オンリーワンノイズヘルプミー

 人を救うというのは人間性の否定だ。

 本質は残虐なのだ。

 賢い者は常に残酷で、狡猾なものは嗜虐で、それは世の常だ。

 正義も悪も在ったものじゃないたまったんもんじゃない。

 残虐な事こそが人間であり、その人間を救うというのは被虐に過ぎない。生命体としてまっこと愚行そのものである。

 しかし、私はその愚行を胸を張って行おうじゃないか。神の子のように半裸で貼り付けになってやろうじゃないか。ダ・ヴィンチだってそう描いたんだ。

 金木犀の葉のように燃えやすく、軽やかで美しい残虐よりも、ミミズのように泥臭い愚行を行ってのたうち回ろう! そう! それこそが非人間がするべき生き方だ! 金星の惑星もかくやと言わんばかりの花火が打ち上がるのだ!

 さあ軍列を作ろう!

 笛の音が聞こえるぞ! 耳を澄ませ! そうだ! その小学生が吹くリコーダーのドレミの唇が私たちの全てとして語られることだろう! 私こそが貴方であるとカラスの目玉に向かって灰色の太陽がケタケタと三日月の数式を描く事が間違いか?! 工場の従業員たちが作る富士の樹海の首吊の人形が前ならへをして美しき描かれるセプテンバーらの歌は、はあ、何と美しきストーブ!

 新しい年号が最後のノストラダムス! 宇宙大統領の言葉が雨になる! 其処此処にありまするキノコの宴が食卓に並ぶぞ! あっちだこっちだ! 今日の天気予報は私の恋心を指し示す運命論!

 愛飢え男と叫んでは愛故愛故と人間のソーラーパネルの信号機!

 私はここだ!

 ここだ!

 北緯1度が20度傾いた所に、諸手を挙げて佇む姿が目に映るだろう!

 つまり私が地球の中心! 正に天動説!

 どうか私を見ておくれ人民諸君! これがオンリーワンという事なのだ! それを素晴らしいとお前らは言うのだろう! 狂った価値観だッ! そうに違いないッ! 見てみたまえッ! あちらこちらに並ぶオンリーワンな者たちだったテルテル坊主をッ! どれもこれも似たような死に方じゃあないかッ!

 オンリーワンが素晴らしい? 私こそがオンリーワンだッ! オンリーワンダーランドの王様だッ! 多くの者を救おうとした者の末路だッ!

 誰かッ!

 誰か誰か誰かッ!

 私が正しいのだと言ってくれッ!

 私が正気なのだと証明してくれッ!

 誰か教えてくれッ!

 人を救おうとするのに、才能が必要ないということを。

 人を救おうとするのに、人間性の強度というものが必要ないということを。

 こんなにも人を救おうと愚行を行い続けた私を、どうか、どうか。

 救ってくれッ!

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