脚しか置かれていない絢爛豪華な椅子にその男は座っていた。
漆黒の艶やかな髪に絶世の美貌。だがその瞳には光を宿さず常に冷たい威圧感を放っている。
その男は魔王と呼ばれる存在だった。
魔族達は皆一様に男に向けて
上位魔族達の動揺の原因は魔王の長い脚の上に乗っているモノだ。
ソレは突き刺さるような視線に怯えるようにあろうことか魔王のマントをぐいぐい引っ張ってそれにくるまっているのだ。冷徹無慈悲の代名詞がそれを許容していることが信じられなかった。
さらに目を疑ったのが、魔王が自分の膝の上で体育座りをして小さくなっているソレの頭を撫でたことだ。その光景を目にしてしまった全員が視力検査をすることを胸に誓った。気に入らなければ女でも平然と殴る魔王が誰かを撫でるなんて古参の側近達でも見たことがなかった。
(おい、誰か魔王様のこのお姿を歴史に残せ!)
(ばっか!!恐ろしくて顔上げらんねぇよ!お前がやれ)
(無理だ!何が地雷かわかんねぇもん)
(はぁ、幻覚が見える。働きすぎかな……休暇申請しよ)
(大丈夫だみんな見えてる!お前だけじゃないぞ)
((((マジかっ!!!))))
テレパシーは大混線していた。
「魔王様、発言をお許しいただけますか?」
側近であるシオンが声を上げた。
「ああ、許す」
魔王は鷹揚に頷いた。
「ありがとうございます」
「魔王様、一体ソレは何ですか?」
(((((よくぞ聞いた!!!!)))))
魔族達の心の声が一致した。
「ん? ああ、これか」
魔王は自分のマントにしがみついているソレの脇に両手を差し込み皆に見せるように持ち上げた。
ソレは一応抵抗はしたみたいだが、魔王からしたら羽毛が触れたくらいにしか思われないだろう。あっけなくその姿が
ソレは抵抗を諦めたのか、力を抜いてびろーんとぶら下がっている。
その後に魔王から衝撃の一言。
「俺のペットだ」
一同は唖然とした。
ソレは魔王とは対照的な白い色彩の少女だった。
少女に視線が突き刺さる。
少女が非常に戸惑っているのが見て窺える。そこに魔王の非情な命令。
「何か言え」
「!?」
少女はびくりと身を縮ませおずおずと口を開いた。
「ゴ、ゴロニャーン……」
見事な棒読みであった。
少女は全力で目を逸らし俯いている。
「………」
「「「「「………」」」」」
魔王はそれに満足したのか再び少女を膝の上に戻した。少女はモゾモゾマントの中に戻っていく。
魔王のマントの中は、他の者にとっては瞬殺必至の処刑場だが、少女にとっては世界一安全な場所だった。
少女の動きが落ち着くと魔王は配下達を見やった。
「ん? お前達まだいたのか。用は済んだから行っていいぞ」
自分で呼んでおいて何とも理不尽なお言葉である。
―――もしかして魔王様、見せびらかしたかっただけですか………。
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