第九章二十二節 交戦

「何をなさるのですかな? リラ殿がどうなっても構わないと?」


 ヘルムフリートが機体を起こしながら、シュランメルトに問いかける。

 だが、シュランメルトはそれを聞いていなかった。


『ノートレイアから連絡が入りました。「リラ・ヴィスト・シュヴァルベを救出した」と』


 何故なら、Asrielアスリールからの声を聞いていたからだ。


「承知した、Asrielアスリール。『ありがとう』と伝えてくれ」

『かしこまりました』

「さて、残した事はこれであと一つだな」


 シュランメルトは起き上がったDragnaughtドラグノートに大剣を向けながら、戦意を告げる。


「貴様と正面きって敵対する準備と覚悟が出来たぞ、ヘルムフリート。これよりここにいる全部隊を以て、貴様を打ち倒し、捕縛する!」


 だが、ヘルムフリートは余裕の笑みを崩さなかった。


「フッ、先ほどの話を聞いていなかったのですか? 有人機と無人機の構想……名付けて人形芝居プッペ・テアーター構想は、このような事態を想定して編み出したのですよ!」


 その言葉と同時に、多数の魔導騎士ベルムバンツェが、どこからか一斉に出現する。単純な数だけで言えば、シュランメルト達の同数――約200台ほど――だった。


「何という数だ……」

「我らと同数、いやそれ以上はいる。勝てるのか……?」

「ここまでの数の機体がいたなんて……」

「完全に予想以上だね、タケル……」


 気圧される王国軍やタケル達を前に、ヘルムフリートは余裕の表情を浮かべる。


「私が何の備えもしていないとお思いでしたか? 残念。全ては最初で最後となるこの機会に、”子供達”を確保するためです!」


 だが、シュランメルトだけは違った。


「それは貴様だけに言える事ではないぞ。おれ達も、出来る限りの備えはしている」

「ほう、何を――」


 ヘルムフリートが問いかける前に、上空から四条の光線ビームが降り注ぐ。


「なっ!?」

「出番だ、神殿騎士団。ベルグリーズ王国軍に仇なす魔導騎士ベルムバンツェを、全て排除せよ」


 現れたのはそれぞれ、真紅、天色、鮮緑、山吹の装甲を持つ4台のAsrifelアズリフェルだ。

 彼ら神殿騎士団は四方の先頭に立ち、圧倒的な実力で次々と魔導騎士ベルムバンツェを駆逐していく。

 その勢いに押された王国軍も、攻勢に出始めた。


「どうする? 貴様の備えも、無意味なものとなりつつあるが」

「まだだ。まだ私は諦めん!」


 ヘルムフリートは圧倒的な加速で、今度は距離を取った。


「やむを得ん、生きてさえいれば構わん!」


 そして音叉状の武器を構え――紫電と共に、超高速で弾丸を射出する。

 だが。


「タケルは、私が守る!」




 Großerグローサー・ Tapfererタプファラー・ RitterリッターHellerヘラー・ Blinkenブリンケン・ Sternシュテルンが体当たりで弾き飛ばし、代わりに弾丸を受けたのであった……。

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