第329話 容赦はしませんよ?

「お嬢様、お次はガトーショコラは如何でしょうか?」


 ガトーショコラっ!

 この見るからにしっとりしていて、まさに黒き至宝! 素晴らし過ぎますっ!!


 例え神々から注目されていようが、ここが戦場だろうが関係ありません!

 目の前に至宝の乗ったお皿を置かれて、果たして誰が我慢できるのか? 断言しましょう! 我慢なんて絶対にできないとっ!!


「おい、まだ話は終わっちゃいねぇぞ!!」


 煩いですね。

 僕の黒き至宝ガトーショコラとの対話を邪魔するのは一体……

 あっ、さっき僕の事を踏ん反り返ってるとか言ってくれた人じゃないですか。

 まぁあんな失礼な人は無視して、早速ガトーショコラを頂くとしましょう!!


「そもそもメイド風情が、出しゃばってんじゃねぇよ。

 ここにいる俺達が誰なのか理解できてねぇのか? お嬢ちゃん?」


「お、おい、ジバル……」


「神王様は少し黙っていて頂きたい」


 うっわ、ネルヴィア様、王様なのに威厳が無いですね……

 しかしあの失礼な人はジバルさんですか。

 う〜ん、確かにここに居る神々の中でもかなり強そうですけど。

 まさかメルヴィーにこんな事を口走るとは……


「シングルの皆様は、こんなポッと出の小娘がその席に座っている事をお許しになるのですか!?

 小娘からは大した力も感じない、それに加えてナイトメアなんて聞いた事もない!

 俺には、この者達がこの場にいるに相応しいとはとても思えないっ!!」


 あぁ、ガトーショコラ美味しいですね。

 ヴィスデロビアとの戦争も仕切り直しで一時休戦になってますし、こんな美味しいガトーショコラを食せるなんて平和ですね。


「私はそうは思わない」


「クロエ様?」


「そうね。

 私もそう思うわ」


「ミレーネ様……」


「うんうん、私も右に同じ!」


「私もだ」


「カレン様にアステッド様まで……」


 おぉ、さっき言い争っていたお姉様方はミレーネさんにカレンさん、アステッドさんですか。

 ミレーネさんはアヴァリスやリュグズールに劣らない破壊力ですね……何故こうも神々の中には爆乳が多いんですかっ!?


「アリストロー様、ギルベルト様、ネルン様……お三方は俺と同じ考えですよね?」


「違いますけど」


「いや、違うぞ!」


「いいえ」


 流石はシングル。

 一見ただの人間にしか見えないはずのこの僕の本質を、全員が見抜くとは……

 

「な、何故ですかっ!?

 そこのメイドはともかく、こっちの小娘からは何の力も感じられない! 明らかにこの場には相応しくありません!!」


 エキサイトしてますね。

 まぁそれはそれとして、ガトーショコラを食べてたら、ちょっとココアが……


「どうぞ」


 メルヴィー……流石です! 今のはちょっと鳥肌が立っちゃいました!!


「ダブル最上位、序列10位のジバル君。

 彼らが何故ルーミエル君がこの場に相応しいと判断したのか。

 それが分からないからキミはダブル止まり、シングル足り得ないのさ」


「フォ、フォルクレス様……」


 あれ? 何故かフォルクレスが凄く尊敬と畏怖が込められた視線を向けられてるんですけど……


「な、ならば! この俺が敵の首魁であるヴィスデロビアを討ち取って、俺がシングル足り得る器だと証明してみせます!!」


「……今なんて?」


 聞き間違いでしょうか?

 ジバル君が今、看過できない事を言った様な気がするんですけど。


「あ? この俺がヴィスデロビアのヤツを殺るって言ったんだよ。

 小娘はすっこんでろ」


 ヴィスデロビアを殺る? ジバル君が……?


「残念ですが、それは了承できませんね」


「何だと?」


「ヴィスデロビアは僕の獲物。

 邪魔するのなら……」


「っ!?」


「容赦はしませんよ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る