第八章十六節 異形

 向かってくる4台のHarfareysハルファレイスだが、うち3台はどこかぎこちない動きであった。

 どういう事か1台が動きを止め、それを庇うように3台が展開した。


 メイスを構えるHarfareysハルファレイスを見て、ノートレイアが訝しむ。


「このトロさ……無人機だってのかい? そうだとしたら、珍しいもんだねぇ!」


 魔導騎士ベルムバンツェは無人運用も可能な兵器だ。

 だが、ある程度の手間を要するため、通常は多用されない。多用するとしたら、人命を優先する組織などだ。


 ともあれ、ノートレイアは叫びながら、Asrifelアズリフェル・_Violettiaヴィオレティアに剣を振るわせる。

 並の魔導騎士ベルムバンツェよりも遥かに高い運動性からなる機動は読めず、遥かに高い膂力からなる剣の一撃はHarfareysハルファレイスの分厚い装甲を丸ごと両断した。


「遅いよ!」


 さらにノートレイアは、構えた盾も剣のごとく扱う。

 剣と同等の――正確にはAsrionアズリオンが纏う――漆黒の結晶でなる盾は見た目以上の鋭さを有しており、やはり斬撃武器として高い資質を備えていた。

 2台目のHarfareysハルファレイスの装甲もなますの如く両断し、動きを止めたのである。


「おっと」


 その直後、メイスが振るわれる。が、一瞬早くAsrifelアズリフェル・_Violettiaヴィオレティアが飛び退り、空振りに終わった。

 メイスという武器は、重量からなる打撃でダメージを与えるものだ。当たれば致命傷になり得るが、外せば概して隙は大きい。カバーする立ち回りはあるものの、それを無人機が有しているかどうかは別問題である。


「そらっ!」


 盾による斬撃を受け、3台目の無人機のHarfareysハルファレイスが地に倒れ伏す。


「さて、最後に残ったのはお前だけだよ。見ての通り、連れはこのザマ。逃げるなら今なんだけどねぇ?」

「……」


 応答はない。

 敵意と受け取ったノートレイアは、愛機を疾走させた。


「はぁっ!」


 圧倒的な膂力で振るわれる剣の前に、しかし最後のHarfareysハルファレイスは飛び退って盾をかざした。

 だが、その程度でAsrifelアズリフェル・_Violettiaヴィオレティアの斬撃が止まる事などあり得ない。盾ごと、胸部装甲を切り裂いた。


「チッ、浅いか……!」


 ノートレイアの感じた手ごたえは、予想外であった。

 先ほどまでの無人機達と違い、人が乗っている機敏な動きだ。


(けど、それにしても反応が早すぎる。さっきのバケモノと何か関係があるのかい……?)


 ノートレイアが思考を巡らせると同時に、Harfareysハルファレイスの胸部装甲がずり落ちる。

 そうして、操縦席の内部があらわになった。


「おんや、ご尊顔が……何っ!? 何なんだよ、ありゃ……」


 ノートレイアの瞳が、驚愕に見開かれる。




 操縦席内部には、無数の管を繋がれた人間がいた。

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