第九章二十五節 決着

「しょ、正気ですか……! この高さから勢いを付けて落下すれば、いかに御子みこ様といえど……!」

「安心しろ、Asrionアズリオンの頑強さは貴様らの常識を遥かに上回る次元だ。もろともに死ぬつもりなど無いし、出来ようはずも無い」

「くっ、は、離れろ……!」


 Dragnaughtドラグノートが、慌ててAsrionアズリオンの拘束を解く。

 しかし、それでも落下は止まらなかった。


「な、何故まだ落ち続けている!?」

「よく強化したものだな、ヘルムフリート。関節でも簡単に斬り落とせない。おかげで今も、大剣と大盾を引っ掛け続けられているぞ。貴様の拘束から逃れた、今でもな」

「……!!」


 あらゆる物質を一瞬で両断するAsrionアズリオンの斬撃を、わずかに食い込ませる程度で被害をとどめている事が、かえってDragnaughtドラグノートを勢いよく地面へ飛来させていた。

 仮に今武器を引き剥がしたとしても、フリューゲから魔力を噴射して立て直すよりも先に墜落する高度と速度だ。機体自体が頑丈過ぎた事が仇となり、ヘルムフリート、そしてフローラは、落下を止めるすべを持たなかった。万事休す、である。


「お、おのれ……。あと少しだったものを……!」

「あと少し? 王国軍にも押し負けているようだな、貴様の研究成果は」

「ぐっ……」


 ヘルムフリートの研究成果である人形芝居プッペ・テアーター構想は、失敗に終わっていた。

 神殿騎士団の獅子奮迅の活躍、そしてそれを間近で見て勢いづいた王国軍の働きにより、ほとんど損害らしい損害を与えられず、殲滅されようとしていたのである。


「貴様の行いもこれまでだ。このシュランメルト・バッハシュタイン……いや、ゲルハルト・ゴットゼーゲンが、裁く!」

「む……無念!!」




 そして次の瞬間、轟音がガルストの大地に響いた……。

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