2.例えばこんな高校生活

2.

「ああ……高校生活終わった……」


 一年D組の教室で俺は生気のないうめき声を漏らした。


「酷いなぁ夜崎やざき君は。重要なのは容姿じゃなくて中身だろう?」


 そう背後から声をかけてくるのは出会って二時間で意気投合した友達。


 しなやかな体躯たいくをした男子生徒で端正な顔立ちをしている。瞳には深いサファイアが覗き、クモの糸みたくきめ細かい銀髪の少年だった。


 そんな非現実的な容姿をしていて名前が鈴木壱琉すずきいちるという、日本ではありふれた苗字をしているのだ。信じられん!


 ともあれ、誰が見ても文句なしの美少年。


「お前が言うと酷く説得力に欠けるな……」


 俺はまじまじと不満をあらわにした。


 入学式前のホームルーム。


 この教室では自己紹介がおこなわれていた。


 自己紹介。言い換えればリセマラ不可能なガチャイベント。今後のモチベーションを大きく左右する一大事である。


 なぜ俺がこの状況に絶望していたかというと──


「軒並みブスじゃねぇか……」


 周囲の男子生徒は口を揃えてそう言う。


 男子軍勢はめでたく大爆死した。我がクラス一年D組の女子生徒には可愛い子が誰一人として存在しなかったのである。


 この学校は三年間クラス替えがない。こういった事実がまた絶望に拍車をかけていた。


 HR《ホームルーム》なんだし、流石にHR《ホロレア》一枚確定だよね!なんてジョークをかましたい……。


 現実とは残酷なもので──そう簡単にラブコメ展開など起きないのである。

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