第328話 カッコ良過ぎですっ!!

 おぉ! これがネルヴィア様がこの会議のために特別に注文したと言うディゼールのケーキっ!!

 しっとりとした滑らかな舌触りのクリームに、柔らか過ぎず硬過ぎない絶妙なスポンジ。

 そしてこのショートケーキを彩るこの苺!!


「実に素晴らしい!」


 これだけでも、ここに来た甲斐があったと言うものですが……


「お嬢様、おかわりは如何なさいますか?」


「う〜ん、そうですね……じゃあチーズケーキを貰うとしましょう」


 特注されたケーキはショートケーキだけじゃないこの事実! ここは楽園なのでしょうかっ!?

 ふっふっふ! さぁ我が目の前に鎮座する強敵ケーキよ、頂上決戦へと洒落込みましょうかっ!!


「しかしよぉ、何で神王様の隣に……上座にどこの馬の骨とも知れねぇ奴が踏ん反り返ってるんだ?」


 踏ん反り返ってるとは失礼ですね。

 こんなにも行儀良く座っていると言うのにっ!

 ふん、あんな人なんて無視してチーズケーキとの激戦に集中するとしましょう。


「おぉ、そうだった。

 皆に紹介しよう! こやつの名はルーミエル。

 此度の戦に於いて統一神界、ヴィスデロビア一派と三竦みを成すナイトメアの創設者にして頂点に立つ者。

 その者こそ、妾の隣に座っておるこのルーミエルじゃ!!」


 チーズケーキ、美味し!

 流石ですね……さっきのショートケーキもですが、流石の強敵でした。

 この僕でも、もう少しでチーズケーキの魅力から抜け出せずに連続で食べてしまいそうになる程に!!


「ん? ルーミエル、先程から黙り込んでどうかしたのか?」


 しかし、もうすぐ完食です!

 ふっふっふ! 僕の勝利ですっ!!

 チーズケーキの魅惑を振り切って違うケーキを食してやります!!

 う〜む、次はどれを食べるかが悩みどころですね……


「……ルーミエルよ、お主もうちょっと緊張感と言う物をじゃな……」


「むぅ、何ですか?

 ネルヴィア様、僕は今この上なく崇高な思考を巡らせいる真っ最中なのです」


 次に食べるケーキの選抜と言う重大な考え事の途中に、横腹を突かないで欲しいですね全く。


「とか言ってお主、どうせ次はどれを食べるかとか考えておったんじゃろ?」


「っ!?」


 な、何故それをっ!?

 まさか….いや、そうとしか考えられません!

 流石はネルヴィア様ですね、まさか僕のポーカーフェイスを見破るだなんて!!


「やはりか……まぁ良い。

 今お主の事を皆に紹介したところだ、お主も自己紹介を」


 えっ、何故かは不明ですが。

 このなんとも言えない嫌な空気の中でコミュ症な僕に自己紹介をしろと?


「それまでケーキはお預けじゃ」


「えっ?」


 自己紹介できないと……ケーキが、お預け……?

 くっ……! こうなったら仕方ありません……精一杯頑張って自己紹介をして見せます!!


「えっと……は、初めまして」


 あっ、フォルクレスと目があってしまった。

 フォルクレスめ……今の僕をみて笑いを堪えてますね……

 むぅ、フォルクレスが笑えない程に堂々とやってやります!!


「ぼ、僕の名前はルーミエル、ナイトメアの総統です。

 どうぞ皆様、よろしくお願い申し上げます」


 ふっ、どうですか! この丁寧な自己紹介は!!

 これで誰一人として僕を笑える者はいないでしょう!

 そして僕は周りを気にせずケーキを食べる権利を手にしたのですっ!!


「ルーミエル、よろしく。

 私はの名前はクロエ、後で撫でさせて欲しい」


「えっ、べ、別にかまいませんけど」


「あら、それなら私も撫でさせてもらおうかしら」


「じゃあ私も!」


「ふふふ、なら私もお願いするわ」


 えっと……これはどう言う事でしょうか?


「皆さん、少し落ち着いて。

 ルーミエルさんが困惑なさっているじゃないですか」


「かっかっか! なかなかに強そうじゃないか!

 後ほど俺と手合わせしないか?」


「こんな脳筋は無視して、私とお食事でも如何かな?」


 い、一体どうすれば……そ、そうだ! こう言う時こそ、シングルであるフォルクレスの出番……って、さり気無く目を逸らされた!

 さっきまでニヤニながら見てきたくせにっ!! こうなったらネルヴィア様に……


「お主ら煩いぞ!

 ルーミエルにはこの後既に妾とお茶をする予定が入っておるのだ!!」


 えっ? 何それ、初耳なんですけど……

 くっ、まさかネルヴィア様まで役に立たないとは!

 騒いでる8人が席に座っている事が唯一の救いですが、どうすれば……


 パァッッンッ!!


 空気を引き裂く様な凄まじい炸裂音に、各々で話し合っていた8人が押し黙る。


「皆様、お静まり下さい。

 お嬢様にご用がおありなら、一度私を通して頂きますようお願いします。

 分かりました?」


 鋭過ぎるメルヴィーの視線に黙って頷く8柱の神。

 恐らくはこの7名にネルヴィア様とフォルクレスを含めたこの9人がシングルでしょうに……

 流石はメルヴィーです! 一睨みでシングル達すら黙らせる……カッコよ過ぎですっ!!

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