046「蜥蜴の国」/飛鳥 休暇さん③

https://kakuyomu.jp/works/1177354054918381370


 ボーイミーツリザードマン。武骨なトカゲと「僕」の二人で、必死に生き延びる物語。


 主人公優輝くんが突然飛ばされた異世界は、言葉が通じないどころか人型系の種族すらいません。群れを作る大きなトカゲと獣はいる。トカゲは二足歩行が可能、道具を使える知能があって、文明があります。

 ヌラが最初にいた所属団体がこの世界でどんな位置づけなのか、どういう生活をしているのか。途中で到着した街がどこなのか、世界の仕組みはどうなっているのか。

 終始よくわからないままです。


 最初から最後までお互いの言葉が通じないっていう設定もすごい。

 いやー、でもリアル異世界(?)はきっとこうなるでしょう。言葉よりとにかく生き延びる、そして帰り道を探す。それ以上の目的はないです。異世界に行ったら誰しもが救世主なわけがない!

 異種族の生き物に、なんとか言いたいことを伝えるために身振り手振りと、通じない日本語の他に、何故かとっさに英語が出てしまう。

 思わず出ちゃった「オープン! オープン!」の必死さが、ちょっと笑っちゃうくらいわかる! つらい! どうにか察してくれるくらい知能のあるトカゲで本当によかった!


 蜥蜴の国に到着してからの流れが切ない。こんなはずじゃなかったのに、そんなつもりはなかったのに。ヌラの心情を思うと慰めてあげたい。

 国側にしてみたら、突然訪れたの得体の知れない生物に対しては当然の対応ですよね。こういうリアルな容赦のなさが、飛鳥さん作品らしいなあと思いました。


 言葉は通じないけど、なんとなく意思は通じてしまう。意思が通じた故に芽生える、種族と世界を超えた連帯感と友情。ある意味つり橋効果の、この二人。そのきっかけアイテムが絆創膏っていうのが、また切なくて好きです。

 ラスト、優輝くんの揺らぐ心情がすごくリアルでハラハラしました。

 終わり方の余韻に含みがあって、できることなら続編が読みたいです。すっっっごく気になる……!

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