お嬢様とお散歩
「ふう……よく食べた」
ノアの作った朝ごはんを堪能して、俺は床に寝転ぶ。こんなにたくさん朝ごはんを食べたのは多分初めてだからな……つい心地よくなってこのまま眠ってしまいそうだ。
「ふふっ。美味しそうに食べてる純、すごく素敵だったわ」
「それだけノアのご飯が美味しかったからだよ」
「ありがとう! 大好きよ純!」
「……お、俺だって……」
ノアは俺の隣に寝転んで、すごい至近距離で好きだっていってくれた。やばいな……このままだと俺からキスをしてしまいそうなぐらい……近い距離で……。
「はいはいお二人さん。朝っぱらから二度寝はよくないから、散歩でもしてこい」
「さ、散歩ですか?」
だがこのまま寝転がることを佐野さんはよく思わなかったのか、パンパンと手を叩きながらそんなことをいう。あ、ここでイチャイチャはこれ以上させねーよって魂胆かな?
「あら、それはいいわね。私、あんまりここらへんには詳しくないから、純に案内してもらいたかったの」
「うーん、なら行こっか。佐野さんも来ます?」
「寝てる」
「やっぱり」
まあ外なら変なことをしないだろうと思って散歩してこいって言ったんだろうし。それに俺もせっかくノアが来たからどこかに行きたいと思ってたし。
「よし、じゃあ行こうノア」
「ええ!」
というわけで、俺とノアは近所を散歩することになった。ここら辺は何かとのどかな住宅街だし、変なことも起こらないだろう。俺は財布だけポケットに入れて、二人一緒に外に出る。
「……ん」
「じゅ、純!」
その際、初めて俺から手を繋いだ。……だって俺たちは恋人になったから。俺から手を繋いだって……おかしなことじゃないだろ。
「純から手を繋いでもらえるなんて……私、今日を「純が手を繋いでくれた記念日」にするわね!」
「そ、そこまで大袈裟にしなくていいよ!」
ノアはすごく喜んでくれて、優しく握り返して嬉しそうにしている。ああ、本当にノアは可愛い……ほんと、俺にはもったいないぐらい、可愛い彼女だ。
「じゃあどこ行こうか。公園とか行く?」
「そうしましょう!」
そんなわけで、とりあえずの目的地は公園になった。そこまで大きい場所ではないんだけど、ベンチとかあるし休憩もできるからいいかなって思った次第だ。そしてそこまで行く途中……。
「ねえ純、あそこに猫がいるわ! あ……逃げちゃった」
「ねえ純、あそこのカフェ良さそうな雰囲気だわ。今度一緒に行きましょう」
「ねえ純、ここのすーぱー? とても広いのね!」
ノアはたくさんいろんな発見をしていた。常に目を輝かせて色んなものを見つけるその姿は、まるで幼い子供のように純粋無垢で……やっぱ可愛い。ノアと散歩してよかったなあ。
「ここが公園だよ。あそこのベンチに座ろっか」
そんなこんなしてるうちに俺たちは公園について、ベンチに座った。なんの変哲も無い普通の公園だけど……それがいい。ゆっくりできるし。
「何も無いけど、それがいいわね」
「うん、ゆっくりできるからね」
「ふふっ。あら……他にもカップルがいるのね」
ふとノアが向ける視線の先には、1組のカップルがいた。男性の方は大学生のようで、温和そうな人だ。そして女性はちょっと小柄な高校生……かな? でもすごく可愛らしい顔をしている人だった。
「カップルなのかな。兄弟とかじゃない?」
「いーや、あれは確実にカップルよ。だってみて……二人とも、すごくお互いのことが好きってオーラ出てるもの」
「うー……いや、言われてみればわかる気がする」
確かにわかる気がした。だって俺も今それを出しているかもしれないから。事実さっき店の窓に映った俺の顔は……馬鹿みたいに幸せそうだったし。
「あ、キスしたわ」
「え」
人目がそれなりにある公園だってのに、女の人から男の人にキスをしていた。ああ……あれがラブラブカップルってものなのか?
「私たちも負けてられないわ。ちゅっ」
「ふぇ!?」
なぜかそれにノアは対抗して俺にキスしてきた。……でもまあ、したくなる気持ちはよくわかる。
「……ふふっ。私たちもこれぐらい、愛し合ってるものね」
ノアはしてやったりの顔をしながらニコッと笑い、俺はそれに笑いかえす。そうだよな、俺たちだって負けないぐらい愛し合ってるんだ。……いや、ここで競うのはちょっと違うかもしれないけど。
「あら、二人ともどこか行っちゃうわね」
用事があるのか、カップルはベンチから立ち上がって歩き出す。その際こちらの近くを通り過ぎていったのだが……。
「俺が実家から帰ってきて早々美来にキスされるなんてね……しかも公園で」
「だ、だって……泰さんに会えなくて……寂しかったんです」
「……ま、俺もだけど。帰ったら、いっぱい甘え合おうか」
「……はいっ!」
な、なんてイチャイチャしてるカップルなんだ! 会話だけでもすごく仲がいいってことが伝わってくる。
「じゃあ純、私たちも家に帰ったらいっぱい甘え合いましょう。私、純のこと膝枕とかしてみたいわ」
「へ!? の、ノアの膝枕……」
「い、いや?」
「そんなことない! すごくしてもらいたい!」
そんなの男のロマンそのものじゃないか!
「ふふっ、じゃあ帰りましょうか。楽しみにしててね、純!」
というわけで、俺たちも手を繋いで家に帰り……家でイチャイチャすることを決めたのだった。
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今回出てきたカップルのお話です。こちらの作品も読んでいただけると嬉しいです!
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