おちこぼれの厨房《アトリエ》
松田詩依
プロローグ
魔法という人智を超えた力を使う者たち。
自然の力を自身の手足のように操り、時には医者を超える力で人を癒す。
かつては人間と共存していた彼らを変えたのは「魔女狩り」と呼ばれるあまりにも残酷な迫害だった。
魔法使いとて同じ人間。けれど、魔力を持たない人間はいつしか魔法という力を許容できなくなった。
魔法使いの力を恐れ、化け物と罵倒し、罪もない彼らを弾圧したのだ。
罪のない彼らを罵倒し、迫害し、石を投げ、裁判にかけ、火で炙った。
魔女狩りによりただでさえ少なかった魔法使いの人口はほんの一握りになってしまう。
満身創痍の彼らは身を寄せ合った。自身を守るために、そしてこの力を絶やさぬために、人間たちから離れることを決意したのだ。
人間は、魔法使いを恐れ、憎んだ。
魔法使いは、人間を恐れ、恨んだ。
そうして魔法使いは、人間の前から姿を消した。
人里離れた場所。魔法使いしか入れない秘境に安住の地を開拓し魔法界という文明を築いたのだ。
人間界とは一線を引いた魔法界。それでもごく稀に人間界に住む物好きで変わり者の魔法使いもいた。
とある村のはずれの山の麓に建つ古い家。
かつて人間を好いていた変わり者だが有能な魔法使いの弟子が、今でもそこに住んでいる。
彼女の名前はルーサー。
魔法使いだというのに魔法が使えない落ちこぼれの
魔法使いたちからは蔑まれ、村人からは忌み嫌われる。
魔法界、人間界、そのどちら側にも属せない孤独な彼女を人々は哀れみと侮蔑の意を込めて『
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