第五章八節 再戦

 それから一週間の間、タケル達はひたすらシュランメルト達リラ工房の面々に鍛えられていた。


 全員共通で走り込みなどの体力トレーニングをし、魔導騎士ベルムバンツェの戦闘技術は、基本的にはそれぞれに割り振られた専属の相手に鍛えてもらっていた。


『今のは受け流せ、タケル。盾で刃を滑らせるんだ。受け止めると、最悪盾ごと圧し潰されるぞ』

『遠距離と近距離の切り替えが遅いですわ! 実戦でしたら既に倒されていますわよ!』

『連撃、無理に受けないで逃げる手もあるよ! 使い分けて!』


 三者三様の指導だが、どれも共通して凄まじいハードさを誇る。

 何せタケル、リリア、リンカはほとんど身体的な動きの無い魔導騎士ベルムバンツェのコクピットに座っている状態なのに、炎天下で長距離走をやっているかのような汗だくぶりだったのだ。


『つ、次、お願いします……』

『もう一度、もう一度だけ……』

『グスタフ君、もう一セットお願い……』


 しかし三人は疲労と同時に精神的に高揚してハイになっており、まだまだ続きをしたいと求めていた。

 その様子を見て取ったリラは、提案をする。


『では、次の一回でいったん休憩としましょう。そろそろお昼の時間ですし』

『『はい!』』


 三人は最後の一セットを受け、ボロボロになりながら機体から降りたのであった。


     *


 昼食を済ませ、食器洗いを終えたタイミングで、リラが一同を招集する。


「そろそろまた模擬戦闘をしたいところではありますが……今回は様式を変えましょう。シュランメルト、貴方のAsrionアズリオンと戦わせるのはいかがでしょう?」

「やめておけ。仮に武器を持たないとしても、Asrionアズリオンには貫手ぬきてがある。魔導騎士ベルムバンツェの装甲なぞ簡単に貫けるぞ」

「なるほど……では、私のOrakelオラケルが出ましょう。ただし、非武装で」

「非武装だと?」

「はい。タケル達お三方の鍛錬です。破壊を目的とはしませんので、非武装で十分です。とはいえ、機体オラケル自体の重量は武器になりえますので、その点のみご注意を」

「体当たりか。確かに、あの重量の突進をまともに受ければ、並の機体では凄まじいダメージを受けるだろうな」

「そういう事です。では、準備を。シュランメルト、フィート、グスタフも、念のため魔導騎士ベルムバンツェに乗ってください。そうですね……今回は、各自の専用機に」

「承知した」

「かしこまりました」

「はーい、ししょー!」




 かくして一同は、リラの指示通り、それぞれの機体に搭乗した。

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