釣りをしたら少女が釣れたので。
夏樹
釣りと名探偵
ここはとある探偵事務所。
最近は探偵の仕事もめっきり少なくなり、
そんな飽きるようにゆったりとした時間は、探偵事務所の入り口の扉が開いた瞬間に心待ちにしていたような騒がしさに吹き飛ばされた。
「マコトさん!さっき釣りをしてたらですね……」
「どうした?男でも釣ったのか?」
「違います!釣れたのは少女です!」
「何が釣れたって言った?聞き間違いをしたようでね」
「聞き間違いじゃありません、釣りをしてたら、少女が釣れたんです」
確かに明里の背中にはびしょ濡れになった少女がいる。
だがしかし、釣りで少女が釣れたというのは一体全体どういう事なのだろうか?そう聞きたいのは山々だが真人はその出来事を異常事態だとすぐにはじき出し、明里とともに少女の状態を確かめた。
少女は濡れている以外はいたってまともな少女であり、今は事務所のソファですやすやと眠っている。
ただ、ポケットからは見たこともないコインが見つかった。
「それで、釣ったってどういうこと?」
「裏山にある河原で釣りをしてたら流れてきた枝に釣り糸が絡まったんです、その枝に少女が掴まっていたんですよ」
にわかに信じがたい話ではあるが真人は否定をしない。
結構、嘘みたいな話っていうのはあるものなのだ。
「とりあえず少女のことは彼女自身が起きるまで待つことにするとして、このコイン、どこの国にあるどんなコインとも分からないんだ」
少し見ただけではそのコインがどこで製造されたのか、どの年代に製造されたのかどころか何の材質で出来ているかすら分からない。
虫眼鏡で見てみてもさっぱりだった。
「一応しらみつぶしに探してみますけど……、さっきからなんか発光してません?」
言われてみれば、コイン自体が光を放っているような気もする。
よく見るために部屋のカーテンを閉め、灯りを消してみる。するとそこに広がった光は一つの映像を作り上げていった。
そして、そこに映ったものは……
「この通り、暗所に置けばこのコインはプロジェクターの役割を果たしてくれます。そしておそらく、この映像を見た人は心優しい人のはずです。ですから関係ないあの子をどうか助けてあげてください」
見えたのは、少女によく似た女性が白衣の姿で語りかけている映像。
ただごとではないに違いないことだけは容易に想像できる。
「おや、部屋をこんなに暗くして……。どうかしたのか?」
暗闇から現れたのは長い髪を後ろで縛り上半身は裸の男性……
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