楽園
おこげっと
楽園
「ここは楽園です。ここは全てを受け入れます。ここでは何にも縛られることはありません。全て自由です。ここでは全てが受け入れられます。」
私は新たに楽園に訪れた者達に言った。楽園の管理者たる私が言うのだから間違いはない。
「俺は…人を喰いたい。」
「私は…物を壊したい。」
「俺は…」
皆口々に欲求を言い放ち、早く自らの望みを叶えたいとうずうずしている。
「ええ、ええ。良いですとも。あなた達のまっすぐな欲求は伝わってきました。ここでは何をしても自由です。今まで我慢した分、存分に生きてください。」
新たに訪れた者は10人。楽園という言葉に惑わされたやって来た愚か者たち。
「うぉおおおおぉおぉぉぉぉおぉおおあああああああああ!!!!!!!!」
すると、一人の男が雄たけびを上げながら周りにいた人間をナイフで斬りつけた。
「俺はこうしてぇ!!人間を切り刻むのが夢だったんだぁぁぁぁ!」
男は叫び、笑いつつ周囲の人間を斬りつけるために追いかけている。
「おい、あんた!ここの管理者なんだろ!?なんとかしろよ!」
「ええ、ええ。私は『楽園』の管理者でございます。ですが、『楽園』の管理者であって『あなた達の管理者』ではございませんので。これからあなた達がどうなろうと知った事ではありません。」
私の言い放った言葉に戦慄し、近くにいた人間は顔が青冷めてしまっている。
「そもそも何故ここが楽園と呼ばれているかご存知ですか?ここはあくまで私にとっての楽園に過ぎない。あなた達にとってはそうは限らないでしょう。」
「ちくしょう!騙したな!」
男が私に殴りかかってきた。しかし私は逆に彼を喰らった。
バキバキと音を鳴らしながら人を食べるのは非常に爽快だ。
オマケに味が良い。丁度引き締まった肉に、食べやすく肉の硬さ。年頃で言うなら20代前半くらいだろか。血のソースも相まって豊かな風味が口いっぱいに広がるのが心地よい。食は快楽とはよく言ったものだ。
私の食事の光景を見た者達は、恐怖のあまり逃げ出した。何人かはナイフの男に捕まり八つ裂きにされている。
「人は簡単に救いを求めがちです。だから楽園などと言う甘い言葉に吸い寄せられてしまう。そういう人間は肉も甘い。」
ナイフの男の所業を尻目に私は空へと飛び立った。
楽園 おこげっと @okogetto
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