安楽死サービス

asai

安楽死サービス

ビルから出てきた男は、のぼりが立つ隣の店に迷いなく入っていった。


「いらっしゃいませ。安楽死サービスです。今日はどうなさいましたか?」

「はい、早く死にたいんですが。」

「ありがとうございます。こちらにお掛けください。」

窓口に座った男に若い女性スタッフがついた。

「今回はご来店いただきありがとうございます。ご利用初めてですよね。私たち安楽死プランナーが最後までご案内いたしますのでご安心ください。」

心からの笑顔だった。


「早速ですが、どのような死に方をお望みでしょうか。」

「できるだけ家族に迷惑をかけるように死にたいです。」

「なるほどですね!ご家族に相当な恨みがあるんですね!そのようなご要望でしたら、、ここら辺が流行りですよ。」

女性スタッフはタブレットを男に見せた。

居酒屋のメニューのような賑やかなトンマナで様々な死に方と処理方法が載っていた。


「死地直送!溺死後に腐敗死体を家庭に郵送」

「痛みなし!多額の賠償を伴う轢殺(通勤ラッシュ)!」

「一石二鳥!殺人後自殺」


頷きながら見ていた男はその中の一つが気になった。

「殺人後自殺ってどういうことですか?」

「はい!こちら、無惨に殺されたいという利用者もいらっしゃいますので、そちらの方とマッチングした上で殺していただきます。お客様の自殺方法はこちらでまたご提案させていただきます!」

「あ、じゃあこれで。」

「ありがとうございます!今なんですが、政府主催の人口削減キャンペーンっていうのをやっててですね、こちらオプションでつけていただけますと、今回のお会計から10%OFFになります。」

「じゃあそれもお願いします。」

「ありがとうございます。こちら1週間以内にご案内させていただきますね。お客様には来月末には安楽死の執行をさせていただきます。もし予定が変更になりましたら二週間前までにおしらせください。それ以降はキャンセル効きませんのでご注意くださいませ。」

「わかりました」


支払いを終えた男は、先ほどいた家庭裁判所の前を通り過ぎ、ハツラツとした顔で街に消えていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

安楽死サービス asai @asai3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る