前のエピソード――第102話　ベトナム人彼女がベトナム人妻になった日

　日本人男性の私はベトナム人女性のトゥイとベトナムで国際結婚をした。異国の地で新婚生活スタートである。

　ベトナム人妻のトゥイは結婚する前からなのだけれど、私のために料理を作ってくれる女性であった。ありがたいことに「明日、何食べるか？」と聞いてくれるので、朝食にご飯が食べたい時は「白米食べたいね」と言うと、朝、すぐ炊けるように炊飯器の準備を夜のうちにしてくれるのである。

　また、ホーチミンのアパートとベンチェのトゥイの実家を行ったりきたりの生活なのだが、あいにくホーチミンのアパートには洗濯機がない。けれどもトゥイは洗濯物がたまると手洗いで洗ってくれるのである。ちなみにベンチェの実家には洗濯機がある。

　料理に関してはトゥイの母親に仕込まれたので、いろいろなベトナム料理を作れるようである。ホーチミンにしてもベンチェにしても家の床は石でできているので、掃除はもっぱらほうきではくか、モップがけをしてきれいにしてくれる。

　ありがたいことに炊事、洗濯は私は何もやらなくても今のところ文句は言われない状態だ。

　よくベトナムの北部と南部では女性の性格が違うと言われている。日本で例えるならば、東京の女性と大阪の女性の違いがあるのかもしれない。

　トゥイからハノイの女性とホーチミンの女性の違いがコメディタッチで描かれている動画を見せてもらったことがあるのだけれど、印象的だったのは恋人に別れを告げられてめそめそ泣いてしまう南部のホーチミンの女性に対して、北部のハノイの女性は恋人に別れを告げられた瞬間、自分をふった恋人に新しい彼氏を即見せつける勝ち気な姿が描かれていた。

　ベトナム人が制作した動画で北部と南部の女性の違いが描かれていることから、おそらく北部と南部では性格が根本的に違うのかもしれないと感じた。

　私はベトナム南部で生まれ育ったトゥイしかベトナム人女性を知らないので、ベトナム人女性の性格に関して何も言えない状態ではあるのだけれど。

　トゥイは朝食にご飯を炊いて、おかずを買いに行ったのだけれど、家に戻るとおかずと宝くじを1枚買ってきたことがあった。私は「何で宝くじ買ったの？」と質問すると「高齢のおばぁさんが宝くじを売りにきて、可愛そうだから1枚買った」とトゥイは言ったのである。

　ベトナムでは生活に困窮し、宝くじを売って生活している貧困層の人がいる。私はトゥイの優しい一面を垣間見たような気がした。

　日本人にしてもベトナム人にしても、いろいろなタイプの人間がいる。日本の関東出身だからこんな性格。関西だからこんな性格だろうと安易に決めつけるのも良くないのかもしれない。

　今回、トゥイがベトナムの北部出身、南部出身関係なく、こんなベトナム人女性だよということを記録として残しておきたい。

　何故なら、数年後、トゥイの性格が豹変した時、「あの時のあなたはこうだったよ」と証拠として言うために、忘れないように記録として残したのである。