第六章十三節 反撃

「相変わらず強そうだねー、シュランメルト」


 漆黒の鎧に身を包んだシュランメルトを見たパトリツィアは、相変わらずのんきな声で呟いた。


Asrielアスリールが作り上げた装備だからな。対人間なら十分すぎる性能だ。それよりもパトリツィア、あまり無茶はしないでくれよ」

「だいじょーぶ。ボクはリリアとリンカの護衛に徹するから、前には出ないよ。安心してやっちゃって!」

「承知した」


 シュランメルトは前を向くと、剣の柄と小盾を取り出す。それらは瞬く間に結晶を纏い、大剣と大盾と化した。

 そして襲撃者に向け、高らかに告げた。


「死にたい者だけかかってこい。今のおれは手加減出来んぞ」


 油断なく武器防具を構え、前に踏み出すシュランメルト。

 と、兜目掛けて何かが飛来した。


「……そこか」


 しかしシュランメルトは一切動じず、冷静に盾を振るって叩き落す。


「ガレスベル、サリール。近くの敵は任せたぞ」

御子みこ様、どちらへ?」

「遠くの敵を狙う。間者風の外見をしている者だ、捕えれば情報を得られるやもしれん」

「かしこまりました。護衛対象には指一本触れさせません」

「私達は合流を試みます。御子みこ様、ご無事で」

「頼むぞ」


 シュランメルトは何かを投擲とうてきしてきた敵に向かって疾走しつつ、ついでとばかりに道中の敵を一刀両断した。


     *


「やぁっ!」


 その頃、アサギやオティーリエ達は、迫りくる襲撃者達を次々と切り伏せていた。


「いったいどれだけいるのかなー……」

「数は関係ないでしょう。私達に攻撃した時点で、倒すべき敵になる。それだけです」

「真面目だねー、オティーリエ……ッ、来るよ!」


 アサギとオティーリエが二手に分かれ、タケルを狙う襲撃者達を迎え撃つ。

 奇襲を難なく剣で防ぐと、返す一撃で心臓を切り裂いた。


「きりがないね。ところでリラ工房のみんな、大丈夫?」

「私はまだ戦えます」

「ぼ、僕も!」


 アサギが振り向くと、リラとグスタフが戦闘態勢を整えていた。近くには、気絶あるいは死亡した襲撃者達が倒れていた。


「良かった。お姫様二人は?」

「わ、わたくしは何とか耐えておりますわ……」

わたくしは大丈夫です。タケル様、そしてフィーレの傍に控えております。前には出られませんので、直接戦闘はお願いしますわ」

「もちろん。御子みこ様の大事な人なんだもん、わたし達が守る……よっ!」

「神殿騎士団の名にかけて、誰一人として、死なせません!」




 銃声と共に飛来してきた鉛弾なまりだまを切り裂きながら、アサギとオティーリエは力強く宣誓した。

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