サラリーマンは帰宅途中に立ち寄った「新世界」で異変が起こり「異世界」へ辿り着いてしまった!?・・・前編

小鳥遊凛音

サラリーマンは帰宅途中に立ち寄った「新世界」で異変が起こり「異世界」へ辿り着いてしまった!?・・・前編

和瀬 章一(かずせ しょういち)30歳・独身・・・出身地は大阪府。

仕事帰りに一杯飲みに帰宅途中に立ち寄れる「新世界」と言う大阪ならではの場所へ立ち寄るのだ。

非常に独特の世界感のある新世界・・・大阪で有名な通天閣がある街と言えば理解してもらえるだろうか?

それとも、真横にある天王寺動物園と言う動物園が有名な場所でもある。

串カツ屋などや昭和の古き良き時代に流行ったであろうスマートボールや飲み屋など大阪人にとっては馴染みの場所でもある。

そんな章一は今日も仕事帰りにふと新世界へ立ち寄るのだった・・・




「ほんま、今日も上司にこってりと絞られて・・・帰りにふと立ち寄る憩いのオアシス・・・さて、今日はどこの店に行こうかな・・・っと♪」




独身と言う事もある章一は、自宅へ帰っても誰も待っている人間はいない為、よく呑みながら店の店主や来客たちとワイワイと話をしたり夕食も兼ねて帰るのである。




「やっぱり今日は串カツな気分だな・・・いつものこの店に・・・」




ガラガラガラッ!




「らっしゃい!おっ!章ちゃん今日も1人か?ほんま自分顔は良いんやからはよ相方見つけたらどうや?」


「いきなり店に入った途端それかいっ!・・・こっちとて好きで1人でおる訳とちゃうわっ!!」


「その様子からすると今日もびっちりと絞られて来たみたいやな?はははっ♪まぁ、いつもの飲んで、適当にお薦め食べてたら気分も良くなって来るやろ?」




こうして常連オーラ丸出しで店主と他愛もない会話をしながら章一は会社での愚痴をこぼして行くのだ!!




「それにしても自分とこの上司って女ちゃうん?」


「そうなんや・・・顔は凄く美人でモテる系なんやけど、性格がしっかりし過ぎているせいか、俺はうまが合わへんねん・・・」


「それに歳下なんやろ?」


「そうやねん・・・25くらいって言ってたな・・・俺より後輩やのにいつの間にか上司になっとんねんな・・・世の中不公平やろ?」


「出来た女性とちゃうんか?・・・だからこそ自分みたいなのを引きずってでも会社に貢献しとんのとちゃうか?はい、おまっとうさん!」


「俺に貢献してくれよな?・・・ほんま・・・あぁ!ありがとう・・・今日も相変わらず美味そうやな!食欲そそるな!このビールと・・・串カツ!相性抜群やで!!」


「当たり前や!うちの串カツは日本一やからな!」


「ふふっ♪随分と面白そうな会話をしていらっしゃいますね♪私も混ぜてもらえませんか?」




いつもの何気ない会話をしていた章一に普段見掛けない女性客が声を掛けて来た・・・帽子を被り顔がはっきりと見えないが、長い髪を結って、凄くスレンダーな上品な雰囲気の女性だった・・・歳の頃20代前半だろうか?・・・

この様な店に1人でいる女性客も珍しいが、何より章一たちに話を掛けて来るのが極めて稀に思えた章一は少し違和感を覚えながらもその女性客とも話を交わして行く・・・




「えぇ、こんなおっさんトークで良かったらどうぞどうぞ♪」


「では、隣に移らせて頂きますね?宜しくお願いします♪」


「あの・・・初めてのお客さんですか?」


「えぇ♪あまりこの辺りは来ないのですが、少し気になっていたものですから・・・一度足を運んでみたいなって思いました。」


「そうですか・・・まぁ、おっさんばかりで日本酒の小瓶を昼間から持ち歩きながら飲んでいる様な場所やけど、温かい面白い場所なんで良かったらまた来てやって下さい!」




そう自分の居場所を良い感じに伝えた章一は笑顔で純粋さそのものだった。




「ここがお好きなんですね?」


「えぇ!勿論ですよ!こうやって毎日会社帰りには立ち寄っているんですよ!お姉さん、関西弁とちゃいますけど、どちらの方ですか?」


「はい・・・私は関東から最近こちらへやって来た者です♪」


「はい、お待ちぃ!!」


「おっ!ありがと!これも美味いから良かったら食べて?あっ!聞いてると思うけどタレは1回だけしか付けたらあかんよ?他のお客さんとも一緒に使わなあかんからね?」


「あっ!はい・・・ありがとう御座います。頂きます♪」




章一はごく普通に初めて来たと言っていたその女性客と打ち解けて行く。




「あの・・・お仕事はこの辺ですか?」


「はい・・・帰りにここを通るので会社の人が毎日通っている姿を見ていたものですから・・・」


「そうなんや・・・まぁ、サラリーマンだらけになると思うけど、特に仕事帰りの時間帯なんかやと・・・どんなお仕事なんですか?」


「はい・・・食品関係の事務をやっています・・・」


「偶然ですね!俺も同じなんですよ!・・・色々と厳しいですもんね。お客さんが口にする物を取り扱ってるから!」


「そうですよね♪・・・私も手に負えない部下を抱えているものですから・・・」


「はははっ!ほんま大変ですねぇ~!何度言っても出来ない奴もいるし!」


「そうなんです♪・・・何度叱っても同じミスを繰り返して私もそろそろ疲れて来てしまって・・・ふふっ♪」




(何や!?この異様な空気は・・・何処かで似た様な状態に・・・?)

そう思う章一であったが、まぁ、バレなきゃ良いだろうと引き続き話を進めるのである。




「でも、同じミスを繰り返すのはよく無いですけど、本人さんもきっと悪気は無いんじゃないかな?って俺は思う訳で・・・」


「ふふふ♪そうですか?・・・まぁ、ちゃんと意識して仕事をしていると同じ所でミスするなら更に注意して二度と起こさない様にするものですけれど?・・・」


「うっ・・・確かにそうですね・・・うん・・・分かる気がする・・・」




(やはり違和感がある・・・この会話・・・違和感と言うよりはむしろ、いつもの俺の立場と同じ?・・・)




「お兄さんも色々と大変なんでしょ?どう言うお仕事をされていらっしゃるんですか?」


「えっ!?・・・あぁ・・・俺も同じ様な仕事ですよ!?上司によく叱られています・・・ははは・・・はぁ~・・・」




痛い所を突いて来る女性客・・・だが素直な章一は、やはり嘘を隠し通す事は難しく、素直に自分がよく叱られている事を告げる・・・




「そうですか♪・・・それで?・・・同じミスをされるには何か原因があるとか考えられているのでしょうか?」


「はい・・・どうしても焦っちゃうんですよね・・・上司の言われる事には凄く同意しているので、やっぱり自分ももっと意識を高めないといけない・・・でも、どうしても時間に追われてしまうから特にミスしやすい所は繰り返してしまうんですよね・・・情けない話やけど・・・多分、本当は上司もしんどいんとちゃうかな・・・まだ俺よりも若いのに遠方から来て頑張っとるのに、俺なんてまだ独身で気楽にやってる方やし・・・」


「そんな事は無いと思いますよ?・・・ただ・・・ただ、自分が言った事をきちんと意識してくれているのならそれはきっと上司の方には伝わっているはず・・・だと私は思いますよ?」


「そうですかね?・・・いや、本当の事言うと、凄く憧れてるんですよ・・・あんなに若いのに仕事もバリバリやし、おまけに凄く綺麗やし・・・その・・・ひょっとして俺その人に・・・」


「ん?・・・どうかされましたか?」


「いやっ!!・・・何でも無いです・・・俺なんかがそんな感情を抱いても迷惑なだけやろうし・・・あの人もきっと・・・」


「ちょっと渋い顔になっちゃいましたよ?少しいじめ過ぎちゃいましたか?さぁ、飲みましょう?注いであげますからぁ♪」


「あっ・・・これはどうも・・・」




こうして新たに憩いの場での仲間が出来た章一であった・・・




「大将?手洗いいいかな?」


「おっ!ええよ!きょうは冷えるからな!」




寒い日の夜である事をすっかり忘れていた章一は途中、手洗いに行った。




「あの方は毎日ここへ?」


「いや、毎日ここ、新世界へ来てるんやけど、色々な店を周ってるからここは1~2週間に1度来る感じやな!ああ見えて気が利く良い人間なんやで?仕事でミスしているのも多分やけどお客さん第一に考えての失敗やろうな・・・人が良過ぎるんやね!最近はああ言う人間は少なくなってしまったからな・・・ここの店も章ちゃんに助けてもろうた事もあるんやで?」


「そう・・・だったのですか・・・」


「話聞いてたけど、姉ちゃん、章ちゃんの上司やろ?」


「分かっちゃいましたか?・・・まぁ、あれだけ話をしていたら普通は気付くでしょうね・・・」


「はははっ♪・・・まぁ、トウヘンボクな所も章ちゃんの良い所や!許してあげてや?」


「えぇ・・・特に怒っているつもりは無いんです・・・あの・・・どれ位通っているんですか?ここへは?」


「そうやな・・・もう10年くらいになるかな・・・章ちゃんが初めてここへ来たのが丁度入社してしばらくしてからやったからなぁ・・・早いもんやな時間が経つのは・・・」


「結構・・・長いんですね・・・」




「只今~・・・ってどうしたの?2人共?しんみりとした顔で!」


「いや、章ちゃんがトイレ長いなって話をしてたんや!」


「変な話するなよっ!!俺が何かしてたみたいやんけ!?」


「はははははっ!!まぁ、こんな感じの見たままの人間や!ついて行ってもちゃんと面倒は見てくれると思うよ?なぁ、章ちゃん?」


「はぁ?何の話やねんっ!?俺聞いてへんから下手に相槌も打てへんわっ!!」


「ぷっ・・・ぷぷぷっ♪」


「見てみぃ!笑われたやんかっ!!」




ほのぼのと食べて飲んで、時間が過ぎて行った。

そろそろ帰る時間だなと思った章一は店を出る事にした。




「大将、会計一緒で!」


「おっ!気前ええな!いつもはケチるのに?」


「うっさいわっ!!ケチった事なんてあらへんやろがっ!!」


「そうかいそうかい・・・じゃぁ2人で5500万円で500万円のおまけで5000万にしといたろう!」


「ほんまかっ!?大将気が利くな!!給料日までまだ日があるからなぁ・・・助かるわっ!!」


「あの・・・出しますよ?・・・そんな初めて会った方におごってもらう訳には・・・」


「ええんや!章ちゃんがおごるのなんてほんま珍しい事なんやから!」


「えっ!?・・・そうなんですか?」


「あぁ!章ちゃん、こう見えて気に入った人にしか出さへんからな!」


「大将、余計な事言うなって!」


「あぁ、悪いな!ちょっと口が出過ぎてしもうたな!毎度~!また寄ってや?」


「あぁ!ありがとう!ご馳走さん!」


「毎度ありぃ!」




帰り道、途中まで同じ方向だったので一緒に新世界を出ようとした2人だったが!?・・・




「おいっ!危ないっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




突然大きな声で危険を呼び掛ける声が聴こえた!!

真上を見た章一は大きな丸い得体の知れない物体が自分達の下へ落ちて来る事を悟るとすぐさま隣にいた女性客を突き飛ばし自分が犠牲になる形となった・・・






「ん・・・・・・・・・・」




何とか死ぬ事は無く章一は気が付いたみたいだ・・・




「あれ?・・・確か俺何か大きな得体の知れない黒い物が落ちて来たはず・・・周りも・・・何も無い?・・・あれ?さっきのお客さんの女の子は?・・・いない?」




辺りを見渡すと特に変わった変化は無かったけれど、隣にいた女性客らしき女性の姿だけが見当たらない・・・どうしてだろうか?消えた?・・・それより自分が生きているのにその女性をかばったはずなのに大丈夫だったのだろうか?ただひたすらその事に対しての不安が彼を襲っていた・・・




トントン・・・




立上がり色々と考えふけっていた章一を後方部の右肩を2度程軽く叩かれた為振り返ったそこには!?




「良かったぁ・・・本当に・・・」




振り向きざま泣きながら抱きついたのはあの女性客だった・・・

そうか・・・大丈夫だったんだ・・・

章一は安心してその抱き締めて来た女性を優しく抱き返してこの様に言った・・・




「俺は家族がいないんや・・・だから別に死んでも誰も悲しまへんけど、お姉さんはきっと悲しむ人が沢山いるやろうから・・・生きててくれてほんま良かった・・・良かった・・・」




笑顔で少し涙を浮かべながら女性の顔を見つめてこの様に述べた・・・




(章一・・・さん?・・・私・・・こんなに大切に思われていたのかな?・・・あなたに・・・ごめんなさい・・・私・・・いつも辛く当たって・・・でも・・・あれは本心じゃないの・・・どうしてもあなたに・・・ミスを・・・直して欲しくて・・・)




「さぁ、寒いし風邪引くとあかんからそろそろ帰ろう?・・・ってあれ?確か今日って寒かったっけ?」


「はい・・・凄く冷え込みました・・・でも・・・暖かい・・・?」




おかしい・・・つい今しがたまでマフラーをしっかりと首で絞めつけるほど寒かったはず・・・でも今は暖かい・・・どうしてだろう?




「とりあえず、帰りましょうか?」


「そう・・・やね・・・」




歩いて新世界を出ようとしたその時だった・・・




「あれ?・・・確か毎日こっちを歩いて駅まで行ってたけど、駅らしき場所が見当たらへんなぁ・・・」


「そうですね・・・私もこっちの方の駅から帰っていたのですが・・・」




不思議だった・・・いつもあるべき場所には駅が見当たらなかった・・・

丁度そこへ通り掛かった通行人に駅の場所を聞いてみた・・・




「あの・・・すいません?確かこの辺に駅ありましたよね?何で無いんやろう?毎日通ってるから間違える訳あらへんのに・・・」


「えっ!?・・・駅なんてここには元からありませんよ?」




(あれ?・・・確かに駅がここにあるはずなんやけどな?・・・何でや?)

章一は少し頭がパニック状態になりながらも冷静になろうとしていた・・・

今度は別の通行人に聞いてみる事にした・・・




「あの、すんません・・・ここに確か駅があったと思うんやけど・・・知りませんか?」


「えっ!?・・・ここに駅なんて初めからありませんよ?」




(嘘やろ!?俺、変な夢でも見てるのか?・・・さっきの衝撃で意識不明になってるとか?あかんやろ!?・・・そんなん・・・夢やったら早く覚めてくれへんかな!?)




「ねぇ、和瀬君!?・・・確かこの反対側には通天閣があったよね?」


「うん!そうそう、駅の反対側には・・・って無い!?・・・ちょっと待てよ?・・・嘘や!?これマジックか何か?それとも俺、やっぱり夢でも見とるんか!?」


「ううん・・・私もちゃんとここに存在しているよ?・・・夢なんかじゃないと思う・・・」




おかしい・・・何でや!?・・・どう考えてもあるべき場所に無いものが多い・・・それにさっきから通行人に声を掛けとるけど皆「標準語」しか喋ってないんとちゃうか!?

これも変やな・・・




「姉ちゃん?さっきから通行人に声掛けてるやん?皆標準語と違ったかな?」


「うん!確かにそうだよね・・・この辺りだと完全にベタな大阪弁ばかりが飛び交っているはずだったけれど・・・」


「やっぱり不自然やんな?・・・ここって・・・何処や?」


「「新世界」じゃないの?」


「どう見ても見た目は新世界やんな?・・・でも代表格の通天閣や他に駅すら見当たらへんし・・・やっぱりここって新世界じゃないんとちゃうか?」


「ここは・・・「新世界」とやらでは無いぞ?」


「ってあんた誰や!?・・・」


「私はこちらの世界を統一しているおっさんだ!」


「ちょっと待ち?自分で「おっさん」って!それに結構若く見えるけど?」


「少しイントネーションが違う様だな!「おっさん」だ!」


「だから「おっさん」やろ?」


「いいや、「おっさん」では無く「おっさん」だ!」


「いつまで続ける気や!?それはそうと「新世界」とちゃうってどう言う事や!?俺たち間違い無く大阪にある「新世界」に来とったんや!この子もそうや!」


「はい・・・新世界に食べて飲みに来ていました・・・急に空から大きな黒い物体が降って来て、ここにいる和瀬君に助けてもらったんですけど、私も何故か和瀬君と一緒にここに・・・」


「恐らくその落ちて来た物体の影響で異次元の扉が開かれて君たちはこちらの世界へ流されて来てしまったのだろう・・・」


「嘘やろ?・・・なぁ、おっさん!?冗談やろ?そんな冗談大阪人ですら受けへんぞ!?」


「だから「おっさん」では無い・・・「おっさん」だ!!何度言えば分かるのだ!?それに冗談では無い!先程こちらの空間にも歪みが生じたのだ!それを確認するべくここへ訪れた・・・」


「そんな・・・夢みたいな話・・・漫画か何かか?・・・はは・・・どうしよう?・・・ここが本当に異世界とかやったら「新世界」に来てた俺らは「異世界」へ来てもうたって事やろ?・・・こんな漫画や小説みたいな話あってたまるか!?」


「君たちからするとここは「異世界」と言う事になってしまうのだろうな・・・だが事実だから仕方が無い。」


「どうしよう・・・俺だけならともかく、この子まで一緒に来てしまったしな・・・せめてこの子だけでも元の世界に帰して欲しいんやけど?あんた確かこっちの世界を統一とか言ってたよな?何とかならへんの?」


「残念ながら、転移させたりその様な未知なる状況を管理する事は私とて不可能だ!諦める事だな!それかその漫画か小説みたいにしばらく転生して何か目的を達して元の世界へ戻れるやもしれん・・・」


「おい、おっさん?案外そう言う話に詳しそうやないか!?さては、そう言うの好きなオタクとちゃうんか?」


「いやはや、かく言う君もまたその1人ではあるまいか?」


「何でそれを知っとる!?・・・俺が家の中ラノベやコミックだらけって見たんかいっ!?」


「オーラで分かる!・・・同志よ、頑張って元の世界へ戻る鍵を探し出すのだ!」


「凄く親近感を持ちつつ接近して来ているけど、結局他人事やな!もうええわ!」


二人「どうも、ありがとう御座いました。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」




「って!!!!漫才やっとる場合かいっ!?・・・そんな事どうでもええねん!!とりあえず、どうしたらええんや!?」


「実はだな・・・こちらの世界では最近不可解な事故が多発していたのだ。それを解決して行く内に何か元の世界へ戻れる手段を見付けられるかもしれないぞ?」


「う・・・如何にもラノベとかにありがちな内容やないか!?」


「頑張れ少年!」


「どちらかと言うとおっさんなんやけど?俺?」


「おぉ!!君もまた「おっさん」だったのか!?」


「いや、多分あんたの言っている「おっさん」と俺の言っている「おっさん」は似て非なるものやろ?」


「とりあえず、私に用事があるならこれで呼び出してくれ!?何か役に立てる事もあるかもしれん・・・では、これにて!」


「待てやっ!「おっさん」!?・・・色々と聞きたい事があるんや!!」


「何だ!?・・・必要最低限の話は今したでは無いか!?私は帰る・・・眠いのだ!早く帰って暖かい家族とご飯と布団が待っている・・・」


「おい、責任逃れする気か?それに風呂が抜けとるぞ!?・・・それはどうでもええわ・・・要はこっちは俺たちの住んでた世界とは全く別次元の世界やと言う事やな!?それやったら俺たちの住んでいる家もこっちには無いって事になるよな?」


「勿論だ!恐らくこの界隈は君たちの住んでいた世界と似ているだろうがここから出るとどうか確認しておいた方が良いだろう・・・」


「丁度良かったわ!悪いけどおっさんの家に泊めてくれへんか?」


「断る!!!」


「何やと!?・・・この世界を統一しとる奴がまさか困っている人間放置するなんて事勿論せえへんよな?・・・えぇ?・・・」


「わ・・・分かった・・・分かったからそのチンピラみたいな振る舞いは止めてくれないか!?・・・泊めるから・・・泊めるから・・・」


「よし・・・恩に着るよ!流石世界を統一しとるおっさんなだけの事はあるな♪」


「あの・・・ごめんなさい・・・ご迷惑を掛けてしまって・・・」


「いいや・・・君たちが来てくれたおかげで何か変わる予感も実はしていたのだよ・・・」




「おっさん」との長いやり取りの末、ようやく章一たちは無事に宿となる場所は確保出来た・・・




「ここが私の自宅だ!」


「おいおっさん?如何にもラノベとかに出て来る様な豪邸住まいやないか!?冗談は顔だけにしとけよ?」


「君はどうも口が悪いな?」


「大阪人やからしゃあないやろ?こう言う喋り方やねんから!!」


「君たちの暮らしている所は治安が悪そうだな・・・」


「おっさんに言われとうないわっ!!」


「さぁ、上がりなさい?」


「邪魔するで!?」


「邪魔するなら帰れ!!」




パコンッ!!




「お前大阪人やろ?・・・何、新喜劇みたいなボケかましとんねんっ!!」


「ちょっとやってみたかっただけだ!・・・さぁ、何もおもてなしが出来ないが・・・くつろいでくれ!」


「凄く綺麗ですね・・・憧れちゃうな♪」


「そう言えば、俺、姉ちゃんに名前って教えたっけ?」


「えっ!?・・・あっ!?・・・あぁ、お手洗いに行っている時にお店の人に聞いて・・・」


「あぁ!大将が教えてくれたんか・・・ごめんな?俺、和瀬 章一って言うねん、姉ちゃん?名前は?」


「私は・・・・・・・・・何て言う名前でしょう?」


「えっと・・・分からへん・・・女の子の名前って無数に存在するし・・・第一名字も分からへんし・・・」


「んもう~!!これでも分からない?」




帽子を深く被っていた女性は被っていた帽子を取り髪の毛も下ろした・・・

その直後章一は硬直した!!




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「トウヘンボクってお店の人が言ってたけど、本当だったね?和瀬君♡」


「えっと・・・これはやっぱり夢ですよな?・・・おっさんさん?答えてくれませぬか?・・・あはは・・・これは夢だ・・・きっと悪い・・・悪い夢・・・悪夢でした・・・えっと・・・いつもミスばかりして上司が怒って怨念を放った夢・・・どうせならサキュバスとか出て来て欲しかったな・・・おっさん?そろそろ俺現実世界へ帰るわ!お世話になったな・・・あはは・・・それじゃぁ・・・このへんで・・・」


「待ちなさい?・・・こんな夜遅くに何処に行こうとしているのかしら?現実から逃げちゃダメよ?あなた、私に憧れているんでしょ?だったらこんな嬉しい展開無いじゃない?」


「ははは・・・そうでした・・・憧れの上司・・・さようならぁ・・・・」


「だから、怒って無いから落ち着いて?一応さっきも助けてくれたんでしょ?あなたの優しさとか全部知ってるから・・・ここは会社じゃないのだし、そんなに怖がらなくても・・・いいじゃない?・・・私だって傷付くんだよ?・・・だって・・・あなたの事・・・」


「へっ!?・・・どう言う事?・・・です?」


「まぁ、部屋は自由に使ってくれたまえ・・・家族がしばらく遠くへ出てしまっていて私も1人だったからね・・・適当にどうぞ?」


「いや・・・待ってくれおっさん!もっと色々な話がしたい・・・うん!したいからお願いします・・・もうちょっとここで話を・・・」


「いやはや、仲良き事は美しきかな・・・良い夢を!じゃぁね~♪・・・私も久しぶりにフィアンセとイチャイチャしたいなぁ・・・はっはっは♪」


「いや・・・おっさん・・・これがイチャイチャしている様に・・・ってどうして腕にしがみついて・・・ちょっと?櫻井さん?櫻井上司?」


「もう~・・・その名前で呼ぶのは止めてよ?・・・プライベートでは♪美衣って呼んで?」




櫻井 美衣(さくらい みい)・・・章一の会社の上司で、数年程前に関東にある章一が勤めている会社の支社より人事異動でやって来た。仕事が出来るキャリアウーマンの彼女は入社数年で中間管理職の地位まで昇り詰める事になる。

章一が勤務している本社で章一の上司として日々葛藤している毎日・・・

あまりにも章一が同じミスを繰り返す為渋々恐れられる程の上司ぶりを発揮するが!?・・・実は!?・・・




「うわぁぁぁ・・・美衣って名前なんだ!?・・・凄く可愛いな・・・顔に似合って・・・はっ!!しまった・・・俺・・・思わず!?・・・」




あまり女性に接近された事の無い章一は普段は厳しく叱り付けて来る上司が自身の腕をしっかりとキャッチしている姿と感触に蕩け切ってしまい、思わず本音が口から出てしまったのであった!?・・・




「嬉しいな♪・・・そんな風に思ってくれたんだ♡」


「いやぁ・・・ちょっとお互い酔っているみたいっすねぇ~!!俺ちょっと外で頭冷やして・・・」


「いや・・・怖いの・・・一緒に居て欲しい・・・」


「へっ!?・・・いや・・・大丈夫ですよ!何もありませんって!ちょっと外に出るだけなので・・・」




そう章一が言うと、掴んでいた腕が更に締め付けられた・・・

震えている?・・・そう感じた章一は、やはり同じ様に見えていた異世界に転移してしまい不安や恐怖心があったのだろうと悟った・・・




「分かりました・・・今夜はもう寝ましょう?櫻井・・・いいえ、美衣さんが落ち着く様な状態で構いませんから?」


「うん・・・じゃぁ・・・一緒の部屋で・・・ね?」


「う・・・それは流石に・・・まずくないですか?女性として?」


「いいの・・・私が良いって言ってるんだからぁ・・・それとも私となんかじゃ嫌?」


「そっ!?・・・そんな・・・滅相もありません!!」




いつも叱り散らしていた上司の意外な一面に章一は実は内心ドキドキしていた。

一緒の部屋で・・・って何もしない?出来ない?章一である訳だが・・・




「おい、それはどう言う意味や!?お前、ちょっとこっちへ出て来い!!!」




と私を脅しに掛けたが、優しい章一は一晩上司である美衣と共にするのだった・・・




























前編 終幕・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る