第339話 双方の強者達

「お嬢様、捕虜の拘束が完了致しました」


「分かりました、ありがとうございます。

 さて……」


 目の前に転がるのは、ボロボロになった上にメルヴィーの権能によって雁字搦めに拘束されたヴィスデロビア軍の強者達。


 まぁ強者達と言っても、ヴィスデロビアが連れて行った側近達には遠く及ばないでしょうけど。

 それでも一緒について行った主力達の中では上の下と言った所でしょうか?


 一応この空間にて僕達を相手取る為の軍勢の指揮を任されていた人達な訳ですし。

 恐らく、それなりの情報は持っているでしょう。


「じゃあ、洗いざらい話して貰いましょうか?」


「だ、誰が貴様らなどに……」


「我等を殲滅した程度で頭に乗るなよ!」


「幼女が……貴様などヴィスデロビア様が始末して下さるわ!!」


 なる程、なる程。

 例え圧倒的な力量差を見せつけられて一方的に敗北し、捕虜として拘束されようとも敵に情報は渡さないと。

 敵ながらヴィスデロビアへのこの忠誠心は天晴! ですが……


「ふぅ〜」


 あのヴィスデロビアが座っていた椅子。

 昨日消滅させたのに、またキザったらしく同じ様な椅子に座って、僕の事を見下してましたね……


「ふんっ!!」


 無駄にデカい漆黒の玉座を、素手で思いっきりぶん殴る!

 ヴィスデロビアの魔力を浴びて、並大抵の事では破壊不可能な程の強度に至った玉座の上半分が消し飛び、下半分には罅が走って崩れ落ちる。


「で、誰が魅力の一切無い絶壁幼女ですか?」


「だ、誰もそこまで言ってない!!」


 まぁ良いです。

 あと数年もすればボン・キュ・ボンなグラマス美女になる予定ですし!


「可及的速やかに皆んなの所に向かいたいのです。

 僕は幼女なので、思い通りにならなくてイライラして、うっかり力加減を間違えちゃうかもですが……早く貴方達が話してくれるのを願ってますね」


 しかし、素手で殴ると流石にちょっと痛いですね、手が少しだけ赤くなっちゃいました。

 ムカムカしてやっちゃいましたけど、まぁそれなりに良い脅しになった様ですし結果オーライです!! これで情報を話してくれると良いのですが……





 *





「まんまと騙された訳か……流石は神々の頂点に立つ神王とシングル達だ。

 私の策略が見抜かれていたとはね」


「当然じゃ。

 貴様の策略程度、妾達が間抜けぬとでも思ったか? 貴様らは最初から妾達の掌の上で踊らされておったのだ!!」


 ドドン! と効果音が付きそうな感じで自信満々にネルヴィアが言い放つ。

 敵の大将である神王ネルヴィアの言葉を受けて、ヴィスデロビアは……


「クックック、そうでなくては!」


 楽しげな笑みを浮かべる。


「それで、貴女とルーミエルは分断したが、次はどうする? 神王ネルヴィア。

 神能で監視されている中、軍団を脱出させたのは流石だが、ルーミエル本人はここにはいない。

 有象無象の軍勢なんて、いくら集めても私には無意味ですよ?」


「統一神界とナイトメアの精鋭軍を有象無象とは、言ってくれるな」


「えぇ、こう見えても元序列2位の神なのでね」


 ヴィスデロビアから発せられた威圧に、軍勢は身構え、シングルを含めた序列上位の神々は僅かに顔を顰める。


「それに私の側近達、30名の魔皇神かつての四魔皇と比べても遜色無い実力を誇り。

 特に私の眷属でもある上位の10名は……」


 一瞬でネルヴィアを四方から包囲する様にヴィスデロビアが側近、30名の魔皇神が姿を表す。


「四魔皇を遥かに凌駕する」


 ニヤリとヴィスデロビアが笑みを浮かべ、30名の魔皇神が一斉にネルヴィアへと襲い掛かり…… 後方へと吹き飛んだ。


「やれやれ、私達を無視だなんて悲しいじゃないか。

 ねぇ、コレール殿?」


「別に悲しくはありませんが。

 些か不愉快ではありますね」


 吹き飛ばされた30名の内、幾人かは地面に衝突し轟音と土煙を上げる中。

 フォルクレスとコレールの声が響き渡る。


「確かに貴様の引き連れておる者共、特にその魔皇神とやらは強い……だが、それは我等も同じ事よ!!」


 ネルヴィアの周囲には15人の人物が。

 フォルクレスとコレールを筆頭としたナイトメア最高幹部と現シングルの神が悠然と佇んでいた。

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