第15話 デート【with 舞】①
今日は土曜日。
いつもなら家でゴロゴロしていたり、ラノベや漫画、アニメ、ゲームと自分の好きなものをやりたい時にやっているそんな頃。
俺は近所の公園にいた。
なぜ近所の公園にいるのかというと、簡単に説明すれば待ち合わせをしているわけで誰を待っているのかというと……
「お、お待たせ……」
午後十一時前。
舞が少し恥ずかしそうな様子で現れた。
「少し待った……?」
「い、いや、別に……」
そう言って、俺は思わず目線を逸らしてしまう。
––––あれ? こいつ、こんなに可愛かったか?
舞の私服姿は見慣れているはずなのだが、この日に限ってはなんか違う。
ピンクの半袖トップスに膝くらいまでのデニム柄のタイトスカート。下はシンプルなサンダルで手には可愛らしいトートバッグ。
これは俺の直感であって、舞自身はそんなつもりはさらさらないと思うが、いつもより気合いが入っているようにも感じられる。
「じゃあ……行こっか」
舞はそう言うと、俺より先に歩き出した。
俺は慌てて舞の横につく。
「ところでなんだが、買い物に付き合ってほしいとか言ってたけど、何を買うつもりなんだ?」
先日、俺がボコボコに殴られた後、学校で舞から再びお誘いを受けた。
その際、「け、今朝のは、ただ……あ、あんたをからかいたかっただけだからねっ!」となぜ言うのだろうか……言われなくても分かっていたのだが。
とにかくお誘いを受けた俺は特に断る理由もなく、先ほどの公園で待ち合わせをしていたわけなんだけど、今考えれば公園で待ち合わせする必要あったか? 家も隣同士なんだからそのまま直接どちらかが家に尋ねればよかったんじゃないか?
と、今更ながらに気づく俺って、こういうところは自分でもつくづく思うくらいにバカだ。
一方で舞は、なぜか考えているような仕草を取っている。
「え、えーっと……そう! なんか買う」
「……決めてねーのかよ」
「し、仕方ないじゃん。買い物に行きたいなぁって咄嗟的に思ったんだから」
「そんな咄嗟的に思って俺を誘ったのかよ……」
俺はお前の荷物持ちか何かの便利道具かよ。
でも、まぁ、舞の買い物に付き合わされるのは結構あることだし、そこまで嫌というわけではないからいいんだが……どうしたんだろうか? さっきから隣を歩く舞が異様に落ち着かない様子。
もじもじしているというか、恥ずかしがっているというか……。いつもらしくない上によく分からないが、顔も少し赤い。
––––熱でもあるのか?
最近では新型肺炎とか蔓延し始めて、世界的にも感染が拡大しているとニュースでも言っていたし、それではないと思うにしろ、熱がある状態で外出するのは危ない。身体が心配だ。
「ちょっとごめん」
俺は一言断りを入れてから、舞の額に手を当てる。
すると、手を当てた瞬間、舞がビクッと震え、驚いた猫みたいな声を出す。
「にゃっ?!」
やっぱり少し熱いような気がする。
実際に体温計で測ってみないことにはなんとも言えないが、ここは万が一を考えて、引き返した方が良さそうかもしれない。
「にゃ、にゃにゃにゃにゃにするのよ!!!」
舞の顔が先ほどよりさらに赤くなった。
熱が上がり出したのか?
「舞、もしかしてなんだが、熱あるんじゃないか?」
「はあ?! あ、あるわけないでしょ!」
「でも、顔赤いぞ?」
そう告げると、舞は自分の顔を見られまいと瞬時に両手で覆い隠す。
「こ、これはその……」
「ほら、今日は無理せずに帰った方がいいんじゃ……」
「だ、だからこれはそーいうのじゃなくて……そ、そうよ! 朝コーヒーを飲んだから体温が上がったのよ!」
舞の説明を聞いて、そうだったのかと一瞬納得しかけたが……それって違くね?
たしかにコーヒーを飲めば体温が上がるとか言われてはいるけど、朝に飲めば、逆に体温を下げてしまう。
俺はそれを指摘しようとしたのだが、
「は、早く行くよっ」
「お、おい! ちょっと待てよ!」
俺を置いて、逃げるように先へとずいずい進んで行った。
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