第367話 お待たせしました

「魔法陣まで使った転移を弾かれるとはな……」


「どうやらヴィスデロビアは僕達を中に侵入させない気の様ですね。

 僕の展開した結界に気付かれましたか……すみません、裏目に出ました」


 しかし、この短時間で一つの世界をここまで作り替えるとは……我が宿敵ながら、なかなかにやりますね。

 まぁ、当然僕でも数時間もあれば世界を一から創造できますけどね!!


「つまりは、我らにビビっていると言う事だろ?

 統一神界での戦いでは魔皇神一桁のあの女にやられてしまったからな。

 ここでその鬱憤を晴らさせてもらおう!」


 そう言うや否や、膨大な魔力が立ち昇り吹き荒れる。

 流石はナンバーズ序列15位のグレンさん、凄まじい魔力です……でも……


「ふふふ、じゃあ私もご一緒するわ」


「私も、じゃ無くて、私達もでしょ?」


 グレンさんに続いて前に出る8人がその力を解き放ち、各々の序列に相応しいエネルギーが吹き荒れる。

 グレンさんを含め9人ともかなり荒れてますね、何かあったのでしょうか?


「実は魔皇神5位のカエデと言う者に挑んで返り討ちにされた様です」


「なるほど、だからですか」


 そもそも、最初から不思議だったんですけど……納得しました。

 まさか、そんな理由があったとは。


 今回の突入組はシングルとコレール達眷属である皆んなに序列10位であるジバル君と、序列11位であるエネトスさん。

 そして、彼ら序列12位から14位であるオシークスさんを省いた21位までの9名のみ。


「神能」


 9人各々の魔力が急激に高まる。

 確かにナンバーズ中でもトップクラスの上位者であり、当然のように神能も有している。

 その実力は並みの神々なら瞬殺できる程でしょう。


「でも……」


 9人から放たれた攻撃が一斉に聳え立つ門へと殺到する。


「う、そ……」


 唖然と呟きを漏らしたのは序列12位。

 つまりは門を破壊しようとした9人の中で最も強いメトリーさん。


 彼女の……驚愕に目を見開く彼女達の視線の先では、来る者全てを拒むように聳え立つ巨大な門が堂々と鎮座していた。


 メトリーさんやグレンさん達9人の一斉攻撃を受けて流石に無傷という訳では無く、当然多くの傷が入っていますが……所詮はその程度です。

 それに、その傷も急速に修復して行ってますしね。


「主らの気持ちは分かる。

 じゃが……」


 唖然とするメトリーさんの肩をネルヴィア様が優しく叩く。


「ここから先に行くには、主らではまだ力不足じゃ」


「っ!!」


 ネルヴィア様の言葉を受けて、門の破壊を試みた9人が息を呑む。

 厳しいようですけど、これが事実。


 ヴィスデロビアの狙いとは違うでしょうけど、この門は一種の試練です。

 この門を突破できない者にこれより先に進む資格はないし、仮に僕達が破壊して一緒に進めたとしても足手まといになって無駄死にするのがオチです。


 ダブルにしてアニクスの大神である皆んなが同行せずにアニクスに残ったのは、当然アニクスの防衛もありますけど、そういう事。


 アニクスで対峙した序列一桁の3人の魔皇神。

 統一神界でヴィスデロビアが撤退するのと時を同じくして引いて行ったらしいですけど。

 その戦いを通じて、ここから先の戦いでは足手まといになると皆んなは判断した。


「あのカエデという者に敗れて私情に駆られ無理を言った事、お許し下さい」


 悔しげに顔を歪めながらも謝罪するメトリーさん達。


「謝るで無い、主らの気持ちは妾にも理解できるかなら。

 しかし我が儘を言った罰は必要じゃな……そうだな、まだ奴らの残党がおるやもしれんからな。

 お主達には統一神界での警備の任を与える、ヤルトートとオシークスにこき使われて来るが良い」


 ニヤリと笑みを浮かべるネルヴィア様に対してメトリーさん達の顔に苦笑いが浮かぶ。


「はっ! かしこまりました」


 代表して答えたメトリーさんの声と共に9人の姿が掻き消える。

 全部終わったらメトリーさん達も労うとしましょう。

 そうですね……特別に僕の至った極致、モフモフの楽園にご招待してあげましょうっ!!


「さてと……」


「お嬢様、ここは私が」


「いや、ここは僕がやります」


 せっかく申し出てくれたコレールには申し訳ありませんが、そもそも、こんな門を設置されたのも僕が展開した隔離結界のせいですからね。


「神能〝殲滅ノ神〟」


 見たところヴィスデロビアの神能で保護されているようですし、神能使わなくても破壊できると思いますけど……念には念をです!


「滅砲」


 神能を使った上に魔法陣まで展開して放った滅砲が門を呑み込み消し飛ばし……


「どうやら、お待たせしたようですね」


「クックック、ようこそ我が神魔界へ。

 待っていましたよ」


漆黒の玉座に腰掛けるヴィスデロビアと、その傍に控えるシエラが僕達を出迎えた。

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