第二十八話 アークにまつわる伝承

◇リジェ

『アークにまつわる伝承』……


──古代アルカディア文明が

栄えるよりもずっと昔……


天より遣わされた女神様は、

人々の争いの絶えない

この地上を憂いて


八人の聡明な若者に

大いなる知慧を授けられました


その膨大な知慧の全ては

8つの……とても美しく、

決して傷つくことのない石──


ミスマリル鉱石に

刻まれていました


その鉱石こそ『アーク』です


アークを手にした若者たちは

その知慧を使い


ついに、人々の争いを

終わらせることができたのです

ところが──


ある若者が女神様の気を引こうと

『禁忌』を犯してしまいます


決して手を出してはいけないと

言われていた

『禁断の知慧』を手に入れました


若者はその知慧を使い

海の神が大切にしていた

大きな方舟を盗み出したのです


しかし、海の神はそのことに怒り

なんと女神様を海の底深くに

閉じ込めてしまったそうです──


これが、

我が家に伝わる伝承の全てです


◇カイ

うーん……

どうだ、ノア?


◇ノア

ノーラグベルのカシュタ翁から

聞いた『終末伝承』の言葉――


『女神の再臨』『方舟』『賢者』

今のリジェの話と幾つか符合する

しかし――


アリアが口ずさんだ――


『アークを鳴らせ、呼び覚ませ

目覚めの時だ、アークを鳴らせ』


『八つの契約、八つの欠片

八度の点鐘、八人で鳴らせ』


『響け、響け、アークよ、響け

天より高き紅天へ

地よりも深き深淵へ』――


――というわらべ歌のような言葉


◇クロナ

『鐘』って――


◇リジェ

『アーク』のことです


◇ノア

『八賢者』と『八つの契約』

『八つの欠片』……

つまり――


『アーク』は

八つある……ということか


◇リジェ

そのとおりです

8人の賢者の末裔がそれぞれに

『契約のアーク』を持っています


◇カイ

『アーク』を鳴らすって

どういうことだ?


◇ノア

『アーク』とは

どう使うものなんだ?


◇リジェ

それは

私にはわからないのです


◇ノア

どういうことだ?

キミは『八賢者』の

末裔なんだろ?


◇リジェ

ええ、そのとおりです。

しかし……アークが作られたのは

一万年以上前の話……


アークに関わる伝承はほとんど

途絶えてしまっていて

詳しいことはわからないのです…


◇クロナ

そっか……

でも――


探していた『アーク』が

こんな近くにあったなんて、

びっくりだね


◇アリア

このペンダントが……

アークだったんですね……


◇カイ

じゃあ、もしかしてアリアも

賢者の末裔……?


◇リジェ

それはわかりません……


しかし、そのペンダントは

『アーク』と同じように見えます


カイさんたちは、

どうして『アーク』を探しているのですか……?


◇カイ

実は──



********************



◇リジェ

──そうですか

そんなことが……


◇カイ

ああ……


父さんを見つけ

空に穴を開けた理由を聞く


◇リジェ

よくぞ、お話くださいました

どうぞ、この『博愛のアーク』を

お持ちください


◇カイ

いいのか!?


◇リジェ

カイさんたちは

信頼に足る人たちです


この島を

救ってくださったこと……


高位の精霊獣が

あなた達を選んだこと……


なによりわたくし自身が

あなたたちを信じたいのです


◇カイ

ありがとうリジェ!

この『アーク』……

いつか必ず返しに来る!


◇リジェ

はい!


◇ノア

リジェ、もう一つ聞かせてくれ

他の賢者の末裔がどこにいるのか

知らないか?


◇リジェ

もうしわけありません……

それも父の他界で……


あ!

それでは――


『ホワイトコースト』に

行かれてみては

いかがでしょうか?


◇カイ

ホワイトコースト?


◇リジェ

ホワイトコーストには

太古より生きる

『竜』が眠っていると言います


通称『竜の眠る星の島・

ホワイトコースト』


◇クロナ

『竜』!?

すごい! 本当にいるの!?


◇リジェ

神話のことですから、

本当かどうかはわかりません……


しかし、この地も神話時代と

強い結びつきのある地です


何かの手がかりが

あるかもしれません


◇ノア

確かにな……

兄さん、次の行き先は決まったな


◇カイ

ああ


じゃあ俺たちが次に向かうのは

『ホワイトコースト』だ!



To Be Continued……

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