第十章三節 前夜
それから、さらに五日後。
ベルグリーズ王国軍は一連の事件に関するグライス家の手の者への検挙を行い、次々と逮捕にこぎ着けたのである。
首謀者であるヘルムフリートが逮捕・収監された時点で統率は崩れ去っており、大した抵抗は無かった。
また、ヘルムフリートによって強制的にアンデゼルデに転移された者達のうち、健康かつ帰還意思のある者に関しては、順次
以上二点の報告を受けたシュランメルトは、玉座の間にて決断をする。
「なるほどな。ヘルムフリートによって起こされた事件も、解決しつつあるか。となると、彼らと交わした約束を、叶えるとしよう」
「約束……ですか?」
「その通りだ。グロスレーベ、お前は知らん事だろうが……彼ら、いやタケル達とは、『事が済んだらベルグレイアを案内する』という約束をしていてな。以前は邪魔が入ったが、今日……いや、明日は、そうはならんだろう」
「かしこまりました。警戒を引き上げますか」
「無用……とは言えんな。だが、あまりやり過ぎるな。いつも通りのベルグレイアを案内したいのだ、あまり物々しい雰囲気にされても困る」
「
「それで頼むぞ」
シュランメルトは一礼するグロスレーベを見てから、玉座の間を後にしたのである。
*
「タケル、リリア、リンカ。いるな?」
シュランメルトは申し訳程度にノックをすると、扉を開ける。
「シュランメルトさん。どうしましたか?」
「喜べ。ベルグレイアの観光だが、明日にでも出来そうだ」
「じゃ、じゃあ、ついに……!?」
「ああ。本当は今日したいところだが、流石に夜にするのは、いくら全てが終わった後だからといっても不用心過ぎるからな。楽しみにして眠れ」
「はい! 楽しみにしてます!」
「今度こそ、じっくりベルグレイアを眺められるんですね!」
「どこに行くか、今から考えるか!」
「その意気だ……が、ちゃんと睡眠は取っておけ。寝不足では、せっかくの観光も楽しさが半減するぞ。ともあれ、今日はそれだけ伝えに来た。では、また明日会おう」
タケル達の返事を聞き終えたシュランメルトは、部屋を退出した。
「さて、フィーレとグスタフにも話を付けておくか……」
「シュランメルトー」
正面から、パトリツィアがやって来た。
「パトリツィアか。フィーレとグスタフを見なかったか?」
「二人ともリラと混浴してるよー」
「そうか。ならば、頃合いを見て話しかけねばな」
「そうだねー、シュランメルトー。けどさー」
「何だ」
「終わったらでいいからさー、ボクと混浴シてよー」
「……そうだな。しばらくしていなかったからな」
「やったー」
二人はフィーレとグスタフが上がるまで、しばし待った。
*
「そろそろだな。フィーレ、グスタフ。少しだけいいか?」
「何ですの?」
「明日、タケル達にベルグレイアを案内する。準備を頼む」
「安心なさいませ。いつその日を迎えても構わないように、抜かりなく準備しておりますわ!」
「うんうん! フィーレ姫と一緒に、どこに連れて行くかも決めたんだよ!」
「それは心強いな。では、明日頼むぞ」
「任せて下さいませ!」
「最高の一日にしてみせるよ!」
「なら、頼むぞ」
フィーレとグスタフは自信満々に宣言すると、近くで待っていたリラと一緒に部屋へ向かった。
「さて、これで準備は万端だな」
「万端だねー。それじゃー、シュランメルトー」
「承知している。混浴だろう?」
「話がはやーい。そういうことー」
上機嫌なパトリツィアに連れられるようにして、シュランメルトは混浴場へと向かったのであった……。
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