4.
翌日。休日出勤。休みの日に学校に行くほど、憂鬱な事はない。
早春の薄ら寒い風がびゅうびゅう音をたてながら吹く。春の嵐というやつだ。暴風すぎてマジやばい。
芽吹いたばかりの若葉は幾ばくか風に吹き飛ばされ、空の彼方へと消える。
ああ……俺も葉っぱのように自由に大空を飛びまわりたい──なんて思うのだが枝から離れた先に待つのは枯れゆく運命。学校というせめてもの繋がりは持っておきたい。
鉛が足に付いているかのような重い足取りで通学路を歩くことしばし。
俯きながら足元を見て歩いていると、やたら磨かれた光沢を放つ革靴と細い脚が視界に入ってきた。
「おはよう辰巳くん。ちゃんと来てくれたんだね」
濁りのない澄んだ声。壱琉だ。
俺は顔を上げると、スクールバッグ担いで気怠げに答えた。
「まあ……休日といっても暇だからな。壱琉は初めての友達なんだ。無視するわけにはいかないよ」
壱琉は笑顔で頷いたかと思うと、昨日に引き続き、また"おかしなこと"を言い出した。
「今日は辰巳君の人生において、一番充実した一日になるよ!なんせ、これからテストを受けてもらうからね!」
え……テスト……?
俺は困惑して慌てふためいた。
「おいおい、ちょっと待ってくれ。一体、何のテストをやるってんだ。予告も無しに、勉強が出来ない俺がしたって……うおッ」
「いいからいいから♪」
壱琉は上機嫌で俺の背中を優しく押し出すと、校舎に強制連行した。
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