030「聖願心理はショートショートを書くようです。」/聖願心理さん③ ※若干ネタバレあり※

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893207102


 聖願心理さんワールド詰め合わせ。短い中でも聖願さんらしい世界観がよく出ています。好きだなあと思います。


 以下、私の特に好きなショートショートの感想を羅列します。



「世界が終わるらしいですね」


 世界……!

 この爆発的な余韻‼ 果てしなく絶望の淵に立っているのに、いつも通り。「いつも」ということは何度も経験済みだから、また世界が始まる希望も知っていて、また終わる絶望もわかっていて。

 何を当たり前なことを言ってるの、って感じで笑う「君」の気持ちがわかる気がします。

 だって、まるで「月が綺麗ですね」みたいに言うから。



「#失恋という言葉を使わないで失恋したことを表現してみる」


 この短い文字数で二重に切ない四角関係を表現する手腕を見ましたか。唸りましたね。



「三題噺「月」「少女」「希薄なメガネ」」


 まず「希薄なメガネ」があだ名という大胆な設定と、「少女の好奇心は正しい」という一文がいい。少女の持つ不器用で温かい優しさと、少年からの伝わっても伝わらなくてもいい、愛情表現。

 個人的には、知っててはぐらかす少女だったら萌えます。帰ってから気づいたり、授業中、国語の先生の余談で気づいたりしてもいい。



「三題噺「地獄」「幻」「伝説の大学」」


 私は聖願心理さんのコメディ、好きなんですよね。

 「思いついた我、天才☆」この三つの単語からこの発想、きちんと落ちるオチ。さすがでした。

 配下のみなさん、振り回されて大変そうだなあ。(でもちょっと楽しそう)



「三題噺「宇宙」「雲」「こたつ」」


 こたつは宇宙のすべてを平和にする。この誘惑には抗えない。仕方がない。寝るしかない。寝よう。

 風邪引かないでね。



「三題噺「神様」「迷信」「楽園」+「魔女」②」


 「まじょさま、まじょさま」と無邪気に魔女に懐く、りとるますたーが大変にかわいい。

 世界にはお互いしかいない二人の関係がエグくて良いです。魔女の切ない独占欲に胸が苦しい。



「愛したこともないくせに」


 魔性の女です。魔女より魔女っぽい。

 今までさんざん他の女の子を無自覚に振り回してきたくせに、たった一人の女の人に振り回されるようになるとはね。

 大人になったね。ガキな自分にジタバタするといいね。いいねいいね。



「三題噺「密葬」「蛍光灯」「本心」」


 「君」がしゃべるたびに、じじじ、と揺れる蛍光灯。LEDライトじゃこの雰囲気は出せない。

 照明は蛍光灯なのに時計はデジタル。「君」越しに透けて見える時間の経過。

 切ない心霊現象。



「三題噺「鋏」「制服」「テディベア」*」


 このワードなら青春サイコホラーがいいな、と思ったらちゃんと青春サイコホラーを書いてくれて、個人的には嬉しかったです。

 じょきん、という鋏の音がおっそろしくて良いです。



 ひらめき天才タイプはこのクオリティを量産する。ずるい。

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