10
会場の扉をそっと開けて中の様子を覗き見ると、子供達の出番はもうすぐのようだった。
「瞬くん、お願いがあるんだけど。」
「うん。何をすればいい?」
「子供達の姿をスマホで撮ってもらえないかな?動画で。」
私は自分のスマホを瞬くんに差し出す。
せっかくここまで来てくれた子供達、そして協力してくれたママさんたちに、大舞台に立つ子供達の姿を見せてあげたい。
絶対絶対可愛いもの。
それに朱里ちゃんだって映像に残ってたらきっと嬉しいはず。
「了解。」
瞬くんはにこっと笑って、快く引き受けてくれた。
ポケットからスマホを取り出し瞬くんに渡すと、少しだけ手と手が触れた。
図らずもドキッとしてしまう自分に動揺しそうになる。
そんなことくらいでドキドキしてしまうなんて、どうかしてる。
きっと今からサプライズの演出をすることで緊張しているんだ。きっとそう。そうに違いない。
ドキドキする胸を抑えながらこっそり深呼吸していると、瞬くんが慌てた声を出した。
「結衣ちゃん、コサージュが。」
「え?」
ボレロに付けているコサージュを見ると、可哀想なくらい見事に潰れてしまっていた。
いつの間にこんなことになったのか、先程までの出来事を振り返れば子供達に抱きつかれたことくらいしか原因は思いつかない。
「潰れちゃったね、大丈夫?」
「うん、それより、針が子供達に刺さらなくてよかったー。危ない危ない、気を付けなくちゃ。」
私は急いでコサージュを外し、しっかり針が収まっているのを確認してからポケットに入れた。
子供達に刺さっていたらサプライズどころの騒ぎではない。
「優しいね。」
「ん?何?」
「いや、何でもない。」
瞬くんがぼそりと呟いた気がして聞き返したけど、気のせいだったかな?
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