第8話 とりあえず醤油はやめーや

 ふと気が付いたことがある。


「アオ、お前の料理全体的に醤油強くない?」


 結局できるときにやるというすっごい緩い役割分担の末、料理は俺かアオが互いに空いた時に行っている。

 のだが……アオの料理は、なんか醤油が濃い。

「そうですかね……料理というとむしろ私はシュンの方に言いたいことがあるのですが……」

「え、俺?」

 なんだと……一応諸事情で中高一人暮らしだったから基本的にこういった料理に関しては強いはずなんだけどなぁ……。

 一体何の文句があるというのだ?


「貴方の料理、全体的に甘いです」

「え?」

 ……甘い?

 ザラメは控えめに入れたはずだぞ?

 それが、甘い?

「えっと……例えば?」

 何が甘かったか、それさえ分かったらとりあえず変な混乱は避けれる。そう思って問いかけてみる。

「全部ですがあえて言うと煮魚ですね。びっくりするほど甘いです」

「え……ザラメ、いつもより少なめにしてたんだけど……」

 流石に実家の味だと甘いかと思って甘さを控えめにしたのに……甘い?

「ザラメ? って何ですか?」

「っザラメってのは……ちょっと待ってろ」

 ヤバイ、まさかザラメを知らない?

 キッチンの隅に置いてあったザラメを取り出す。

「これ。このちょっと茶色い砂糖」

「それ……煮魚にどれくらい入れてます?」

「二人前で大匙四杯くらい?」

「多い! そりゃ甘いですよ!」

 いきなり目を見開いてアオが言い出した。

「んなこと言うけど、お前は醤油どれくらいい入れてるんだよ? 煮魚全体的に醤油の味しかしないぞ!?」

 すると、アオは胸を張っていった。

「少なめに、魚半分くらいです! そこにみりんなど!」

「お前も醤油多い!」


 結局、調べてわかったのだが全体的に九州の味付けは甘く東北の味付けは塩辛いらしい。

 折衷案として、互いに想定よりもさらに少なく入れることになった。薄味万歳。



          続く

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