全てが終わった後に

ベルグリーズの未来を考えて

 タケル達との別れを済ませた、翌日。

 シュランメルトは一人、部屋で考え事をしていた。


「タケル、リリア、リンカ……三人とも、おれの大切な友人だ。その三人を守り抜いた事は、我が事ながら喜びたいものである……が、そればっかりではいられん」


 シュランメルトの脳裏に浮かんだ人物。それは、ヘルムフリートであった。


「奴は言っていた。『今後、ベルグリーズの国防をどうするつもりなのか』と。手段こそ褒められたものではないにせよ、奴なりに考えていた事ではあった。だからこそ、おれも、そしてベルグリーズ全体も強くある必要がある。ここ8年、ハドムス帝国の侵略行為はなりを潜めているが……そう簡単に諦めるとは思えん」


 ベッドに寝そべり、天井をボーッと眺めながら呟くシュランメルト。

 と、黒猫が部屋に入ってきた。瞬く間に、姿を美女へと転じる。


「何考えてるのー、シュランメルトー? タケル達のことー?」

「パトリツィアか。いや、ベルグリーズの国防だ」

「そっか。ならさ、シュランメルト。“天界”に行こうよ」

「“天界”か……。父さんや祖先に、鍛えてもらうんだな」

「うん」


 シュランメルトはしばし腕を組み、唸っていた。


「確かに、大事だ。だが、国自体の強化も同様に大事だ。リラに任せるか……」

「それが良いと思うよ」

「そうだな。おれが必要以上に出しゃばる問題ではない。時に強大な力を駆り、時に采配を振る。おれの役目は、いくさだ。備えは、信頼のおける者達に任せるとしよう」

「リラとかグロスレーベがいるからね。それに、キミには強い加護がある。大丈夫さ」


 パトリツィアが、シュランメルトに寄り添う。


「それじゃ、行こっか」

「ああ」




 二人は自らを鍛えるために、天界へと向かった。

 部屋には、静寂だけが残っていた……。






魔導騎士ベルムバンツェ本編に続く)

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