第三章五節 命名

「ふぅー、疲れた」


 大浴場に移ったタケル達は、湯船に浸かりながら一日を振り返っていた。


「僕達、とうとう乗ったんだな……魔導騎士ベルムバンツェに」

「随分、大きかったね」

「ねー。ところで、あれ、何て名前なんだろ」


 リンカがふと、疑問を出す。


「ん? あれは魔導騎士ベルムバンツェじゃないのか?」

「それはそうなんだけど、あれ1つ1つに名前があるんじゃないかって思ってるよー。何だろう……私達三人でいうと、“タケル”とか“リリア”とか、そんな感じの、名前」

「そう言われれば、そうだね……。まだ決めてないし、もしくはもう、名前があるのかもしれないし。リラさんに聞いてみる?」

「そうだね、リリア。上がったら、聞いてみるか」


 三人はしばらくの間、入浴を続けていた。


     *


「リラさん」

「何でしょうか、タケル様?」


 上がって早々に、リラを見つけたタケル。

 リラの都合が良いのもあって、質問を投げかけた。


「今日僕達が乗った魔導騎士ベルムバンツェですけど……名前って、あるんですか?」

「あります。3台とも私が名付けました。そう言えば、まだあなた方には伝えていませんでしたね」


 リラは周囲を見回してから、伝える。


「せっかくです。夕食が出来るまで、リリア様とリンカ様にも話したいのですが、いかがでしょうか?」

「そうさせて下さい。呼んできます!」

「お待ちしています」


 タケルは駆け足で、リリアとリンカを呼びに行った。

 その様子を見ていたリラは、小さく呟く。


「ふふっ、元気ですね。あなた方のような人々が、未来を作っていくのでしょう」


 それから五分経って、リリアとリンカが来た。


「タケルに呼ばれて来ました」

「今日私達が乗った魔導騎士ベルムバンツェ、名前があるって聞いたけど……」


 リンカの問いに、リラが頷く。


「はい。あの3台には、名前があります。順番に言いますね」


 リラはまず、タケルを見て告げる。


「タケル様。貴方の乗った機体の名前は、“Tapfererタプファラー Ritter・リッター”。『勇敢なる騎士』の意味を持ちます」

「『勇敢なる騎士』、ですか……」


 続けて、リラはリリアを見つめる。


「リリア様。貴方の機体の名前は、Blinkenブリンケン Stern・シュテルン。意味は『輝く星』です」

「『輝く星』……」


 そして、リンカの番が回ってきた。


「リンカ様。貴方の機体の名前は、Starkenシュタルケン Flamme・フランメ。『強き炎』を表します」

「『強き炎』、ですね……」


 三人に説明を終えたリラは、穏やかに尋ねる。


「他に、質問はありますか?」

「いえ、他には……」

「ししょー、出来たよー!」


 と、グスタフの元気な声が聞こえた。


「ふふっ、もう夕食が出来たのですね。皆様、そろそろ行きましょうか」

「はい!」




 かくして、一同は夕食を食べにリビングへ行った。

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