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お腹も満たされた頃、私はそわそわしながらも切り出した。


「あのね、クリスマスだからプレゼントをあげたくて、でも何をあげたらいいかわからなくて。瞬くん何でも持ってそうだし。すごく迷ったんだけど。」


そう言って、私はカバンから可愛くラッピングされた箱を取り出して瞬くんの前に差し出す。


「クッキーを焼いたの。食べてくれる?」


未菜ちゃんに付き合ってもらって百貨店まで出向いたのに、結局これというものが見つからずにその日は帰宅した。(未菜ちゃんにカフェ代は奢った)

瞬くんに“好き”だという想いを伝えるのに、なぜか市販品ではダメだと思った。もっとなんかこう、想いを込めたものを贈りたい。

そうして行き着いたのは、手作りのお菓子だった。

決して得意なわけではないけれど、想いを込めて焼き上げたクッキーを綺麗に箱に詰めてラッピング。

完全に自己満足ではあるけど、これが私のやり方だと思った。


差し出した指の先までドキドキする。

瞬くんは無言で箱を受け取った。

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