第二話 新しい生活
1
日曜日の件で部活の設立が成立した。
その事を先生に報告をした。
「……早いな、何かしたのか?」
先生はニヤけながら聞いて来た。
「何もしていません! ただ単に運が良かっただけですから、大体、自分から入ると言っていましたから」
全く、どう言う風の吹き回しなのか。
「まぁ~良いか。活動は今日からだけど、夜神、お前が部長で……ちゃんと仕事やり遂げろよ」
「分かっていますよ! まずは部室の掃除からかな。それから活動内容について、だな」
「あっ、それとな。私が顧問と言ったが、あくまでだ。活動は自分達でやれよ」
先生は腕組みをし、言った。
「問題だけは起こすなよ。これは特別待遇で作った部だからな……問題を起こせば廃部だ。良いな」
先生は厳しい事を言った。
「はい……ありがとうございます。勿論、問題のないように、活動して行きます」
と夜神はお辞儀をした。
「そうか……じゃ頑張れよ」
先生は夜神の肩を叩いた。
「では、失礼します」
と言い職員室を出た。
改めて思うと、凄い進歩。
入学式の日に会った女生徒と知り合いになり、ひょんの事から友達になった。
しかし、友達なのか?
まぁ、何より、今日からだ。
教室に戻ると、何やら騒がしかった。
「あっ、夜神!」
とクラス中の男共が叫びを上げた。
「なんだ! 一体……」
「お前ー日曜日、女の子と一緒に居たろう!」
と男の一人が言った。
日曜日と言うのは、富崎めぐみと秋葉原に出掛けた日か。しかし、誰も知り合いとは会ってない筈だ。
「……どうなんだ、夜神」
林原まで話に入って来た。
本当に面倒臭い。
「……勘違いだ! お前達が思っているような関係じゃない。それだけは言って置く。青春野郎共、さっさと散れ!」
夜神は厄介な事を追っ払うように手を振った。
「んだよ!」
「話ぐらい聞かせてくれても良いだろうに」
周りから男共が去り、平穏に戻った。
「全く、どいつもこいつも、そんなに良いもんなのかね」
夜神は自分の席に着き呟いた。
「まぁ二年生になったばかりだしな~そう言うのに興味があるんだろう」
「そうか……高校生はある意味、大人になる段階だがな。こいつ等の先行きが不安だ」
夜神は溜息を吐く。
「まぁ、お前はお前で頑張れや。部活もあるんだろう」
「……あぁ、サンキューな」
HRが終わり、放課後。
部活動の時間だ。
時期的には新入生部員勧誘をする。何処の部活も大忙しい。
「俺が……部長か」
学生の半分は殆ど不良に生きて来たから、誰かを
「俺も一応、全うな人生を歩む。それが目的だし、頑張るか」
と息巻いて、『新・生活部』の部室に向かう
部室に着くと電気が点いていた。
「
嬉しい事だ。真面目に活動してくれる。
「入るぞ!」
と部室のドアを開けた。
すると机の上に座っている黒髪の少女、富崎が偉そうに紅茶を飲んでいた。
「おいっ、何をやっている?」
「あらっ、来たのね~ご機嫌麗しゅうー」
何処のお嬢様だよ。
「つうか、何ティーセットなんて持って来たんだよ!」
富崎は自前であろう高価な代物を『新・生活部』の部室に持ち込んでいた。
「部室でお茶を飲んでは……駄目と決まりはないわ。貴方もどうかしら」
だから、何処のお嬢様だっての。
「所で、亜久刃はどうしたんだ?」
「ん、彼女なら休み。家の用事とかで……詳しくは知らないけど」
富崎は答え、紅茶を飲み続ける。
その家の用事ってのも気になる。
「ふう~所で……あんたはこの部の活動内容について具体的に何をするつもりなのですか?」
机の上に座った状態で足組みをし問い掛けた。
まるで女王様のように。
「お前な~俺は一応先輩だぞ! 敬語を使えよ!」
そんなんじゃ、ロクな大人にならねぇーぞ。
「……うん、そうだね。それをどうにかするのが、夜神先輩の役目ですわ」
「はぁ~そうですね……」
こう時だけ、ましな事を言いやがって。
「この部の目的は場に馴染めない生徒を馴染めさせる。それをやる為には、人付き合いだな」
夜神は腕組みをし言った。
周りを見て、掃除が必要だなと改めて思った。
「おい、片付けるぞ! お前も手伝え」
と言い、部室内の掃除をするが素直に聞き入れ、机の上から降り、片付けに講じた。
部室を綺麗にしないと、活動出来んからな。
「自分で持って来た物は、自分でなんとかしろよ。つうか……なんで、ティーセットなんかを持って来たんだよ。逆に必要ねぇー代物だろう!?」
と掃除の最中に疑問をぶつけてみる。
「あんたには分からないでしょうね。こう言う静かな空間にこそ、紅茶は欠かせない」
際で。
部室内は綺麗に掃除され、要らない物やらはごみ袋に入れた。
「すいません!」
ふと部室に俺と富崎以外の声がした。声の方を向くと、二人の男子生徒が居た。
「はい、なんでしょうか?」
「『新・生活部』って、此処ですか?」
「そうですけど」
まさか、入部希望者か。
「良かった、どうやら此処で大丈夫みたいだ」
「……何が、たった二人? 三人と聞いたけど」
二人のうち一人が機嫌悪くしていた。
「あの……何か?」
「いえ、この部活動って、人の頼みを聞いてくれる部、ですよね?」
と背の高い男子が聞いて来た。
人の頼みを聞いてくれる部? なんの事だ。
「あの……どう言う事?」
「えっ!? 安城先生が『新・生活部』に行けば助けてくれるって……俺達、バスケ部で……助っ人を頼みに来たんだけど」
「はっ!?」
安城先生が。
安城学。中学時代からお世話になっている恩師だ。
「おい、ふざけるなよ! 話が伝わってねぇーじゃねぇーか!」
二人のうち一人が機嫌悪くし、叫ぶ。
「ごめんな、こいつ口悪くて……」
「いえっ、助っ人か―バスケ初心者だけど、良いのか?」
つうか、先生―何を宣伝しているんですかー!
「あぁ……実は試合があってな、部員の三人が急に食中毒で入院しちゃって、困っているんだ。一人足りないが……」
背の高い部員が言った。恐らく周りを見たのだろう。
「……あぁ、取り敢えず話を聞こうか……」
「……良いのか、もう一人は?」
と富崎を見て言った。
「……あっ、問題ない。俺だけでも分かる。戦力にならないのは、な」
「……ふっ、確かに。でっ、お前の方はどうなんだ?」
と怖い目を向けて来るもう一人が言った。
二人は三年生で、俺達より先輩だ。
「うん~運動神経には問題はないが……バスケの方はやった事はない。まぁ教えて貰えるなら、覚えられる」
「そうか……」
「所で、その試合って言うのは……いつなんだ」
「ゴールデンウィークだ」
背の高い先輩が言った。
「それって、直ぐじゃん! 間に合う訳ないじゃん。諦めたら?」
と富崎が挑発的に言った。
「なっ!」
「おい、お前喧嘩を売っているのか」
目付きの悪い先輩が富崎に近付く。
「おい、よせ!」
「ぐっ!」
背の高い先輩が止めに入った。
「……っ!」
目付きの悪い先輩は歯を食い縛った。
「……くっ! 離せ!」
「お……落ち着け!」
暴れる先輩を押さえ込む。
「おい、余計な事を言うな!」
と俺は富崎の頭を叩いた。
「いたっ!」
とふらついた。
「すいません、先輩方。気を悪くしないで下さい。こいつには、言って聞かせますから」
「……あぁ、お前も良いな。こんな事で試合を駄目にする気か」
「くっ……あぁ分かった」
苛ついているのは一目瞭然だ。
「痛いなーもう! 何すんのよー!」
「『何すんのよー!』じゃねぇー、先輩方に謝れ!」
と注意を促す。
「まぁまぁ、こっちとしては三人の助っ人が必要だ。練習出来るか?」
「二人か、一人は休んでいるしな。富崎、お前は運動出来るか?」
と問い掛ける。
「……、なんで私が……」
「お前なぁ、人が困っているのに、無視する気か」
「……うっ!」
富崎は頭を押さえた。
「ゴールデンウィークの何日目にやるんだ?」
と夜神は問い掛けた。
「あぁ、五月二日から五日までだ。勝ち抜き戦だから、負けられない」
背の高い先輩が説明した。
今日が四月十八日だから、練習時間は限られているな。
「分かった、もう一人の方は、俺に任せておけ。なんとかするから」
と息巻く夜神。
「本当だろうな!」
目付きの悪い先輩が言った。
「はい!」
「じゃ任せたぞ、俺達は全国を目指しているんだからな」
とバスケ部の先輩方は帰って行った。
「はぁ~困ったもんだ」
「あんた、あんな事を言って良いの!」
富崎が怒鳴るように言った。
「私達は素人よ。二週間ぐらいで上手くなれるとでも思ってんの!」
煩く言う富崎。
「ちょっと煩い。仕方がないだろう。立場上あー言うしかなかったんだから。それに……問題を起こすと……部は廃部になるんだから」
と顧問である安城先生が言った事を富崎に話した。
「へぇ~そうなの」
「だから、問題だけは起こすなよ」
「面倒臭いわね……分かったわよ」
とむくれる。
「さぁ、行くぞ」
と鞄を持って部室を出た。
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