第111話 恋人や結婚相手の理想が高すぎると、なかなか相手が見つからない説
よく恋人や結婚相手の理想が高すぎると、なかなか相手が見つからないと言われている。また、本人の理想が高すぎることで、ちょっとしたことで恋人に対して幻滅してしまうこともあり得るだろう。
それは異性に対してでなくても言えることだと思う。日本人夫の私はベトナム人妻のトゥイと出会うまで、それほどベトナムのことを知らなかった。
何も知らない状態だったので、ベトナムに対して自分に都合のいい幻想を抱くこともなかった。日本のテレビ番組でベトナム特集を視聴したことがあったので、今後、どんどん経済発展していく国で日本よりも物価が安いということだけは知っていた。つまりベトナムの知識は非常にとぼしかったのである。
どれぐらいの速度でベトナムの物価が上がっていくのかは分からないけれど、物価が上がるイコール、例えば、ベトナムの現地採用の給料も比例して上がるとは限らない。
現地採用の給料は日本では少ない給料の部類に入ると思われるが、ベトナムで働くベトナム人の一般的な給料と比べると何倍も給料があるようである。つまり、現地採用の給料の額は3年、5年、10年後、平行線のままの可能性もあるのだ。一方、一般的なベトナム人の給料は上がっていくと思われる。
上記を踏まえた上で、ベトナムでの生活、金銭を得る方法を考えなければいけない。物価上昇する東南アジアで暮らすのならば、不足の事態に備え、副収入のひとつやふたつ持つのが望ましいというのが私の考えである。結局のところ、さいごに守ってくれるのは自分自身なのだから……。
とまぁ、私はとにかくいろいろと考えてしまうところがある。ベトナムのことを知るきっかけになったのは、たまたま妻がベトナム人だっただけ。また、ベトナム事情に関してはトゥイから教えてもらえるので、少しずつ知り始めている状態である。
やはり何に対してもそうだけれど、理想が高すぎると、自分の思い描く理想とかけ離れた場合、ショックの度合いも大きいと感じている。例えるならば、日本は素晴らしい国と聞いて、良い幻想を抱いて住んでみた。
けれども、しだいに日本の嫌な部分を見てしまい、最終的には日本のことが嫌いになって祖国に帰る外国人だっているだろう。物事はいろんな角度から見ることができる。
私が今、こんなことを思っている。こんな考えがあるとトゥイに話すことがあるのだけれど、トゥイは「あなたは考えすぎよ」とケタケタと笑うのであった。
たしかに考えすぎなのかもしれない。でもね、何も考えないよりはましだよと私は思うのである。
私:じゃあ、トゥイは何か考えていることあるのか?
トゥイ:あるよ。
私:何? 何?
トゥイ:今日、グリーンスムージー飲みたい!
私:え?
トゥイはケタケタと笑いながら、この日は本当にグリーンスムージーを飲んだのであった。
私はそんなトゥイの姿を見て、何も考えずに暮らすのも悪くないのかもしれない。その方が幸せに暮らせる場合だってあるだろう。ふと、そんなことを思ったのだった。
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