第22話 デート【withあーちゃん】③

 午後になった。

 俺とあーちゃんはプリクラの出来事もあり、すごく気まずい空気になっていた……いや、気まずいと思っているのは俺だけか。現にあーちゃんはあの後は何もなかったかのように接してきているし。


「お腹空いたね~」


「そ、そうだな。何か食べるか?」


 俺は横を歩くあーちゃんにそう訊いた。

 プリクラの後はまたいろいろとゲームを楽しんだ。

 さすがに十二時を過ぎればお腹が空いてくるのも分かる。

 が、よくよく考えれば、ラウンドツーに昼食をとれるような場所はなかったはず。せいぜい小腹を満たせるようなパンとかお菓子が売っている自販機くらいだったかな?

 そうなると、一旦外に出て、近くのファミレスなりファストフード店に行くしかないかもしれない。

 

「りょーくんは何か食べたいものとかある? 私、りょーくんと同じものでいいよ」


「そうか、じゃあ……カストに行くか?」


 大手ファミレスチェーンのカストなら食べたいものもある程度は揃ってるだろう。

 それにここからすぐ近くにあるから、昼食を終えたらまたラウンドツーに早く戻ってこれる。


「うん、じゃあ早く行こ?」


 あーちゃんはニコッと微笑むと俺の片手を掴んで、ラウンドツーを後にした。



 ラウンドツーから徒歩一分。

 俺とあーちゃんはカストにやって来た。

 カストは日曜日の昼時ということもあり、家族連れやカップル、友人同士とかでほぼ満席だ。

 俺とあーちゃんはギリギリのところでレジ付近から見て、一番右角の窓側の席が空いていて良かったが、俺たちより後に来たお客さんについては、順番待ちのようになっている。


「じゃあ、何食べようかな~」


 あーちゃんは席に座ると、さっそくメニュー表を開き、どこかわくわくした面持ちで選んでいく。

 ――俺と同じものじゃなかったのかよ……。

 ラウンドツーでは同じものがいいとか言ってたくせに、あーちゃんは「これも美味しそう!」とか言ってる。

 まぁ、別に同じでなくてもいいんだけどな。

 俺ももう一つあるメニュー表を手に取り、何があるのかを見る。

 特に食べたいと思うようなものがなかったためいつものセットに決めた。


「俺はもう決めたけど、あーちゃんは決まったか?」


「え?! もう決めちゃったの?!」


「ああ、そうだけど……」


「早すぎるよ! あともう少し待って! ね?」


「それは別にいいんだが……」


 もう先ほど自分が言った言葉を完全に忘れ、どれにしようか迷っているあーちゃん。

 ちなみに俺が注文しようと決めているのはハンバーグにライスとスープのセットだ。俺は昔からカストと言えばハンバーグと言っていいほど、ハンバーグしか食べていない。

 カストにはハンバーグ以外にもカツ丼だったり、ピザだったりといろいろなレパートリィが取り揃えられている。

 俺みたいにハンバーグ一択ならいいが、そうじゃないあーちゃんみたいな人にはどれも美味しそうで悩ましいだろう。


「よしっ! これに決めた!」


 あーちゃんはそう言うと、まるでポケ○ンの主人公であるサ○シを思わせるような、ビシッとした感じでメニュー表に指を刺す。

 

「本当にこれでいいんだな?」


 俺は最終確認も含め、注文前にそう訊いたのだが、


「う……やっぱりちょっと待って! これもやはり捨てがたい……」


 再び悩み始めてしまった。

 ただでさえ、カストに来てからもう二十分近くは経とうとしている。

 周りの店員さんの目線が申し訳なくて、直視することができない。

 ––––こうなるんだったら、確認しなければよかった……。

 俺は心の中で激しく後悔する。


「やっぱりこれでいいよ」


 結局、あーちゃんは最初に選んだものから変わらず、俺たちが注文できたのは、店に入ってから三十分後のことだった。

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