依頼9『勇者情報』

王城にて




「やっ止めてください!! お願いです!! お願いですから……」


「いやいやだいやだああああ!! 死ぬのは嫌だあああ!」


「助けて助けて!! 王様助けてください!!」




と数人の兵士たちが震えながら汚い部屋にいた。


そこにはベクレール王もおりそして震える兵士たちにこう言った。




「許してくれ……これもこの国の為だ……四天王の1人が倒されたにも関わらずこちらの国に何の被害もないというのは明らかに不自然だろ?」


「だっだからって!!」


「我々を殺すだなんて!! 嫌だ嫌だ嫌だ!!」


「お願いです!!」




と命乞いをするがベクレール王は




「ダメだ……私も非常に心苦しい、しかし、あの暗殺者達が悪いということだけは分かるな?」


「そっそんなああ……」




と真っ青になり男は膝をついた。


そして




「それでは王様? よろしいでしょうか?」


「ああ、殺ってくれ、これは必要なことなのだから」




と言ってベクレール王はその部屋を去った。




「それでは皆様さようなら」


「「「「「「「嫌だアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」」」」」




と悲鳴を上げながら兵士たちは全て魔法で命を散らした。


そして後日、その兵士たちの亡骸は家族に届けられて四天王との戦いで失った勇敢な兵士たちという名誉を貰い墓を建てられた。




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その頃アメナガス達は早速勇者の暗殺について話していた。




「さてと、まずは情報を手に入れるために王様との会話を思い出そうか?」




とアメナガスは世界の地図を広げた。


そして




「ダンゼルガ国に召喚された勇者はいつぐらいに出発するかなどは不明だ、しかし予想は出来る、そうゆっくりと準備はしないだろう、もしかしたらすでに出発しているかのせいもある」




とアメナガスは地図を見て近くの国を確認した。




「近くはビーストの国か……ここから情報を手に入れるか、それとも一か八かダンゼルガ国に送るかが問題だ……」




と悩んでいた。


するとイナミは




「ダンゼルガが良いと……思う」




と提案した。


それを聞いてハイネウスは




「どうして? 移動時間だってあるのよ? そんなの間に合わないんじゃない?」




と言った。


だがイナミは




「私たちも……情報係の子がどんな子か知らないけど……でも私たちと同じ……能力はあると……思う……情報はスピードが……命……」




と言って理由を述べた。


アメナガスは




「ああ、移動時間に関してはあまり気にしないでくれ、今からでもすぐに情報を手に入れれるはずだ、ダンゼルガ国にいればの話ではあるが」




と言って能力の詳しい概要は伝えず問題がないことを伝えた。


ナリアは




「まあ、詳しい話は聞かないが我々と同じく悪魔との契約だろ? なら安心できるんじゃね? だって我らのリーダーが信用してるのに私たちが信用しないのはダメだろ?」




と言ってハイネウスの方を見た。


ハイネウスは




「私だって情報係の子のことは信用しているわ、今まで裏切られたような情報は無かったもの、おそらく勇者だから分かるのも限られるかもしれないけど四天王の情報や四天王を全て殺さないと魔王を暗殺することが出来ないという情報をくれたのもその情報係の子よ、それだけで信頼に値するだけの実績よ」


「そうだね! 私たちに出来ることがない以上は情報係の仕事の実績を信じて待つだけだね」




とハイネウスの言葉の後でロメイトも嬉しそうに言った。


ノリアは




「取り敢えずはダンゼルガ国の方にその情報係の子を送ってとれる情報は取った方が良いかもしれないね!」




と言って剣をくるくる回しながら笑っている。


アメナガスは




「ああ、そうだな、さっそく伝えておく、奴もやる気になって頑張ってくれるだろう」




と言って笑いながら




「取り敢えずは解散だ! 勇者暗殺の実行をするまでに依頼を貰ってこなしておこう、我々がいきなりこの国からいなくなるのは明らかに怪しいからな!」


「そう……だね……やっぱり今まで通りに暗殺をしていた方が怪しまれない」




と言ってイナミも賛同した。


アメナガスは




「では解散だ!」




と言ってそのままアジトから皆出て行った。


そして、




「頼んだぞ、お前が頼りだからな」




とブツブツと言ってアメナガスは行動を開始した。




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数か月後




「いやあ、依頼は普通にこなせるねえ」


「まああの王も情報を出しちゃうと自分の国を滅ぼしてしまう可能性があるからね」




と言ってナリアとノリアは2人で歩きながら話していた。


そして、アジトへと入って




「ただいま」


「ただいまああ!! ノリアちゃんが帰って来たよ!!」




と元気よく皆に向かって言った。


ハイネウスは




「お帰り、問題はなさそうね」


「ええ、暗殺完了、ハイネウスも問題なく暗殺できてよかったな」


「そうね、私たちにはやっぱりこれしかないものね」




と言って少しほっとしているようだった。


やはりみんなあの王との会話で自分たちはもう暗殺の仕事が出来なくなっているのではという不安が合ったようだった。


そして




「アメナガスがあの時引いたのはこのためだったのかもな……」




とナリアは言った。


ロメイトは




「あのまま王様といざこざを起こしすぎるとむしろ今のような暗殺すらも出来なくなっていたかもしれないしね」




と言って笑っていた。


イナミは




「そうだね……特にロメイト……危なかった……」




と言ってロメイトの方を見た。


ロメイトは




「だっだってええええ!! あれムカつかない!」




と言って皆に同意を求める。


ハイネウスは




「そうね、未だにムカッ腹が立つわ」




と言って拳を握る。


ナリアは




「思い出すと殴りたくなるが、それもアメナガスや情報係が今頑張ってくれている。我々はその日が来るまでに腕を磨いておくしかないからな」




と言ってもどかしさを口に出した。


ノリアは




「まあ、でも私たちに勝てるわけがないよねええ!! だってあの四天王の爺さん殺せなかったんでしょ! じゃあ簡単ジャン!! イナミちゃん1人でいけんじゃねえ?」




と言って笑う。


イナミは




「でも……勇者は謎がまだある……油断大敵……」




と言ってノリアを調子に乗らせないように注意した。


ノリアは




「まあ、でも大丈夫だよ! だって私たちの失敗なんてないでしょ!」




と言って笑いながら言った。


そして




「まあ……そう……」


「それに関しては同意よ」


「さすが我が妹だ」


「私もそれはあると思う!!」




と言って嬉しそうに言った。


すると




「よお、集まったか……」




と言ってアメナガスがアジトへと入ってきた。


イナミは




「アメナガス……情報はどう?」




と聞いた。


そして、皆アメナガスの方に目を向ける。


やはり皆勇者の情報を聞きたいのであった。


そして、アメナガスは




「悪いニュースと非常に悪いニュースがある、聞きたい?」




と聞いた。




「「「「「……え! 良いニュースは!!」」」」」




と皆良いニュースを聞きたそうだった。


アメナガスは優しい顔で




「悪いニュース? 非常に悪いニュース? どっち聞きたい?」




と言った。


どうやら悪いニュースしかないようだと悟った皆は




「「「「「どうぞ」」」」」」




と言ってアメナガスに説明を求めた。


アメナガスは




「ああ、では話すぞ!」




と言って皆は身構えた。


そして




「勇者は2人だ」


「え……」


「ふふっ2人!!


「何故2人!」


「首が2つ!!」




とさすがに驚いた。


するとハイネウスは




「それって? 悪いニュースのほう?」




と確認をすると




「ああ、そうだ」




とアメナガスは頷いた。


ハイネウスは




「その勇者ってどんなの?」




と聞くと




「取り敢えず男女だ」


「何故……男女……」


「知らん」




とイナミの疑問にアメナガスも即答した。


ロメイトは




「名前は!! 名前はなんていうの!!」


「えっと、たしかオカモト ケイジが男でキタジマ マイが女だったはずだ……」


「ふむ、そうなんだ」




と言ってロメイトはプレートにすぐさま名前を刻んでいた。


それを見たイナミは




「まだ、ロメイトが暗殺するって……決まってない……で、非常に……悪い……ニュースって?」




と聞いた。


アメナガスは




「それがな……まあ我々も同じようなのかもしれないが……そのなんだ……相手を見ただけで即死させるスキルを神様から貰っているらしい」


「「「「「!!!」」」」」




とさすがに皆が唖然とした。


そして、先に口を開いたのはロメイトだった。




「う……ウソだよね……それってさ……絶望した顔を作るのが出来ないってことだよね……バッバカな」




と明らかに自分の思惑と違うことに動揺していた。


アメナガスは




「いや、顔が欲しいお前の意見はどうでもいいが……まあ暗殺はしにくい事には変わりないな」




と言って少し頭を抱えていた。


イナミは




「そうなると……相手の目に入らないように……暗殺しないと私たちが……殺されかねないってこと……?」




と聞くと




「まあそうなるな……どうやらそのスキルは神からもらった能力のようだ、我々が契約したデマフォス・レイザ・ハイド様から貰った能力と同じような物だと思った方が良いかもしれないな……」




とアメナガスは答えた。


ナリアとノリアは




「ドっどうすんだよ!! 私たち相手の前に立たないと殺せない能力なんだけど!!」


「そっそうだよ!! ナリア姉と私の能力知ってるでしょ!」




と不満を言った。


アメナガスは




「まあ、我々の正体がバレているわけではないからすぐに殺されることはないが……まあさっきがバレればそうだな、その手はあまりうまくは行かないだろうな」




とナリアとノリアに言った。


ハイネウスは




「まあ、暗殺が一番出来そうなのはロメイトとイナミとリーダーのアメナガスだけでしょうね、私の能力もある意味私の顔が見えてしまうし……」




と暗殺が可能な面々を言ってアメナガスに自分が暗殺できないかもしれないことも伝えた。


アメナガスは




「まあ、勇者を暗殺するのは正直ロメイトは外した方が良いな」




とロメイトも暗殺が難しいことを言った。


ロメイトは




「な! 何でええ!! 大丈夫だって! 見られなければいいんでしょ!!」




と言った。


アメナガスは




「だってお前、絶対絶望の顔を見ようと前に姿現すだろ?」




と言ったら




「うう、それは……」




とロメイトは怯んでしまった。


アメナガスは




「まあ、勇者は仲間を連れているそうだしそいつらなら絶望の顔を見てもいいぞ?」




と言った。


ロメイトは




「そうか……勇者はダメか……でも、やった!! 最高!」




と言って喜んだ。


そして続けて




「でも今回は仕事を取り返すことだから勇者の絶望ぐらいは我慢出来るよ?」




と言った。


しかし、




「まあ、ダメだな、だが情報によってはお前が暗殺してもいいぞ?」




と言ってロメイトは




「よし!! ならば大丈夫そうならそれで!!」




と言って嬉しそうにする。


ナリアとノリアは




「じゃあ私たちもその仲間たちを襲って暗殺した方が良いな」


「そうだね! ナリア姉!!」




と言って2人も納得


ハイネウスは




「私は勇者を殺す際にサポートに入るわ、逃げやすい方がもしもの時に便利だと思うし」




と言って自らサポートに徹しようとしていた。


アメナガスは




「そうだな、その方が良いだろ……頼むな」




と言ってハイネウスを信頼した。


ハイネウスは




「ええ、いいわ、魔王退治の時に存分に実力を発揮することでね」




と言って笑顔で言った。


そして




「さてと、相手のスキル対策はこれぐらいにして後は情報を待つことが続くが我慢だ、勇者がこの町に入ってきたら実行に移していく、それでいいな!」


「「「「「おお!!」」」」」




と言って皆は了承した。


こうして着々と暗殺者達は勇者を暗殺する準備を整えていった。




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そして、2年が過ぎてやっと勇者は到着した。


暗殺者達は




「はあ、2年か、色々な情報が手に入って分かった事、勇者たちはやはり皆で魔王を退治するようだな」




とアメナガスは資料を読んでいた。


イナミは




「取り敢えず……暗殺するための……準備は出来るだけ……した」




と言うと




「取り敢えず首がいっぱあああいい!!」




とロメイトは喜んでいた。


アメナガスは




「お前なあ、言っとくが勇者の首は諦めろよ」




と再び注意を呼びかけた。


ロメイトは




「でっでも! 他の奴らの首は!!」




と言うと




「まあそれはいいけど……絶対だからな!! お前に勇者は任せられないからそいつらだけだからな!!」




と言ってロメイトを落ち着かせた。


ロメイトも




「分かったよ……」




と納得する。


そして




「まあ、だからと言ってすぐに勇者を暗殺するわけではない、まずはその仲間たちから暗殺した方が良いかもしれないな」




と言った。


それを聞いてナリアは




「え? どうして? 勇者を殺した方が早いんじゃ?」




と聞くとアメナガスは




「確かにそうだが勇者は一旦おいて別の仲間を暗殺をして様子を見る、その方が勇者を暗殺するとき安心出来るからな……もしもの場合のことを考えてのことだ」




と答える。


ナリアは




「確かに、今回の対象は勇者だ、何が起こるかがいまだ不明な部分もあるしな……了解した」




と言って納得する。


そして、




「では、暗殺を執行する為の準備を進めろ! 奴らが魔王退治に行く前には間に合わせるぞ!」




そう言って他の皆はその準備をするためにアジトを去って言った。


アメナガスは




「さあって、我々の本領が久しぶりに発揮されるような戦いになるだろう……気を引き締めないとな……」




と自身も準備を整え始めた。

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