えー、まいど馬鹿馬鹿しい話をひとつ ー落語あらすじ篇ー

小舟漬

第1話 ねずみ

『眠り猫』、『鳴き龍』を彫ったとされる江戸の名工、左甚五郎。

甚五郎がフラりと旅に出て、ある宿場町の入り口についたとき

『おじさん、まだ、お宿はお決まりではないですか?』

そう声をかけられ、見てみると、子供の客引きが一人いた。

 子供が必死に自分のところへ泊まってくれとせがむため、甚五郎は泊まることにした。

案内された旅籠は、案の定、ボロボロで、客一人いない。

向かいにある旅籠『とらや』とは大違いであった。

 どうも、何か訳があると踏んだ甚五郎は、旅籠の主人に聞いてみる

実は、本来ならば、『とらや』の主人は、自分だったのだが、番頭に身代を乗っ取られるわ、子供ともども追い出されて、物置同然の別棟に追い出された。

そのあげく、女房までとられてしまう。

 それを聞いた、人情に厚い甚五郎は、何とかしてやろうと、ノミを一本取り出し、コツコツとなにかを彫り上げる。

出来上がったのは、一匹の木彫りのネズミ。

『これを、かごに入れて、玄関先に飾ってごらんな。』

 言われた通りに子供がネズミを籠にいれて、玄関先におく。

すると、チョロチョロと木彫りのネズミが動き出した。

これを、見た通行人が驚き、ふと、旅籠に目をやると『木彫りのネズミを見て、驚いた人はお泊まりを願います。左甚五郎』

とかかかれていたため、再び驚いた。

この『動く木彫りのネズミ』が評判を呼び、なんとこのおんぼろ旅籠は観光名所になって、バスでの団体客が押し寄せるわ、テレビで特集が組まれるわ、海外の重鎮が泊まるわのの大ブームとなる。

 一方の『とらや』は、閑古鳥が、団体で、巣を作り、主人の仕打ちがばれてしまい、客足はぱったりと途絶えてしまった。

  しかし、面と番頭も反撃に出る。

あちらが、左甚五郎なら、こちらも、有名な人にネズミより大きいものを掘ってもらうんだ!!!

ために溜め込んだ財産を使って、木彫りの派手な虎を彫り上げてもらった番頭。

これを、玄関先につけると、元気に走り回っていた、ネズミが、ピタリとも動かなくなった。

それを伝え聞いた甚五郎が、ネズミのもとに、ふたたび現れ

『こりゃ、ネズミさんよ?ワシは、お前さんを彫り上げるのに、全身全霊こめて、彫り上げた。なのに、あんなできの悪い虎の前で、なんで、ただの彫り物になってしまうんだぇ?』

これを聞いたネズミがパッと顔をあげて

『えぇ!?ありゃ、虎だったんですか!?わたしは、また、、、猫かと思いました』 

ーおわりー

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