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もうずっとこのままでもいいなぁ。
なんて一人微睡んでいると、瞬くんがぼそりと呟く。
「俺さ、カメラマンになりたくて親の反対を押し切ってそっちの道に進んだんだ。」
体を離して瞬くんを見る。
私は黙って瞬くんの話に耳を傾けた。
「カメラの勉強をしたからといって写真だけで稼げるのなんて一握りだ。だから未だに親からはバカにされてる。会社も小さくて若い会社だから、カメラマンとか編集者とか担当が分かれてない。写真も編集も営業も、全部こなさないといけない。だから、写真に注文をつけられることはあっても褒めてくれる人は誰もいない。」
瞬くんがそういう話をするのは初めてだ。語るというよりは一人言のように淡々と話す。私は相槌をうつわけでもなく、じっと瞬くんの話を聞いていた。
膝の上に置いていた手に、瞬くんの手が重ねられる。
そんなことでいちいちドキッと心臓が跳ねる私は、相当瞬くんを意識しているのだと感じた。
「結衣が初めてだったんだ。写真を褒めてくれたの。だから、その、ありがとう。」
瞬くんははにかんだ笑顔で言った。
お礼を言われることではない。
だって私は瞬くんが撮った写真を見て素直にすごいと思っただけなのだから。
私は瞬くんに向かってふるふると首を横に振る。
「瞬くんのこと、きっとご両親も誇らしく思ってると思うな。子供が頑張ってることをバカにする親はいないよ。」
少なくとも、私の勤務先の保育園に子供を通わせているママたちは、いつも一生懸命に自分の子供のことを考えている。些細なことでも園に相談したり、時にはおおらかに見守ったり。それはきっと、子供が成長したって変わらずに持ち続ける気持ちだと思うのだ。
「そんなことないって言いたいけど、結衣が言うならそうかもしれないって思っちゃうよ。」
それ以上話はしてくれなかったけど、もしかしてご両親と上手くいっていないのではと感じるほどに、瞬くんは切な気に微笑んだ。
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